その百二十六 銚子市外川町 『大杉神社』


 銚子市は関東地方で一番東の自治体なので、訪れたついでに関東で一番東にある神社に行ってみようと思い、銚子電鉄の終点外川駅と外川漁港近くにある大杉神社へ行ってみる。いつもの如く事前に調べたワケではないが、銚電の終点近くの神社なら恐らく関東最東端だろうと。
 以前電車でここを訪れた際は日中。当日は何故か夜。神社の鳥居前、道路を挟んで住宅とその向こうに港と海、鳥居横は公園。鳥居前の道と横の公園には電柱に付属の電灯のお陰で多少は明かり、神社周囲は決して真っ暗闇ではないが、神社の周囲、海風避けの防風林を兼ねた木々が囲み、囲われた境内、神社本殿は鳥居から段々の坂を登った先。銚子電鉄外川の駅を訪問されてそのまま外川港へ行かれた方はご存じのように、駅から港までは窮屈な路地を急坂で下って行かなければならない。ここ大杉神社もその急坂と同じ等高線上にあると見えて、神社本殿は同じような急坂の上。よって、神社周囲の電灯の明かりは本殿周囲には全く届かない。闇は怖い。
 海岸沿いの神社の殆どがそうであるように、この神社も漁に生きる住民達の海難避けとして多く崇敬を集めるらしい。境内には古く外川を開削した先陣の顕彰と海に因んだ錨・銛等漁師関連の道具が藪を背に突き刺さる。置かれていると言うより突き刺さっているとするのが適切な置かれ方が漁師らしい。そのお隣、海を背にして源俊頼の歌碑と解説。解説によると「(源俊頼と)銚子との関係はよくわかっていない」とのこと。「よくわかってない」、闇の中で道理の通らない言葉の浮かぶ事に時々恐怖を感じる。日中、ここからは遙かに雄大な海を望む事が出来る。
 本殿は無駄のない無骨な外観によく見ると龍の凝った意匠。と言っても闇の中ではその外観はおぼろげにしか浮かばない。一先ず参拝をして撮影。非力なデジカメ付属のフラッシュではあるが、暗闇の中十二分な活躍におぼろげな神社の概要がデジカメの液晶画面に浮かぶ。この頃から先程から後ろの公園でブランコを漕ぐ音が聞こえているのに気付く。こんな遅いのに・・・ 
 境内には本殿他にも摂社末社の類多く殆どが本殿に並んで配置、その様相が実に多様。例えば本殿一番近くの「恵比寿社」には文字通り恵比寿を奉り、小さな社内に小さな恵比寿像。この石造りの社、嘗ては潮風をまともに受けていたのかひどくボロボロ、材質の石の種類にも由来するのだろうが、社の表面、磯辺で岩にへばりつく巻き貝の殻の肌に似ている。この石の社を真っ直ぐでない歪んだ木の柱二本で支える。
 更に本殿と一番離れた位置にある稲荷社、見た目荒れに荒れ放題。ブロック積みの社の中に大小沢山のお狐様が一緒にひしめいているが入り口の扉が閉まっておらず、風で揺れてひっきりなしにギィギィと鳴る。真っ暗なら本気で怖い。あれだけ沢山のお狐サマがひしめいているのにこの荒れようは大変気の毒。
 それらに懲りずフラッシュアリナシ関係なく境内をパシャパシャカメラで撮っているとそのうち撮った直後の画像を確認する液晶画面に変な光が写り込んでいたのでイヤになって帰る事に。鳥居の前まで来ると先程までやはり誰かがいたのだろう鳥居横の公園、無人のブランコが揺れていた。