高山稲荷から津軽中里の津軽鉄道

ちょっとグーグルマップでも見てみましょう

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 車力の高山稲荷神社をそのままずずーっと東へ行くとアラ不思議、結構近い場所に津軽鉄道の路線が現れます。旧車力村内に鉄道路線のない以上最寄り駅などと云う言葉は無きに等しい単語に過ぎませんが、ちょっと目を凝らしてみると津軽鉄道線のどっかの駅が意外に近いかもしれない、そういえば太宰治津軽』の中にも幼い頃金木から車力まで遠足で歩かされた時自分の着物が散々の柄で恥ずかしいやらで高山稲荷なんか憶えていない云々のお話しも出てきますことですし私も高山稲荷神社からの帰りは津軽鉄道線で帰る事にしました、最寄り駅まで歩いて。

 高山稲荷神社の項でも触れましたが、車力村中心部から七里外浜の方向、高山稲荷神社にかけて広大な防風林が広がりちょっとした密林の風景ですがこれら全て江戸時代ころからコツコツと植林されて出来たモノだそうです。

 その密林の中に突如現れる、津軽二大「湖」を示す行き先表示。十二湖と十三湖、お隣同士並んでるように見えますが十二湖の方を見ていただけばおわかりのように果たして十二湖部分を表示する必要があるのかどうか甚だ疑問に感じる十二湖への距離数ですが、やはりこれはただ単に「十二」と「十三」と並べたかったんでしょうね、青森県として。誰か他にこの「十二湖」と「十三湖」並んでる行き先看板ご存じ無いでしょうか?

 車力高山から津軽鉄道に乗る場合、岩木川をやや南側の橋で渡河して金木・芦野公園・川倉辺りが最短になるんでしょうが、そこは乗りツブし屋の性と云うか遙々本州最果てくんだりまで来たからと云うか、せっかくですから終着の津軽中里駅から乗ってみようと少しと云うかたぶんかなりと云うべき遠回りをして北側の橋から中里方面へ向かって行くルートを取ることにしました。南側ルートに比べればやや遠回りとは言え途中、車力の市街地、中里の市街地を抜ける道を取るのでこちらの方もたぶん楽しいんじゃあないかと思います。たぶん。

 密林の如き防風林、昨日潜った高山稲荷神社の巨大な鳥居、ここら地域に点在する溜め池を抜けて、と神様だけしかいない高山稲荷神社から人のいそうな集落方面へ、と言いかけたところで県道化した長大な山道をトラクターでドコドコ走破してる農家のおじさん登場。神は常に人とあるもの、ただ気付かぬだけなのです。単に歩いてるだけなのにいろいろと地域に特徴的な景色拝めて、やっぱ歩くのは楽しいですね、けど店とか商業的なモン全然無いからメディアには受けんよ、大体お前いつもバイクだろとか自問自虐しながら利用の際誰もが「どこが入口やねん」とツッコむであろうバス停「高山神社入口」は昨日私が利用したバス停です。

 途中、フル装備のお地蔵様に手を合わせ

 なんかよくわからんけど盛んに波立ってる溜め池を横目に

 更に遠回りとなろう車力の中心部へ。昔のままの商店が車が行き違うのに時々難渋しそうな昔のまんまの幅の村の中心路、全てが楽しい

 楽しいついでに何処ぞでお食事でもと思いましたが、通りかかる食いモノ屋らしき店舗、悉くが店を閉めたまたまこの日お休みだったのかそれとももうずっとお休みなのか、いずれにせよこれは悲しい。

 悲しくても腹は減るので適当に開いてるお店に入って適当にパンでも食う。地方の、まずはどう見ても地元民に対してしか商売を向けていないお店でヨソ者の自分がゲリラの如くなんか買ってく行為も楽しい。更に言えば看板楽しいし、種から農機具から飲み物から食いモノから開いてれば何となく便利そうな品物が見える店先はとても楽しい。

 車力の中心部路が、いきなり直角に岩木川方面に曲がる辺り、村の中心部の外れだろうと思われる辺りにあります宿屋さん。楽しい。

 宿屋を過ぎますと、市街地を離れる下り坂。本来なら坂下りきる手前で再度県道に合流、そのまま北上するはずだったのが

 道を間違えて岩木川への畦をまっしぐら。全ては中途半端にイー・モバイルのアンテナが立つから、下手にグーグルマップに頼るからこうなってしまうのです。全てはとまではいかなくともおおむねほとんど自分のダメ加減が生んだルートの大幅逸脱に何かのせいにせずにはおれません。

 おまけに雨まで降ってきて、当然のことながら川沿いの土手の上に雨を避けることなどできようはずは無く大分病んだ気持ちに。そのまま県道へ合流してもやさぐれた気持ちの治まろうはずの無く、想像するにずぶ濡れの怪しい風体をした中年がただもう恨み辛みを通り越して無気力そうにとぼとぼと歩いていたんだと思うと津軽大橋の真ん中で思いっきり私を迂回して避けてった軽トラの気持ちは大変よくわかります。そのため県道突き当たって中里方面へ向かうナゾ「米マイロード」なる道に行き当たってもなんの感傷も抱きません。写真も撮りません。だいだいね、「マイマイ」と来たら『マイマイ新子と千年の魔法』と無条件に出るに決まっているので、ものは試しにこの畦の由来や如何とこの津軽の地にも居たであろう諾子姫に問うてみよう。この地の諾子姫は安東の姫君かそれとも蝦夷の姫君か、千年変わらぬ葦の原。

 雨は相変わらずとは云え、中里の町外れに足を踏み入れ、その町並みがとても好ましきモノだと心も大分落ち着いてきます。有難いことです。町外れの地蔵様に手を合わせると尚落ち着きまして、

 後はただひたすら好ましき町並みを駅目指して歩いて行くだけなのですから

 例え途中土産でも買おうと思って立ち寄ろうとした漬物屋が開いて無くても腹立たない

 ガソリンスタンド裏のなんの由来かともかく煉瓦造りの煙突が格好良くて少し元気

 再び出会ったお地蔵様に手を合わせると、先程のお地蔵様にもあった胸の十字の意匠を拵えた前掛けが気になります。なんでしょうこれは。

 煉瓦のなんたらやら十字切ったおじぞうなんたらやら好ましい街並みなんたらやらで元気出たとは云えそこは相変わらず降り続ける津軽の遅い春の雨、体は芯から冷えたままに

 ある路地を曲がって遂に到着しました、目指す津軽中里駅。昔(10年くらい前)来た時は駅付属のスーパーが現役でぶいぶい云わせててまるで駅の方が付属品みたいな、そんな付属品に到着する列車がひどく奥ゆかしく見えてさり気なく、金木方面へ折り返す様など何かいたずらがバレてこそこそ逃げてく小動物のような可愛い卑屈さを錯覚させてくれてなかなか味がありましたが

 現在はご覧の通りスーパーは廃業、店舗跡の一部に何か地元(中泊町→旧中里町小泊村)観光案内所らしきのが出来ていました。どーでも良い事ですが三上寛さん、純粋さ故の歪すぎる郷土愛も満ち満ちた貴方の歌は大好きですが、常人には物凄く誤解されそうなので貴方をふるさとイメージアップ大使に任命すること結構ハイリスクだと思いますがどうでしょうかの案内所、この日はお休み閉まってます。大丈夫か?
 そしてすこし薄暗い駅待合室、老婆が数名、次の列車の発車時刻が近づくにつれ少しずつ駅に人が到着、待合所内の平均年齢が下がっていく様子はあちこちのローカル駅でも見慣れた風景で。

 対して到着した列車はそんじょそこらのローカル線では見ること出来ないストーブ列車で、え? 聞いてなかったモンでひどく狼狽しました。これではまるで私がストーブ列車目当てで津軽中里駅から津軽鉄道線に乗るみたいではないですか。

 甚だ不本意のウチに列車から乗客数名が降りてきます。外は雨、大体が駅まで車でお迎えの地元民でしたが、中には数名間違って観光目的で来てしまった人達、間違っているからなのか悉く傘も差さず頭からずぶ濡れ、むろん私も間違ってしまった一人です。

 客車の面倒臭いところは云うまでもなく牽引役の機関車の入れ換えに他ならず、いかに津軽鉄道が日の本に誇るストーブ列車とは云え機関士さんは内心「かったりーなー」とか思いながらガチャコンガチャコン入れ換えてんだろ−なー、そんな邪推をしてはいけません。北の果ての超ローカルな私鉄で機関士さんを雇い続けることと機関車の技術を途絶えさせないことへの弛まない努力はそれだけで賞賛に値する行為なのです。それがわかった皆さん、津軽鉄道に限らずこれから機関車を見たら涙を流しながら笑顔で手を振ってあげましょう。振りなさい。振るべきです。振ってあげようよ。

 準備終了に付き車掌さんとガイドさんに誘われ車内へ。見かけはストーブ列車なのですが季節柄「ストーブは点けてません」と説明。結局西津軽の気まぐれ雨に洗われた体は全く乾く間もなく、貴重な客車内せめて濡れた服で汚さないように、などといった鉄道に優しい気持ちは微塵も思わず、地球に優しいと宣う鉄道に優しいと間接的に地球に優しいのかしら等と思ったり思わなかったり、けど津軽鉄道線ディーゼル車だし。

 気持ちを切り替えて、撮影さつえい・・・
 
 さすがはストーブ列車+二眼レフ、全く努力してないのに絵になる絵になる、趣味写真はこうやって堕落していくのです

 堕落したテツなど気に留める人など列車内にいようはずの無く、ストーブの点いていないストーブ列車はゴトゴト順調に走行、奥ゆかしい津軽人の謙虚さが昂じて自虐になったのか決して不幸じゃないと思うぞ深郷田駅

 一応最寄りの賽の河原地蔵尊は本当にスゴイぞ一生忘れられんぞ川倉駅

 花見に来たけど桜五分咲き雨ずぶ濡れの芦野公園を過ぎると

 次の金木駅が当路線目安の区切りとなるはずなのですが、体冷えてたし急に沢山乗り込んできた乗客さん方がガイドさん方とがやがや、好ましい喧噪の私のような人間とは対極向かいつつある車内に背を向けるかの如く寝た、のでナゾの落書きで彩られた静態保存車のある駅がどこかは知らず、うつらうつらシャッター押してた様子

 そして気が付いたら津軽五所川原駅に着いていました、ようこそどういたしまして。

 楽しみにしていてしかも予期せぬストーブ列車(ストーブ点火無し)まで来てくれてこの終わり方はあんまりにあんまりなので

 お向かい、奥羽本線五所川原駅ホームから見た入れ替えの様子をどうぞ。

 後は県内まさかの唯一本線それでも単線信じられない奥羽本線各駅停車でゆるりゆるりと青森へ。