その百十六 新宿区百人町1丁目 『長光寺 薬師堂』


 そういやこんなところにお寺がありました。職安通り沿い、と言うより職安の目の前。場所柄檀家の方々小金持っているのか本堂建物中々立派。場所柄? 考えてみれば場所柄というのはよくわからない。確かにここらにお住まいで特定の寺の檀家になれるほど地域に根が張れるようになるには経済的にある程度の余裕がないと、とも思うが新宿百人町一帯はいつの間にかのコリアンタウン。隣はインド料理屋だし当たりに仏教徒、と言うか日本の檀家制度を理解できる住民がいるのか大変怪しい。目の前の職安行く前に験担ぎにお参りしてから、としてもそんな連中が小金持ってるわけないのでこのお寺の隆盛は何処で支えているのか、これは大きな謎です。門前には景気の良さを表す自前の「行き先表示柱」が有り、薬師堂への方向は「しあわせ薬師」と示されている。道行く人みんなしあわせああしあわせしあわせほんとにしあわせああしあわせ良かったね。
 道を挟んで向こう側の歩道は失業者が多そうにも関わらずこちら側の歩道はヒマそうな主婦とかの観光客と住民の在日とかが多いので、賑やかは賑やか。そんな通行人を意識してか門前の説明書きに英文が混じる。けど、この場所を気に留める人はほとんどいない。かく言う私も、ちょっと前まで二つ隣のネイキッドロフトとか歩いて東中野ポレポレ東中野とかこの近くを何度も通っていたはずなのに気に留めなかった。百人町・大久保界隈はあちこち歩いたのにこのお寺はあるのが当たり前といった感じなのでホントに気付かんかった、スイマセン。
 と言うワケなので本日お参り。通りに面して祭壇があるのがありがたい。こんな便利なのに、やはり参ろうとする人はいない。せいぜい、私が足を止めてお参りしようとしているのを見て多少関心を持っているような表情で通り過ぎていく人がほとんど。ちなみに、賽銭箱は通りに面してないのでこの記事を見て何か邪な気を起こそうとか考えんなよ。賽銭入れて、手を合わせる前に門前の、一応作法に則って頭上の鐘を鳴らす・・・「ゴン!」鈍い音が鳴り鐘響かず。これ物凄く意表を突かれて大笑いする。だって「ゴン!」だよ「ゴン!」普通さ「ゴ〜ン・・・・」って余韻を残して響くでしょ? 破壊的なまでの雰囲気の否定に先ほどまでの殊勝な気持ちがアホらしくなる。察するに、鐘が鳴らない理由はこの周辺の住民と関係がありそう。それに対して住民でもない私は何も言うまい。何も言うまいが、この雑然とした大久保百人町の空に向かって心が晴れるように鳴り響く鐘の音を聴きたいものだとは思う。こういうバカも鐘が鳴り響かない理由に一役買っているだということにも気付いた。