『意志の勝利』

 の感想の尻尾。デギン・ザビ風に。要は途中で寝てしまいました、と。すいません、夜勤明けでうだうだと大トリがドキュメンタリーのレイトに耐えられるほどの体力はもうないと解っているのですが。

 ゆっくりと、古都ニュルンベルグの上空を浮かぶツェッペリンより、飛行船故の歩みの優雅さを、古都の持つ優雅さに重ね合わせて映画は始まる。特徴的な古都の建築物に見とれていると、その窓に飾られているのは黒の背景を染め抜く鈎十字、すなわちナチス党の党章。登場する全ての窓にではない。所々、にもかかわらず規則的に登場するハーケンクロイツ、既に画面に芸術の如く取り込まれた恣意の中、登場する飛行機。飛行船より、速い。優雅さではなく鋭さの暗喩、地上に降り立ったその飛行機から登場するのは・・・。

 大仰である。初めからこれだけの大仰さ。作中、音声はヒトラー初めとするナチス党各幹部の演説以外挿入されないため、この大仰さ、それも極端に視覚に偏った情報の集約がそのまま対象者(つまりプロパガンダを恣意するナチス党)への強い衝撃となって心の内にその対象者(つまりナチス党)への何らかの感情となって顕れる。映像によって視覚から鑑賞者の心の隙間に入り込んだ目の前の対象への違和感は、続く開会式、副総統ルドルフ・ヘスとそれに続く総統アドルフ・ヒトラーの演説により、もはや確信的にその声を聞き漏らさずにはおられなくなり、先程まで視覚から取り入れられた感情はここに聴覚からの、またその間も弛まなく、一挙手一投足逃さず映し出される「総統」の身振りとに、完璧に引き込まれる*1。最も伝えたいのは、彼らナチス党の幹部達の発する言葉に他ならないのは既にこの映画の冒頭で明かされて*2いる。それだけに、彼ら出演者達の合間に登場する脇役、民衆や真っ先に党の思想に感化される役となるヒトラー・ユーゲントの無垢な表情が、主役を際立たせる為の配置と端的に役割を述べてしまうのは卑怯のように感じる。
 再び、大群衆の中、党の幹部達の演説、そして一番に耳を傾けなくてはならいヒトラー総統の演説が始まり・・・、とここらで意識なくなる。面白い*3のにコレばかりは耐えられず、仕方がないので再度観に行くことにしましょう。

 で、まあせっかくなので、この映画を現在上映する最大の意義に関係する大事な発見をしたのでここで。つまり「眠気は全体主義に勝る!」こと。全体主義プロパガンダに曝されたときは、皆寝てしまおう! 眠気最強! と言うわけで敵国ロシアのプロパガンダアニメ制作者のウラジミール・タラソフさん*4、「眠気」でファシストに対抗するヤツを一本・・・眠気がぶっ飛びそうだ。と言うか、日本人はもう既に戦後ずっと目を閉じてるわな。すいません、機会があればもう一度感想書き直します。

*1:誤解を招くので「引き込まれそうになる」としておきましょう

*2:もっとも、上映の時点で既に目的は明かされているようなモノなのでしょうが

*3:誤解を招く言い方ですが

*4:http://d.hatena.ne.jp/sans-tetes/20090608