『女は女である』

 ゴダールの作品で今まで寝ずに最後まで観れた作品はない。ので、オールナイトなら逆に寝ないかもしれない、ということで新文芸坐ゴダール特集を観に行く。とか書くとにわか映画観者振りがバレてしまいそうだな。
 とりあえず最後まで観れた。というのも『ジャン・リュック・ゴダール』というブランドイメージとこのいかにもな邦題、連想されるのはいかにもという哲学臭さ。そんなわけでちょっと覚悟して望んだところどうしてどうして、「比較的健全な恋愛映画」だったので少し拍子抜けしてしまう。深読み裏読み難解な語彙理解がなく、その分と言ってもよいのか、健全に楽しく観れてしまった。
 「私、子供が欲しいの」。恥ずかしながら主演のアンナ・カリーナについて何一つといって良いほど知らない。当然の如く相手役のジャン・クロード・ブリアリについてもよく知らない。物語は冒頭の言葉を巡って始まったこのカップル同士の痴話喧嘩がアンナ演ずる彼女に横恋慕する共通の友人を巻き込んで、と大変迷惑なお話。これが日本でのお話だと最後の最後まで続くドロドロ劇の末に、となるところを、お互いあっけらかんと浮気のそぶり、遂に彼女はホントに浮気、しかも日本のお話だったら全員死んでも文句は言えねぇぞというアレな結果になってるのにもかかわらず最後ハッピーエンドで終わるなんて・・・。これがフランス的なお国柄の差と言ってしまえばそれまでなのだが、それを置いておいても主役の彼女(職業「ストリッパー」)を始め登場人物達に殆ど負のイメージを感じさせない役柄に、なんか「ホントにゴダールが作ったの?(私自身の不明はこの際置いておく)」と言う違和感を感じてしまう。要するに最初から最後までみんな明るくて楽しいのだ。だから観てるこっちまで楽しい。でもって主役のアンナ・カリーナがすごく可愛い、その上に水兵のコスプレしたり白のガーター着たり(両方ともストリッパーとしての舞台衣装ね)「ネグリジェとパジャマどっちがいい?」とか言って結局両方着たり、等々、ゴダールおまえ絶対楽しんでるだろといった着せ替えが凶悪な飛び道具となってるもんだから、楽しくないはずがない。
 と言うわけで、初めてゴダールの作品で寝なかったと言う快挙は、その作品を気合いを入れて観た賜か、それともその作品が単に想像していたゴダールらしさがなかったためだったのか(偏見とも言う)よく解らない。