我、生きて原発の広告塔とならん その2

 「さて、各々お集まりの皆々様に申し上げる。これより泊原発プロパガンダ施設見学編第二幕の開演にござる。ちなみに第一幕を見逃したとの御仁はこちらをでござる→http://d.hatena.ne.jp/sans-tetes/20091002#p1
 共君・和ちゃん「たら丸君、たら丸君。どうして口調が変に時代がかってるの? 微妙に間違ってるし。」
 たら丸「これは隣町、共和町のイメージキャラクターの共殿・和殿。このたら丸、お二方の来訪を歓迎いたす」
 共君・和ちゃん「来訪というかWebだし」
 たら丸「さればでござる、このたら丸、かのみうらじゅんと申す御仁の差配を受けて日の本並み居るゆるキャラの御仁の面々を差し置き『ゆるキャラ大図鑑』なる書物の先陣を承り、はからずも日の本全土にその名を轟かすに至った次第により、よってこの文記載の次第某所よりの横槍を受け候事はお二方より重々有り候次第。よってその儀、真に起こりし時は『このような文言述べるたら丸はおりますまい』としらを切り通す所存にて」
 共君・和ちゃん「別に商用目的じゃないし、そんなに来訪者の来るブログじゃないから良いと思うけど」
 たら丸「そんなこと言ったらいきなり時代劇調使いだしたブログ主がただの変態みたいだろ」
 共君・和ちゃん「たら丸君、役役!」
 たら丸「そもそも件の泊原子力発電所、ブログ主、ふぉとがらの数寄を持ってしてかの原発の勇姿を一画に納めんと、第一幕で述べた環境センター、これから述べるとまりんかん、かの原発プロパガンダを司る二施設にてその勇姿の最も妙なるところを聞きしに、何れもが『岩内町』との返答を得る。すなわちこの第二幕の冒頭でそれがしが先陣飾らん理と成す。それではいよいよ皆々様、これより第二幕の始まり、しかと御覧あれ〜・・・つかもうめんどくさいからさっさと始めね。」
 共君・和ちゃん「たら丸君、役役!」

 ついでに、恐らく原発利権の恩恵を受けているだろう泊村のお隣神恵内村のキャラクター、「どらごん太君」

 何故か肝心の泊村のキャラクターは地元の看板、役所、Webどこを探しても見つかりません。道唯一の不交付団体の自負はキャラクターへの依存を必要としない、安易に世に迎合しないコトの表明なのでしょうか? そんな泊村のキャラを作ろうとするとやはり原発関連のキャラになるのかな? 名付けて「ウランちゃん」? これはNG なら「プルト君」? あこれはもっとダメ*1

 さて、泊原発についてのプロパガンダ関連施設は実はもう一つある。と言うよりはこちらの施設の方がメインであって先に行った「環境センター」の方がおそらくマニアック。これから紹介するのは設置母体北海道電力という正真正銘のプロパガンダ施設。名付けて『とまりん館』なんだまたかよ・・・。

 環境センターとは違い、こちらはもうプロパガンダそのものが目的で建てられた施設。見た目も立派な建物で、玄関前に観光バスも入れる立派なロータリー、観光客は雨でも濡れずに建物へ入れます。これはそんなロータリーの中にある謎のオブジェ。

 こーいう場所に建てられているオブジェは大抵意味不明であるのが殆どなので別に驚きません。ちなみに「環境センター」の方で置かれていたオブジェはこちら

 清々しいくらいに解りやすくて、却って施設の背景が伺えます。
 
 そんな立派な「とまりん館」、立派な玄関を入るとゆるキャライメージキャラクターがお出迎え。冷却水がないとちょっと物騒そうな彼の名前は『とまりん』。お前もそうか・・・。

 モデルとなった媒体同様、物凄いパワーを秘めていそうな「とまりん」君、実際トイレの場所案内からプルサーマルの紹介までまさに八面六臂の大活躍。そんなとまりん君に案内されてまず訪れたのは「科学展示」のコーナー。
 広大な館内だけあって、中はいくつかの展示スペースに分けられ色々と勉強したり楽しめたりするようになっています。ここ「科学展示」のコーナーは入り口に一番近いエリアで、色々な科学技術を応用して作られたお遊戯物が沢山設けられていて、基本的にお子さま達の興味を引くところです。

 そんなお遊戯の一つ「ボールコースター」。とまりんくんが紹介する通りのお遊戯ですが、大人も子供も丸いモノが動く様を眺めるのはやはり大好きなのです。ピタゴラスイッチが絶賛される理由でありますし、パチンコが止められない理由でもあると思います。この玉の動きに私もやはり抗えず、都合30分ばかり延々とこのコースターの玉を流し続けていました。
 この日は平日、時間は午前中だったこともあり、この場所を見学に来ていたお子さまが殆どいなかったことによる独占ですが、実はこの日かなり予定が押していてあまり時間を取れない中でのこの暴挙、さすがに焦って他の面白そうなお遊戯は殆どスルーせざるを得ず、甚だ残念。仕方がないので

 本当はやってはイケナイ「顔の押しつけ」でもって再現、「レオーネ・アバッキオの最期」。

 「科学展示」スペースの奥に広がるのがこの施設最大の目的「原子力展示」コーナーです。実物大の模型を多用するその展示内容は結構迫力あります。これなんかさりげなく原子力発電最大の問題を扱っていて参考です。それにしても「廃棄物」に「ドラム缶」は最高の組み合わせです。

 そのドラム缶のお隣、今北電始め各電力会社、国のエネルギー行政が一番プロパガンダして強行突破したい「プルサーマル」について解りやすくパネルにまとめた展示。あまりに解りやすくまとめているので燃料そのものが抱える問題点、燃料確保に当たって国際的に浴びている謂われないと言うよりほとんど因縁に近い非難、やはり最大の問題「核廃棄物」に関する説明は不十分で、このパネルだけ見るとまるでプルサーマルが「何度でも再利用可能な」「夢のエネルギー」のようです。原子力発電開始時、その推進に当たって最も重要とされPRされた思想が未だに根底にある様子。けど書かなきゃ行けないことは書かなきゃダメだよね。子供連れでここに来るお父さんは日教組のアカ教師に毒されたガキの意地悪な質問にちゃんと答えられるように勉強してからここに来た方がヨイようですね。

 これもかなり大規模で、しかも参加型の展示。原子力発電所における発電のプロセスを、各要所に設けられたミッションをこなしながら学んでいくというモノ。画面に映っている丸いキャラは色からすると「ウラン原子核」と「中性子」連想させますが、ただの冷却水です。額の番号順に各々「1次」「2次」「3次」というわけです。「僕たちがお互い直接出会うことは絶対ないんだよ!」加圧水型故の悲しき宿命・・・。

 「核分裂を起こせ!」時と場合によりかなり物騒に見えるセリフはたまりませんね。もちろんここでのミッションはバケツで直接濃縮ウランをぶちまけながらチェレンコフ光が見えたら逃げる、などというモノではなく、タッチパネルを使って画面上に沢山の中性子線を出現させてウラン原子に当てていくというモノ。結構な反射神経を要求されるため私は失敗。臨界に至らず。神業的な反射神経で物凄い数の核分裂を出現させると炉心溶融を避けるために強制的にストップするのかは判らない。

 その他に輪切りの原子炉の模型、実物大の発電タービンの模型等勉強になりそうな教材が目白押しだったのですが、先程述べましたようにこの日かなり時間が押していた*2のとで適当に回って次のコーナーへ。

 お次は階段上って「地域展示」のコーナー。写真は過去泊村で行われていたエネルギー産業の様子を紹介したパネル。他にも周辺の山に咲く草花の紹介や周辺の遺跡、主に続縄文以降の文化に属する土器の展示があり、「昔から何故かこの周囲には人が集まって暮らしている」、という事実を紹介。なんだかんだ言ってこの場所は伝統的に産業に恵まれた豊かな場所だったのでしょう。私的には「茅沼炭坑」についての説明、資料がもっと充実しているとよかった。

 展示コーナーは以上です。この先には展望台があり、海に臨む原子力発電所から対岸の岩内の街並み、遙か向こうの羊蹄山が一望・・・と言いたいところですが、生憎のお天気のせいもありましょうがはっきり言って殆ど何も見えない。当然原発は国家レベルのトップシークレット、こんな誰でも見えるところから見ることができるなどと言うマヌケな場所には建ってはいません。
 施設内他に「一年中使用可能の屋内プール」が存在。この施設もそうですがプールも無料で入れます。地域の住民的にはこのプールが一番の利点となっているらしく帰り際、学校終わった帰りと思われる子供さん連れた人たちが結構プールに向かっていました。もう一度言いますが誰でもタダです。つまり、余所者にとっては巨大な原発利権の一端を具体的な形で見ることのできる貴重な例です。北電の気の遣いようも見て取れます。

 泳ぐという習慣は当の昔に放棄した私にとって他にプールがあるからといって更にここに長居する理由とはなりません。つまり一通り館内を見終わったわけでそろそろ旅路を急ごうかと館の前にぞびえたつ山に沿って建つ風力発電を眺めながら玄関を出かかると、とまりん君より「泊発電所見学シャトルバスのご案内」。この瞬間、この後の予定全て変更お陰で今夜泊まる場所を改めて確保しなくてはならなくなったが、もはやそんなことは関係なし。

 このツアー、ほぼ毎日敢行。ただし見学といっても発電所の中まで入るわけではなく発電所構内にある展望台(発電所構内を一望する高台)まで解説を交えながら案内、その後帰るという30分程度のツアー。とは言っても関係者以外は「絶対に」入ってはいけない原子力発電所を間近に見ることのできる数少ない機械であることのは変わりなく、非常に興味深い。ただし、構内撮影禁止。ツアー中カメラの携帯はもちろん、バッグの類を持ち込むことさえ不可。荷物は全てロッカーに預けておいた上に名簿に名前・住所・連絡先を明記の上、ゲスト用の入構パスを渡されてやっと入ることが出来る。他に記念品を渡されますが何が入っていたかはまた後ほど。ともあれ、参加者はこれから国家の秘密の一端を垣間見ることになるのだ。けどメモの持ち込みは許可されたし中での出来事を口止めされたワケではないのでこのようにブログに書いてもたぶん差し支えあるまい。と言うワケで以下、ツアーの概要です。件の理由で文字だけです。
 私が参加したのは午後2時出発の回。参加者は私のみ。つまり私がいなければいちいち車出さなくてもよかったと言うワケです。集合場所には既に観光バスが到着。運転手さんとツアーを案内するガイドさん、そして北電の社員証を付けた謎のお兄さんが一人、ビジターとホストの比が恐ろしく歪なツアーの開始です。これだけでもひどくやりにくそうなガイドさんですがそこはプロ、出発からバス席の先頭に立ってきっちりと仕事をこなします。普段なら没個性に後ろの方の席を選ぶ私ですがこれ以上ガイドさんをやり難くさせても仕方がないので席は一番前に、ガイドさんの一挙手一投足にいちいち拍手で答えることにします。余計やり難い? ちなみにもう一人のスタッフ、謎のお兄さんは一番最後(と言っても「オレ」「ガイド」「その次」の3番目だけど)にバスに乗り込み一番後ろの席に陣取ります。気になります。

 「とまりん館」から「発電所」まで国道229号線で一本道なのですが、途中眺めのトンネル「ほりかっぷトンネル」を抜けて行きます。ガイドさんの解説はここからもう始まっています。嘗て海岸沿いを通っていた国道は発電所の建設を気に封鎖されることになり代わりのルートとしてこのトンネルが建設されたとのと。トンネル建設の際の住民の要望として「大八車が通れるように」との意見があり、片側の歩道はかなり広めに造った、と聞くひとが聞くと烈火の如く怒りそうな地域エゴの実体をさらっと語ってくれたりしてくれました。ちなみにこの日含めて何日か泊村内をバイク・歩行でウロウロしてみましたが、村人が大八車を引いてる光景にはついぞ出会うことはありませんでした。全然関係ありませんがこのトンネルの名前を調べるためヤフーの地図で泊発電所周辺を調べたところ、発電所の構内の道路まで丸解りになっていました。グーグルでさえこの手の施設は場所描くだけなのになんぼなんでもこれはまずいだろう。さすが日本の携帯電話通話料高止まりの元凶となっている企業の関連だけあって国賊と呼ばれても仕方がないですね。

 車なのであっという間にトンネルは通過。すぐに発電所のゲートへ。ここで警備員が乗り込んで一人一人入構証を確認します、と言っても私一人なのであっという間に終了、後は敬礼での見送り。
 ゲートの構内のトンネルを潜り、いよいよ発電所施設の見える場所へ。ここでバスは構内道路をゆっくりと上っていきながらガイドさんは各施設の説明をしてくれます。順路としては(車の中からだけど)「訓練センター」→「貯蔵庫」→「発電所」と言う順番です。ガイドさん、途中色々と説明してくれましたが、正直目的は一番遠くの丸いヤツだし別に核ジャックしに来たワケでないし貯蔵庫とかどうでもヨイ。そのうちバスは構内で一番高いとこ、「展望台」へ到着。

 展望台とは言っても高台にただ足場が置かれて構内の地図(風雪で摩耗して読めない)が置いてあるだけ。この展望台の右斜め前方を見下ろす形で発電所の原子炉棟が奥から1号・2号・3号の順で並ぶ。それぞれの建設・稼働開始年から発電出力数等のデータを説明。3台とも機能に差はないが、外見の形、施された彩色が違う。1・2号炉は炉の格納されてる丸いドームの殆どを円筒形の外壁で覆われていて、3号機だけ外壁はなく丸いドーム型がはっきり解る。彩色については1号・3号は薄い黄緑色で1号はドームを覆う外壁・3号はドームそのものに更にモザイク状に彩色。2号のみ棟はチョコレート色、ドームそのものは白で覆う外壁は灰色に外壁の天辺部分のみ棟と同じチョコレート色で縁取りされている。形の違いと色の違いをガイドさんに尋ねると、あまりにくだらない質問だったせいか返答に窮したガイドさん、一緒についてきていた件の謎のお兄さんに助けを求める。このお兄さん、どうもガイドさんのスーパーバイザーだったらしい。てっきり監視役だと思っていた・・・。それによると形の色の違い「ただのその時の好み」とのこと。随分自由ですね。この三者の色・形の違いは萌え人形化出来そうな気がする・・・。

 変な質問をするもんだから、そのお兄さんは私のことをわざわざ埼玉くんだりから産業構造物ばかり回ってきてる変態かと思ったのか多少警戒心を解いたお兄さん、私に婉曲に「変態ですか?」と尋ねてきました。ですのでわたしも「興味はありますが変態ではありません」と婉曲に答えました。すると少なくとも私が「わざわざ文句を言いに北海道くんだりまで来た違う変態」ではないことに安心してかいよいようち解けた感じの説明をしていただく。プルサーマル計画から世界の原子力発電動向、外部から見えないようにしているはずなのに何故か原子炉棟を色違いで作っていたりしているツッコミ、同じく近くからの写真撮影は厳禁なのに対岸の岩内からは丸見えなのに何も対処されていないコトへのツッコミ、どこどこの場所からの眺めが最高とか晴れた日に見える羊蹄山とのコラボが最高とか、更には初めから敵視した眼で参加する方々のこと、一字違いの「ゲンパツ」と「ゲンバク」の区別が付いていないまま訪れる人のこと。などなど・・・。最後に、「万一事故でも起きようモノなら、地域住民の方々にご迷惑をかけるだけでなく私の仕事もなくなってしまうので、こと事故に至るような事態に対しては身内としても大変切実で重要な問題意識なのです」と正直すぎてよく解らない御意見をおっしゃっていた。実はこの週末、今冬の3号炉稼働開始に際しての説明会を兼ねて地元の方々を対象に「中まで入る」見学会が予定されているとのこと。うわぁ〜、オレそっちに行きたかったよ。

 お兄さんが本音を語ってくれたあたりで時間も来たことで見学会もお終いとなり、バスは今来た道を引き返す。道中、原発構内を見ながら特に警備上における色々があるんじゃないかと感じましたがさすがに差し支えがあるのでここでは書きません。日本は平和だとだけ言っておきましょう。だからといってYAHOO!JAPAN、それは明らかにやりすぎだと思うぞ!

 ところで気になるツアー参加の記念品の中身ですが、一つは

 「とまりん君ストラップ付きボールペン」いつでもそばに原子力を・・・。
 そしてもう一つは

 記念品じゃねぇ〜。原発の全景丸見えだし、陸路のあんだけの厳重さは何だったんだ・・・
 
 最後に、日を改めて撮った泊村内某所からの発電所の眺めです。

 確かに背後に羊蹄山。確かによい眺めですね。ポイントはやはり原子力発電所。あの丸みが誘う魔性。どうやら、やっぱり、僕も立派に変態のようです。

*1:初代(?)プルト君はかつて「プルトニウムは安全だから食べても大丈夫」くらいのことを旧動燃のPRアニメで言い放って大顰蹙を浴びた伝説のキャラクター

*2:当初の予定では神威岬積丹岬http://d.hatena.ne.jp/sans-tetes/20091005#p1経由の後小樽に至るという今考えるとかなり無茶なスケジュールだった