「し」 趣味への過剰な傾倒はいつか身を滅ぼす


 突然ですが、先頃二眼レフカメラを手に入れました。
 機種名は「リコーフレックス ダイヤM」と云うそうです。ヤフオクで5000円位で落としました。

 落札値が落札値なので動作環境については正直余り期待していなかったのですが、見た目はかなりキレイで、その「余り」を凌駕してくれそうな、そんな期待感は出品の段階から十分期待させてくれる、そんな印象です。

 さて、実際に手元に到着したカメラはどうかというと、やはり出品写真と違わずキレイなモノ。肝心のレンズは曇り・チリ殆ど認められず、シャッターも見かけは全速度で切れているようです。所謂「掘り出し物」といって良さそうな、そんな雰囲気は十分感じさせてくれます。

 さて肝心の問題として、私は二眼レフカメラについて全く知識のない素人という所です。そんな私がいきなりオークションで掘り出し物狙おうとは例えば2ちゃんの記事を鵜呑みにして国連大学前のデモ連中にナタ持って突撃するような、それくらいの無知で世間知らずであるワケですが、とりあえず現時点においてはまだそんな例えとは無縁にあるようです。



落札に当たって多少なりとも二眼レフカメラについての知識を得ようと地元のカメラ屋に聞いてみた所、そこの店番のオヤジが「市場に出回らない」「リコーとなると俺の生まれる前に生産中止になり見た事はない」ことから始まり後は延々と自慢話を聞かされるという、駅ホームの最端でカメラを構えている連中にうっかり電車到着時刻を聞いちゃった位のミスを犯した時の刑罰を受けるハメになり、しかも何ら得るモノはなかったという何かに興味を持った素人が瞬時にしてその興味を失うという連鎖に陥りそうになりつつ店を出たのが30分後という恐ろしい結果と相成りまして、何が言いたいかというと「もっとマシな店番置け!」。

 「構造のよく判らないボタンを一押しするだけで、世界を形作るあらゆる情報とそれと引き替えに詐術に陥るリスクを得る」という恐ろしい世の中に先進国で業を営む我々にとって「リコーフレックス ダイヤM」が何者であるか捲り見ることは、「シネコンでの上映作品を公開後一ヶ月経ってから見よう」と云う展望のない鑑賞計画に比べれば実に容易なことで、それによると、「当時国内で二眼レフカメラブームを巻き起こしたリコー(理研工学)が自社機の特徴であるシンプルな扱い易さ、値段に比しての優れた規格等の特徴を生かしてより高級感を高めて開発した『リコーフレックス ダイヤ』を多少廉価にした後継機」とのこと。あまり売れなかったらしい*1

 いかに現代社会において情報強者・情報弱者間に決定的なコントラストを媒介する文明の利器とは云え、このカメラの機種における詳しい操作方法までは教えてくれないらしい。つまりこのカメラの操作方法はともすれば世界の秘密に関わる程の非常に重要かつ隠匿された情報と考えて良く、ならば自分でその秘密を暴くしかないと、ここからはヘタすればせっかくのカメラの機構をぶち壊してしまう覚悟で、まるで『ダヴィンチ・コード』を己の命と引き替えてまでも暴こうとするトム・ハンクス扮するロバート・ラングドンにでもなったつもりでカメラの命をこの手に委ねようと決意する。嗚呼どちらもなんて空虚で意味のない秘密なんだ。

 初っぱないきなりフィルム一本ムダにする。敗因はフィルムの自動巻止め機構の構造を全く理解していなかったこと。裏蓋開けてフィルム(FUJIFILM NEOPAN100 ACROS)入れたは良いが、「自動巻止め」を、「セットしたら勝手に自動で機能してくれる」と勘違いしてそのうち当たりがあるとひたすら巻く、巻く、巻く・・・・。当たり無いままそのうちカメラの中で「ぴらぴらぴらぴら・・・」とか巻き切ったフィルムの先部分が裏蓋に当たる音が鳴っているのに気付く。と言うワケで記念すべき二眼用120フィルム一本目、感光なしで終わり。自虐*2を承知であえて言うよ。「一枚は清いまま神に奉仕する巫女さんだったと思えばいいだろ」。と言うワケでフィルムはうちの神棚にお捧げした後予備にスプールだけ回収して昇天召します予定です

 アイタタタ・・・。

 フィルム二本目。その前にこの「巻き止め機構」がただ単に操作ミスなのか、それとも機構自体が死んでいるのか見極める必要がありそうです。結論は「ただのミス」。当初全く意味のわからなかった巻き止めに付いている→、その上にあるポッチをその方向にスライドするのがミソと云うことらしく、そうすることで今まで動かなかった巻き止めの上部の窓(写真では見えませんが、巻きノブ上部に小さな窓があり当初「0」の表示になっている)の数字が動いて、ちょうど「1」の所で「カチリ」と音が鳴って止まる。

 なんかこれでセット完了みたいです。あまりに単純で拍子抜けですがデジカメに慣れるとこの操作も恐ろしく複雑且つ怪奇に見えるモノです。当然現代のデジ一とは違い露出計などと云うモノはこの機種には付いていないため自分で露出を量って撮影に臨む必要アリ。例しの1・2枚はデジ一の露出計を二眼に合わせて撮影してみましたが、果たして。そのうち独立した露出計を購入してしっかりと使おうと思いますが、まだカメラがしっかりと「生きて」いるかどうかはフィルム一本12枚撮り終わって(少ない!)現像してみないと判りませんので、その際に「死んでること」が判るかも知れず、まだまだ油断が出来ませんが、いずれにせよ今までに増して趣味の泥沼にはまっていくことは確かで、生活の足まで引っ張りそうな気配は否めず、面白い写真を撮ることよりまず、自分の節制を神棚に捧げた巫女フィルムと共に築土神社の勝守に祈ろうと思います。「誓う」のでなく「祈る」と云うのがミソです。はてさて。

*1:http://www.ricoh.co.jp/camera/cameralist/flexdiaM.html

*2:このブログ殆どが自虐ネタだが