『アイム・ノット・ゼア』

 ボブ・ディランだから「格好良い」だけで理屈はいらない。だからといって女連れてディランを観に行ってはイケナイ。だって俺、ボブ・ディランのどこが良いのかわからねぇもの。
 さて、ここに登場するのは6人の、それぞれ異なる、演じる役者も異なるディラン・ディラン・ディラン・ディラン・ディラン・ディラン。格好良いのは当然で、名こそ違えどここに出てくるのは紛れもないディラン。誰もが知ってる、口悪く人を罵り、屁理屈を詩に乗せて、世が迎合するように見せて世に迎合する、脆く危うい自己の空間を持て余し、世界を変える力を持ちながら、何の力も信じない。
 やっぱわかんねぇや。俺にはここに描かれているのが誰なのかさっぱりわかんねぇ。