鶴見線ぬこ近況

 鶴見線と云えば工場である。鶴見線と云えば海芝浦駅である。鶴見線と云えば国道駅である。そして鶴見線と云えばぬこである。あーぬこぬこ。

 朝、初電に急かされ追われるように国道駅を後にした私は、そのまま鶴見川土手まで出る。そこには早朝ジョギング、イヌの散歩、ただ散歩、地元民でないのでよくはわからないがおそらくはいつもと変わらないと思しき光景とまばらな人の流れの中、明らかに寝不足気味の目に都市部に登山にでも行くかのような荷物、周囲の人々あからさまに異貌の自分を避ける中、ネコを見つける。

 人に避けられた一方ネコ心地はついたところで鶴見川を渡り鶴見線の次の駅、鶴見小野駅まで歩く。鶴見線はその全ての駅において長い間大した改装もされていないままになっていること、申し訳程度に自動改札と多目的トイレ設置を除きペンキの剥げたままの柱がホームに沿って並ぶ鶴見小野駅という線中巨頭駅揃いの鶴見線の駅の中では比較的地味目な駅を見てそう確信した。

 人の流れに流されるかの如く降りたのは鶴見線途中駅で支線を除いて唯一の乗り換え可能駅浜川崎駅、これから控える終着駅程ではないが、この駅も一時ネコの話題が遡上に乗ったコトもあり、終着駅までそのまま乗っていくのがつまらない時途中駅で降りるとすればこの駅が一番適当と思われ

 以前ネコのたむろすること多かった浜川崎駅南部支線ホームを覗いてみる。丁度電車の到着した直後、人波の過ぎるまで待って後ウソのような静けさ。その場所にネコの姿はない。

 なんとなく地図を眺めると浜川崎駅から扇町駅まで二駅、大した距離で無さそうに見える。ところがよく見てみると途中工場がでんと鎮座、なんだかよくわからない入り組んだ道路に線路にもうもうと煙を吐いてるその鎮座の間をするする抜けるように終着まで向かっている。降りる前に気付けばよかったのだが降りてしまったからにはしようがない、よくわからない入り組んだ道路を歩いて何となく鶴見線の向かう方へ抜けるような道を探していると「産業道路」に到着。見るからに、ヘタな工場よりずっとハードな有毒ガスがもうもうと渦巻く様遠くから見て取れるこの京浜の大動脈を歩くのは正直避けたかったのでしたが、降りてしまったモノは仕方がない。

 仕方が無いと言えばこの浜川崎駅から産業道路へ向かう最短道、以前ひょんな事から同様のコースを歩いたコトがあり*1もう十年近くも経つと思うが、現在途中景色の殆ど変わりのないのが、なんと云うか、場所柄恐ろしい。

 恐ろしいと云えば産業道路(神奈川県道6号線)、その最早歩行者にとってここを歩かざるを得ないコト自体がある種の不幸と云える車両最優先の大幹線、歩道はしっかりと歩行そのものに何ら差し支えのない作りをしているモノの恐るべきはその外側、もう一つある歩道「らしき」モノ。殺風景な工業地帯にせめてもの憩いの場とすべく道路に沿って遊歩道のような緑多い道を作る、そんなかつてのコンセプトが辛うじて見て取れるその歩道「らしき」モノ、今や名も知らない雑草が生い茂りそれがトコロにより二メートルはあろうかという傍若無人振り。嘗て「道」と意識されたと思しき土の筋は今でも辛うじて「道」としての認識を持てるモノの殆ど山中におけるケモノ道のような有様。そのケモノ道の周囲時たま現れるビニールシートやら段ボールやらを主成分とする構造物、比較的自由な方々がお住まいとお見受けでき、鬱蒼とした雑草の影に隠れてその構造物の近く生えてる雑草が時々ざわめき同時に蠢く影、トドメというかダメ押しと云うかその歩道「らしき」モノの周囲、うまい具合に小さな鉄製の柵で囲われていてそのやんわりと、且つ確実性を持った結界の如く車道側歩道とを隔絶する様子がなんだか上野やら旭山やらにある施設と錯覚してくる

 社会不適応にかけては私もあまり人のこと云える立場でなくいつ柵のあっち側に行っても不思議でないのでこの件はこれくらいで終わりとしますね

 右手側にグリーンライン、左手途切れることのない車列、頭上はには覆い被さるように首都高速、少し歩いてだけで息が詰まりそうになる産業道路をそのまま、ある交差点まで歩き続ける。その交差点を曲がるとその先には打って変わって光明が差したが如き景色が

 工場街だけど

 何気ない殺風景に実は景色あり

 なにもない駅前と見えて実は暮らしあり

 周囲工場への通勤者やらトラックやらが少々ペースを上げて走り出す頃、それら尻目にのんき構えてふらふら歩く事のなんと贅沢なことか

 贅沢の極みにネコが某社半公認で番する某駅で締めよう、目的通りに

 番のモノ一方で何か戒めてとするか自ら檻に入るモノ

 今日は君たちのために初めて適当なモン用意したから、お皿があるのだからいいんでしょ?

 扇町駅前確認できる根無しの輩本日二者。二者の間厳然たるヒエラルヒーが存在するらしく袋を開けて一方の皿にカリカリ放っても、サバトラの素早く皿に頭を寄せるに反して三毛の方はただ縮こまるばかり、見かねて秘蔵のもう一袋を別の皿に放って分ける事でようやくそちらに鼻頭近づける。*2

 その階級上と思しき方の俄に食すをやめるやそのまま駅出口の方へ

 当然のことながら一宿一飯の礼代わりと某社社員に変わって改札に立つでもなく*3その行く先は

 コレでした

 ヤバイでしょう、もう

 コレでもかとばかりに

 こぬここぬこキャー!

 まだ乳離れせぬこぬこ達が

 醜い人間に見られているとも気付かずに思い思いの藪の中

 中に一匹、この歳で片目のぬこがいるコトとても気になったり

 一匹図抜けてやたら元気のイイの

 いずれにせよ気になるのは一年前*4と打って変わった役者の変わりようで、今度来る時はまたまたガラッと変わっているのでしょうか?

 そんな思いにとらわれて少々哀しくてとてもとても後ろ髪引かれるのです、?見線最終駅の扇町駅。

 

*1:その時が初鶴見線沿線歩きだったりする、衝撃的且つ懐かしい思い出です→http://d.hatena.ne.jp/sans-tetes/20080125

*2:実は両方残された・・・

*3:ネコですから

*4:http://d.hatena.ne.jp/sans-tetes/20110507