こんな夢を見た

sans-tetes2007-03-24

狭い、どこかで見たような部屋。外は既に日が高く、良い天気の様子。締め切った部屋の中まで陽が射し込み、伏せっているにも関わらず今日は気分がよい。ただ、周りの景色に色がなく、周囲はすべて鉛色。自分も、陽の光も。
離れた場所に火鉢が見え、置かれた鉄瓶が湯気を吐いている。このような物、未だに実家にあっただろうか?湯気のおかげで部屋の露気が保たれているせいか、症気はあまり強く感じず、辛いとは思わない。ただひどく熱い。湯気にて、他の症気を和らげる引き替えに、火鉢が発するすべての熱気を一身に引き受けているような心持ち。そんなに熱いのなら身の上に重ねられた布団を跳ね除けてしまえばよさそうなものだが、幼い頃に、これだけはやってはいけないと諭された気がして、なるべく身動き一つ取らないようにして耐えている。
今、自分は十代の初めの頃らしい。そのころの自分が、なぜだか、着物を着て下駄か草鞋かを突っかけ、村の外れ、畦の先、遙か向こうにある鎮守に向かう途中、木一本。その前に立ち止まり、傍らの御地蔵を屈んで拝む。初めから地蔵の背後にいた、なにやら襞の様な質感のモノが、明らかに自分の一部、恐らく意識を構成するモノの一つとわかったとき、既にその襞は途方もなく巨大なモノとなっており、もはや我が身とそれのみとでこの世を為すがごとき有様となっている。その様なモノが自分の一部であると解るのは、自分の体の外側から、絶望的な恐怖を伴いながら自分の意識の中に進入しようとしているにもかかわらず、自身に全くの異物感を感じさせないその触り心地からであり、その頃にははっきりと現れていた、自分が所持している意識と、薄い膜のような壁を隔てた向こう側に次々と流れ込んでくるそのモノ、という視覚的な表出も、我が意識にとって、既に決まっているかの如くの違和感。受け入れ難き理由はただ恐怖のみである。強大な。
我に返ったのは寝床の中ではなく、窓の外、往来に突き出た物干し場。陽は鉛色ではなく弱々しくも金色の光。両親が私の腰と、肩とを抱きつくように押さえている。静かになった私はそのまま寝床に帰る。湯気を吐いて見えたのは加湿器だったのか。

インフルエンザに罹り、40度を超える熱が出ていたそうだ。