JAXA勝浦宇宙通信所に行ってパラボラアンテナを操作する


 千葉育ちなのに肝心な県内のお役に立つ施設について私が疎いのは、私が千葉の異端チバラキ県民こと東葛地区常磐線沿線住民だったからというだけではあるまい。県内小学四年生の必須教科書「私たちの千葉*1」において歴史を端折り源頼朝の雌伏を助けた中世千葉氏は出てこない、日蓮上人は出てこない、南総里見氏は出てこない、なのに農業に関係するせいか椿の海を干拓した鉄牛和尚は出てくる、チバラキ県民には全然関係ない谷津の遠浅の干拓について執拗に教える、等の偏った県教育方針のせいに違いない。必要なことを教えずに必要でないことを教える徹底的な管理教育、なるほど、半島気質は世界共通らしい。もとい、チバは島でした。
 そんなこんなで若田光一さんが宇宙から帰ってくる記念すべき日に、千葉の端の方勝浦市にある宇宙航空研究開発機構(JAXA)勝浦宇宙通信所に行って参りました。ちなみに本日若田さんが帰ってくることはパラボラアンテナを操作している途中に知りました。要はそんな記念すべき事実も知らないまま、ただ好奇心だけを頼りに千葉でろでろに曲がりくねった道を山側から勝浦に向かいます。公式ページに出ている「勝浦通信所」の住所はグーグルマップでは出ない。「勝浦宇宙通信所」でも出ない。そのため頼りは公式ページに出ている地図のみ。そして通信所はお約束の如く市街地から離れた山の中ということで、そこに至るまで方向音痴な私はかなり苦労しました。一応国道上に「ここ曲がれ」の看板は出ていますが原チャに乗って移動している国際武道大学生が大量にいるので巻き込まないように気をつけた方がよいです。

 入り口です。辺りに人影は全くありません。対向車もありません。「秘密基地の入り口」以外に例えようのない施設入り口に、初めての来訪者は誰しもが必ず通ることを躊躇すると思います。

 半官製を表す立派な碑が目的地に間違いのないことを教えてくれます。しばらく細く曲がりくねった道がつづき、時たま道端に勝手に咲いている山百合で目を楽しませながら結構な勾配を登っていくと

 何か見えますねぇ

 本物です。本物の宇宙開発用官製パラボラアンテナです。後ほど紹介する資料展示室で紹介されていますが、世代的には少し前のモノで大きさも最新のモノに比べれば小振りですが、それでもご近所に一人はいる空と交信を試みている宇宙じじい*2の手製パラボラアンテナなんかとは比べ物にならない迫力を持っています。そして特筆すべきはここまでで誰とも人には会っていないということ、まるで気分はどっかの秘密結社の秘密基地に潜入したスパイの気持ちです。

 逸る気持ちを抑えきれず、バイクはそのまま受付を通過。先に広告用パラボラアンテナの元まで来てしまいました。丁度アンテナの何かの整備をしていた職員さんに受付の場所を聞いてあわてて引き返しますが、せっかくなので先に何枚か写真を撮っておきましょう。

 アンテナの下には東屋があって水飲み場があってとアンテナを景色にくつろげるようになっております。この東屋から突き出ているような景色はマンガに出てきそうな「アンテナは立派だけど資金が追いつかず建物がボロいままの研究所」みたいで良いです。

 おとなしく正規の手続きを踏むことにします。受付はこの「追跡管理棟」の守衛さんに声を掛けて済ませます。記名した後守衛さんから入館者用のワッペンと記念品のエコバックを受け取ります。ちなみに入館料は無料です、タダです。エコバックもタダです。太っ腹に見えますが殆どが税金です。エコバッグの製造元が何処かは書いていませんでした。記帳を見ると本日の入館者は私で4組目のようです。ボロい商売だな。やっぱこーいう所に同和利権は食い込んでくるのかなとか納税者として色々思うことはありましたが守衛さんは一応は接客プログラムを受けていて丁寧だったし折り畳んで収納できるエコバッグは使えそうなのでプロ市民みたいな事は言いません。

 資料室は二手に分かれていて正面から右側がJAXAのお仕事と宇宙開発の概要、計画の格となるロケットその他技術の紹介、勝浦宇宙通信所の説明等が精巧なミニチュア模型と共に説明されております。

 勝浦宇宙通信所の模型。こうしてみるとホントにエライ山の中で秘密基地然として存在するのですねぇ。それぞれの説明が付されたボタンを押すと対象の建物が光って教えます。交通博物館で博物館の基礎を学んだ世代はとりあえず押しとけ。

 空にはちゃんと人工衛星。後ほど説明がありますが、パラボラアンテナが必要なのか、人工衛星とどんな関係なのかは大変重要な事なのです。

 お次は日本が日本だけに誇るメイドインジャパンロケットの模型展示とついでに各国のロケットの模型。和製ロケットとその他国製ロケットの尺寸が異なるのは劣等感の表れでしょうか? 私的には「ソユーズ」が飾られていたのが嬉しかったなぁ。「ソユーズ」、響きが好きですねん。


 日本語表記なく、隅にひっそりと展示されているコイツらは、たぶん嘗て(バブル以前)スペースシャトル型のオービタ製宇宙船開発を目指してデザインした「日本型スペースシャトル」。冷戦終わってバブル終わってカネなくなってスペースシャトルが時代遅れになってまさしく造らなくて良かった状態になった幻の宇宙船達はある意味展示中の白眉。嘗ては歴とした説明書きがあったのであろうが、今となってはほぼ無用の長物、一応模型造っちゃったけど官物勝手に捨てるの書類通さなければいけないからめんどくさいからこのままでイイや感が充満する役人気質がこの僅かなスペースに凝縮される。それにしても一番右側の「円盤型」はやりすぎだろ。「日本製」で「羽が折れてる」と真っ先に連想されるのが「人間爆弾桜花」なのがイヤ。そうか、これは本来遊就館に飾られるべきモノか。そういえば北朝鮮で宇宙開発資料館が造られた際、並ぶ模型ロケットはやはりアレなのだろうか? 

 これは衛星の軌道を安定させるために指示を出すアンテナの役割を解説するための模型。ボタンあり。とりあえず押しとけ。

 するとこちらの指示通り衛星は自転方向を変えたり軌道を変えたりして器用に動き回る様子がよく解るのですが、衛星が動く度に「ギェ〜」とか言って物凄くウルサイ。動くための推力を僅かなロケット噴射に頼る様子を表しているのかよく解らない。

 ウルサイといえばこの部屋中、実はひっきりなしに「ジ〜ジジジジジ〜ジ〜・・・」との音が鳴っている。原因はずーっと翅をはばたかせ続けるトンボの模型。宇宙空間における主要なエネルギー補給方法である太陽電池の解説のコーナー、ライトの元にある太陽電池に直結するのは何故か始終羽ばたき続けるトンボの翅。電気切れるまで休みナシで気の毒。 
 
 そして、他にも昆虫に似た姿の展示物。それぞれ飾られた和製人工衛星達の模型。正直、美しい。衛星やロケット等宇宙空間に直に接する機器に大気によって濾過されない太陽光の過酷な直射に対抗するため金初め種々の貴金属による装甲が、機能としてではない彩色としての力を与えているだけでなく、その過酷な空間に於いて己の成すべき機能に特化した無駄のないその形が何よりも魅力を喚起する。実用品は美しい。その実用品としての究極の形を成す人工衛星達が美しくないはずがない。

 何か屁理屈ばっかりこねてたらやたら長くなってしまったので分けます。肝心のアンテナ操作等続きは次回。

*1:多分こんな名前だった

*2:カゼッタ岡みたいな