宗太郎駅山の中、朝7時次の列車は10時間後

 ( 日豊本線宗太郎駅からの続き )

 列車の行ってしまい、次発は10時間後という絶望が支配する山の中、こういう時ネコがいると助かるのだが気温8℃、自国午前7時に周辺の家々より早く起き出して周囲を見回っている勤勉なネコがいるはずなく、後は駅構造物の中で撤去を免れた唯一旅客利用可能設備である便所で用を足すこと位しか思い立たない。残念ながらまだその肝心な用を足すこと、自前の膀胱も消化器も許してくれず後に取っておくとして、ほぼいくらでも時間を気にしなくて良い利点を生かして、宗太郎駅を、恐らく今後二度と来る機会のない悲しい事実も鑑みて、今一度見て回ろうと思う。

 嘗て「日豊本線一うまい水」と表示がされていたという*1井戸水の蛇口。現在その壮大な煽り文句は確認できないのは不測の事態を考えてのことだと思う。井戸水なら近くで工場等の施設、或いは工事の類が行われていなければ飲んでも平気なのでは?(煽っているモノのこの件についてブログ主が責任を負うモノでないので悪しからず)。Wikipedia添付の写真には青々と茂っている井戸背後の芭蕉が、緑を残しながらも先の方から朽ちようとしている様が痛々しい。

 井戸横から国道10号方面を望む。ただ山桜かな。

 井戸と路線橋を抜けて駅構内の端、延岡方面を望む。線路の続く様と駅舎始め駅設備の殆どが失われてその跡さえも消えてしまう様の対比が侘びしい。或いはこちら側に嘗て貨物ホームがあったのだろうか?
 
 「駅前通り」。駅前一等地に住まわれる住民の皆さんはまだ就寝中らしいのお静かに。

 路線橋から、駅舎跡を中心に。こうしてみると駅舎の土台から駅舎の内部の構造が判るようです。その跡に立つ公衆電話はいざという時のための命綱。実際今までこんなシチュエーションの電話ボックスに何度救われたことか。
 
 このホーム端の階段イイです。

 さて、適当に時間をツブしたところ無事もよおしてきたのでかねてからの計画通り用を足し、列車行き去り手持ちぶさたとなってからの時間の経過合計で約20分。もうさすがに、と云うことで次の行動に移すとしましょう。サラバ。

 さて、ここで話を少し脱線して所謂「宗太郎越え」と云われる単語について考えてみたい。WEBや書籍等によるとこの「宗太郎越え」と云う単語、文字通りここら一帯の地名「宗太郎」を峠の頂点として大分・宮崎両県間を越えて移動する行為そのものを指すとのこと。日豊本線・国道10号線共にこの「宗太郎」地域を縦断しているために生じた用語なのであろう。Wikipediaでは「宗太郎峠」の項目が設けられており、鉄道・自動車の両方において、またその前史においても古くからの交通の難所であった旨の記事が書かれている。「越え」と云う言葉はまた一方で「峠」そのものの意味も表すので、それに倣ってWikipediaないで「宗太郎越え」を検索すると「宗太郎峠」に誘導されるようになっている。
 他の、特に個人のホームページやブログで紹介されている「宗太郎越え」は圧倒的に鉄道関係の記事が多い。日豊本線最大にして九州でも屈指の難所、そして昨今の異常とも言える偏った普通列車のダイヤ編成が鉄道趣味人の興味をそそるのだろう。嘗て日本一の走行距離を誇った寝台特急『富士』の長大編成でここを越えることの困難さ、現在においても老体をあり得ない位の速度でもって大分県内や宮崎県内を走破する特急『にちりん』も上岡・北延岡を過ぎるあたりから急にそのスピードを控え目にする所から現在でもその困難さを完全に克服出来たわけでないこと、JR九州が都市間輸送の手段として半ば投げ気味の大分−宮崎間鉄道での移動を実行してみると十分すぎるほどよく判る。併走する自動車道路、国道10号線においても鐙川に沿ってそそり立つ急斜面や崖っぷちを狭隘な幅で曲がりくねる道路を走ることは相当に難儀であるとのこと。
 宗太郎駅6:30の列車で到着して後、7:00の延岡行きを逃すとその後約10時間の待ち時間が生じることは冗談でなく初めから把握していたので、この間の時間をどのように埋めるかはきちんと計画を立てておかなければならない。となれば行うことは一つである。「次の駅まで歩く」。どうも、何故こうなってしまったのはよく判らないが、このブログにあげるのネタの一つとして、「秘境駅を歩いて次の駅まで向かう」と云うことはお約束になってしまっている、かどうかはよく知らないが、「状況的に好むと好まざるとそのような状態に追い込まれてしまっている」と云うのは宗太郎駅を訪問する上で初めから予想できたコトなので、ここは素直に姑息な手段は使わず真っ当に、「大分・宮崎県境を歩いて移動、同時に秘境駅と云われる『宗太郎駅』を歩いて脱出」してみることに決定する。
 周辺のルートを見れば、ほぼ鉄道に沿って隣駅市棚駅まで行くには国道10号線が確実、と云うことは判っていたがそこは携帯の通じない山の中を歩き回るコトもあり万全を期してあらかじめルートの確認をしようと、以上の地図を参考にすると
http://map.yahoo.co.jp/pl?type=scroll&lat=32.78394962799079&lon=131.7156491362505&z=16&mode=map&pointer=on&datum=wgs&fa=ks&home=on&hlat=32.78348059044475&hlon=131.71586371297155&layout=&ei=utf-8&p=%E5%AE%97%E5%A4%AA%E9%83%8E%E9%A7%85
 宗太郎駅からすぐ南側に、国道・鉄道とはほぼ直角の方向に向かっている「宗太郎越」と名付けられている国道10号線ルートとは全く異なる道が示されている。実は元々「宗太郎越え」とはこちらのルートを指して云うのではないか? このルートについてはWikipediaにおいても何も触れられていない。何のかんの言っても既に個人のページやWikipediaにまで紹介されているルートは所詮他人の二番煎じの域を出ることはない。過去このブログを通じて紹介した旅行記に皆様からいただいたバカだの死ななくて良かっただのと生暖かい賞賛を浴びようと、そこはやはり「過去WEB上どこかで紹介されている」件という引っかかりは自身の中で結構大きな不全感・不満となっていたことここに正直に懺悔したい。
 で、件の「宗太郎越え」について、やはり鉄道乗車記を中心にWEBで紹介されていることでこのまま普通に「宗太郎越え」を敢行した所でやはりその不全感は残るだろう予想される中、このWEB上確認できる記事の存在しないこちらの方の「宗太郎越」は当に渡りに船の情報であり、例え今後同じように妙な道を走破する経験をすることになり、例えそれがWEB上のどこかで紹介されている出来事であったとしても、一度でも「紹介されいない」道を紹介した事実は今後の慰めと励みになろうと、用は自分自身の中で何かしら決着を付けるため、「宗太郎駅を歩いて次の駅まで向かう」行に「宗太郎越」のルートを組み込むことにした
http://portal.cyberjapan.jp/denshi/opencjapan.cgi?x=131.715556&y=32.783076&s=10000
上のリンクは国土地理院が管理する「電子国土」と云う地図サイトで検索した宗太郎周辺の地図である。この「電子国土」と云うサイトの趣旨、役人の書く凄く文系脳っぽく「カタクダケた」ヘンな文が面白いので引用すると「あなたが集めた街の名所、釣りの穴場、富士山が素敵に見える場所。そんな情報を地図に載せて地域の人、あるいは全国の人と分かち合いたいと思いませんか。あなたの素敵な情報を待っている人がいます。沢山の個人や組織が、同じインターネット地図に載せて発信した情報で、地域のいろいろなことがわかる。そうやって出来たサイバー国土が「電子国土」です。そんな社会の実現を目指して、「電子国土Webシステム」を提供しています。「電子国土Webシステム」を使って、私たちと一緒に「電子国土」をつくりませんか。 」と云う要は国の機関の肝煎りで運営されている地図を通したコミュニティーサイトと言うワケだが、そのお役所的な地図の詳細さは(地図記号が読めなければ利用価値が半減)評価するモノの、ここで作成した地図をダイレクトに貼れるブログが存在しないと云う致命的な欠点があり、その意味で使い勝手が悪い。
 が、各地図サービス提供サイトでは乗っていない細かいルートまで詳細に記した地図は大変重宝できそうで、「宗太郎越」についてもその峠を越えるための数通りのルートまで記載がされており、鵜呑みすれば大変便利この上ない。
 ここで「鵜呑みすれば」というちょっと穿った言葉を使ったのはワケがあり、もう一つこの地図の欠点として、「人がいない場所は全く更新する気がない」正確には「地図上に現在変更があればお知らせ下さい」と、地図の更新については全く自身でやる気がなく完全に人任せという、まるで「我々下っ端の木っ端役人はバレない限り仕事には取りかかりません」という事実をWEBを通じて公言しているような、深読みすればそんなサイトなのである。
http://portal.cyberjapan.jp/denshi/opencjapan.cgi?x=137.836639&y=35.211558&s=10000
例えとして上に挙げたのは例の小和田駅周辺の地図だが、これを見るとまるで「小和田駅そのものは秘境駅とは云え駅に向かうルートは幾通りもある」というような道の配置になっている。大ウソである。行った人はよく判る。行かなくてもなんとなく判る。
 今や、「過去国土を張り巡らしていた道を呆れながら見る」という用途が第一となった「電子国土」の地図を元にそこに書かれた他に資料の見つからない「宗太郎越」を敢行するに一抹の不安は残るモノの*2、これしか資料らしきモノのない以上行くしかなく、幸いにして時間は十分ある(次の電車まで10時間)ことも「宗太郎越」を敢行する勇気を後押しをしてくれる。見事「宗太郎越」を達成した暁には「列車に乗って、或いは舗装された国道沿いを『宗太郎越え』と息巻いているヤツらを鼻で笑おう」と密かに思っている高慢ちきが鼻について止まない矮小な人間が果たして「宗太郎越」を果たすことが出来るのだろうか? いつもの如くひどくクドくなったのでひとまず区切って次に続きます。

*1:Wikipediaより

*2:ウソです。全く根教のない自信に満ちあふれてました