『ひめゆり』

 母方の大叔父が、沖縄戦で亡くなることで、私はこの世に生を受ける。兵卒姿で、何か言いたげな表情をした大叔父が、家の玄関へとつながる坂、ゆっくりと無言で登ってくる夢を、祖父は未だに見るのだという。我が血にとって、沖縄戦は因縁浅からぬ出来事であり、この映画で語られている出来事も、その死の有様の伝わることなく、ただ碑に名が刻まれる大叔父の、最後の様子が垣間見えるようで他人事とは思えない。悲惨な沖縄戦の様子を語ってくれた彼女らの言葉からは、当にこの世の地獄が映し出される。だから、彼女たちの言葉から目を背けてはいけない。
 「お母さんの所に帰るんだ」。帰ることのできなかったすべての人を、帰るべき所に帰してあげたかった。そして、生き延びることのできて今に至り、やっと、その体験と呼ぶには余りに過酷な試練の数々を、記録に残してくれた方々、本当にありがとう。