百病

 親父に出来た脳腫瘍、頭ん中掻き出すために穴開けたそのおなじ場所、私にもしこりが出来る。
 気付いた夜、さすがに心配で不安で、けどぐっすり眠る。朝起きてもしこりはある。「ああ夢じゃなかった」。
 脳腫瘍だったらどうなるか、大体は解るつもり。部位とか、外科手術とか、γナイフとか、津田恒実とか、後遺症とか、入院とか、色々先に頭について仕事に支障。こんな時に限って仕事が忙しかったりする。
 とりあえず、社会保険事務所に行って「負担限度額認定書」発行の手続き。γナイフうん十万かかるし。まだ決まったわけでもないのに。
 しこりを押すと後頭部全体にジンワリとした鈍痛。ああ気になる! けどCT・MRIの際の造影剤にショック起こしたらどうしよう、とか余計なことばっかり考えて、とりあえず医者にかかる。
 先生、患部に触るや否や「アテローム(瘤状の脂肪のかたまり)です」。「表皮に出来たモノは脳腫瘍とは言いません! どーしても気になるなら切開して取ってもよいけど、その部分だけ髪の毛剃らなきゃいけないし、切った部分ハゲるよ。」とのこと。あんま触るとバイキン入って膿むらしいので、要はほっときゃ良いらしい。ああそうですか。
 気付くと、病気に酔ってる自分に酔って、仕事をサボろうとする自分がいる。手元に「認定書」だけ残ったので、いつ入院してもばっちりだ。