ミッキーに会いに来ましたよ・・・酒田散歩

 山形県の海沿い、南側が悉く鶴岡市に収束される中で海沿い北側はと云えば鉄壁の県最北遊佐町のお陰で同じ庄内二大都市酒田市の少し控えめに見える様子からか半年前の荘内行で鶴岡ばかり重点的に回った挙げ句酒田市には寸土も足を踏み入れること能わずそのままなぜか鶴岡市になっている湯殿山へ向かうという失態を演じてしまった罪滅ぼしのため、と云うわけではないのです今回の酒田行は。

 酒田へ来た目的はズバリ誰かに会う目的です。誰かとは誰でしょうか? ズバリみっきーさんです。

 などと掴みの為に目的をややはぐらかすような言質を掴ませないかの如き表現を胸に秘めて酒田駅前にバイクを置いたからでしょうか、ものの5分も経たないうちにみ○っきーさんに会うことが出来ました。もっともこっちのみっ○ーさんは目的のみっきーさんとは似ても似つかぬあっちのうるさい方の○っきーさんだったので色々差し支え有りそうな写真は塗りつぶしときます。もちろん私が会いたかったみっきーさんはこの私が住んでるところから乗り換え一回1時間程で訪問できる都の植民地に出没し勝手な肖像使用をツブす為ならウクライナだろうが群馬だろうがどんな場所にも手下を派遣すること厭わないゆめのくにのボスのことではありません。

 成田三樹夫(2595-2650) 何も私のような者が今更この場でその経歴を言わずとも知らぬ者のいない昭和の名優ですので活動の概要にお知りになりたければいつもの如くWikipedia先生にでも教えてもらってください。人呼んで愛称をミッキーこと成田三樹夫氏が亡くなられた皇紀2650と言えば私それほど過去の日本映画に親しんでおらず直接のご活躍を見知っていたとはとても言えないのですが、その後多く映画に親しむようになって漸くその悪役初め出演各作における得難き役柄に魅了されるようになって初めて既に故人であったことを知るに至ったのでした。酒田市成田三樹夫氏の生まれ故郷でありその身永の眠りを委ねる場所でもありその故地を尋ね恐れ多いながらも墓参が出来ればと思った次第なのでした。では故人となった贔屓の俳優のわざわざ墓参りにまで駆り立てる動機とは? もちろんそれだけ好きな俳優さんであるというのも強い動機なのですが、もう一つ、自分の友人から聞きましたある小さなエピソードに心動かされたからなので、そのエピソードとは「成田三樹夫の墓参りがしたいけどどうしてもわからない。仕方がないので生前親しそうな印象のある三人の映画人に手紙を送って訊ねたところその内2人から返事があり最終的に場所を教えてくれたのが松方弘樹だった」とのお話。わざわざお手紙を出したこともお返事をくれたのが松方弘樹というのもそれがきっかけで最終的に墓所がわかったというのもなんか探偵ナイトスクープのネタになりそうなお話でちょっとずつ良いコトが積み重なって良い結果になったお話がとても気に入ったからでした。もちろん私は彼からその墓所を聞いたのです。

 それ以外にもミッキーの墓所についての情報が実はネットに落ちていて、とある質問サイトでのやりとりだったのですが最終的に成田三樹夫さんのご遺族と名乗る方が登場されて、亡くなって大分経つにもかかわらずファンでいてくれる感謝と共に墓所の場所を教えてくれるというこれもちょっと良いお話がありまして、普段の私なら「ネットこえー」となるところなのでしょうがここは素直に小さななんとなくよさげなお話に乗りましょう。

 ミッキーはきちんとしたお寺の墓所に眠っておられるとのこと。グーグルマップで酒田市と冠してそのお寺の場所を入力すると一発で出てきます。場所的には駅からそんなに遠くない様子。例え鉄道で酒田に来てもこれは大変便利。お参りしながら街中散歩も一緒に出来てしまえそうです。今回私はバイクで参りましたので駅前にバイクを停めます。実は駅前、二輪も四輪も車を停められそうな所は皆無なのですが一方であちこち再開発なのだか持ち主がいなくなったんだか駅前に相応しくない空き地がぼこぼこ点在しており、お約束の所謂シャッター通りと並んで地方都市特に駅前状況の悲しい惨状をここでも目の当たりにすることになります。悲しいけどこれ、空洞化なのよね。

 一方で駅前通り初めがんばってる個人商店も。そんなお店は地元都内地方東北限らず何処にあろうと大好きなのですがそんな中、特に目を引く場所にあるワケではないですが今回の訪問の目的に何となくリンクして、と言う意味で一際目を引くお店の佇まいが・・・色々ヤバそうなので全て伏せます。

 もう閉められているようですが、かつてはこんな造りで燃料を売っていたものです。店先出た隅っこの方に給油ノズルとメーターがあって。「ガソリンスタンド」とは言わず「燃料屋」

 何か理由があって沈下したのか元々この高さなのかトマソンと化した橋柱。

 オブジェとしては嫌いではありません。ただしこのように蔦の絡まった倉は機能していないことも多い。その意味で許せない場合も多い。

 「KDY」ストレートな略し方が素敵すぎる「かどや商店」。お店は閉められているので何の商いをされていたのかわかりませんが、未だ往時を偲ばせながらかつ控えめな看板もとても素敵。

 話の都合上閉めたお店ばかり紹介してますが閉めた店と同じくらいの数のお店が今でも現役でやってましたのよ。この日丁度お彼岸と云うことで店先に切り花を並べているお店が多く・・・そうだお彼岸だ。

 道理で目的のお寺に近づく程に人出も多くなる気がしました。グーグルマップが教えてくれるので目的のお寺も直ぐに見つかりその意味では順調この上ないのですが、お寺で人目に付くのではと。もちろん彼岸の時期に自分のように1人墓参りに来る人がいるのは何ら不自然でないのだが、参るのが全くの赤の他人であるという点で少々難がある気がする。例えばある日自分家の墓所に行ってみるとそこに見ず知らずの人が参っていたらどう思うだろう。どうも思わないかもしれないがどうか思うかもしれない。一度全く見ず知らずの人が普通に自分家の墓に来る立場の人にその是非を聞いてみたい。「大仙陵のフェンスをよじ登って更に堀にボート浮かべて釣りしてる河内のバカ者は殺した方がよいですか?」

 いずれにせよまずは目的の墓所を探してからにしよう。友人及びネット情報でわかるのは菩提寺まで、そこから先は境内を隈無く回ってそれらしき墓所を探すことに

 酒田市の泉流寺は開山を平安時代末にまで遡る古刹で、奥州藤原氏に連なる一族の女性が平泉陥落の後逃れて来たのがそもそもの始まりという。その際警護に付き添った36人の武士たちがこの地に落ち着いたのを機に剃髪し尼となり寺院を開き一族菩提の弔いを始めた彼女に引き続き仕えやがて酒田港を開き日本海交易に従事するようになりやがて地域一実力者なった後の酒田の街の礎を築いたのが彼らだという。(酒田市公式ページより)
この古刹一山をもって酒田の始まりを説明できる奥の深さもさることながら、私はどうしてもその尼を守る一団の中にナゼか一人だけ白面高眉狩衣姿で剣を手挟む烏丸少将に似た武人の姿が有るように…さすがにそこまで浮いた配役は思えない。もはや時代錯誤を飛び越えて暴挙とも云える配役であるが、暴挙であるが故に尚想像してみたい。…「麿にお任せあれば必ずや大政奉還大望達してみせまする」。ちなみに酒田の始祖36人の中に「成田」姓を持つ士の名は見当たらない。

 由緒正しき古刹の境内とは云えその墓地、決して広いわけではない。が、場所の見当もつかないただ一基の墓を探すには広いと云える。彼岸の、一年で三番目位に墓所が賑わう時期に一つ一つ文字通り虱潰しに墓石を見ていくのは少々の作業である。何より私と違って実際にご先祖のお墓に詣でている方々の合間を縫い時には目を盗んで墓碑銘を窺う私の出で立ちと云えば右手に手桶とそれに柄杓と切り花を突っ込んで、ここまでならまあ墓参の人らしい。が、左手に一眼服装は薄汚れたライダージャケット、自分の姿は自分で見えないとは云えマトモに墓参に来る者の姿ではないなと時々ピカピカに磨いた御影の墓石に自分の姿がうっすら映る度に…いつものことなので別にもはや何とも思いません。モチロン墓参者の邪魔を絶対にしないようにとそれだけは注意しておりましたが。
 注意深く且つ失礼のないように、一つ一つ墓石の名を拝見して回る。由緒を同根とする謂われか同じ名字が多く墓石に刻まれる。中々に目当ての名字は見つからない。同様に一族係累枝葉を延ばしここ酒田の地で代々栄える家ならば本家別家傍系の家の墓同姓の銘有ってもとは思うがなかなか見あたらない。気付けば正に虱潰しの言葉通り数十を数える墓石の端から端までを数えてみても見あたらない。私の他にも訪れたファンが墓石を少しずつ削ったあげくなくなってしまったか。それとももっと狂信的なファンが土台ごと引っこ抜いて持ち去ってしまったか。あるいは「エロイムエッサイム」の声とともに雷光鳴動起きて天草四郎と共に飛び去っていったか。

 イヤ、それ、役違う。ミッキーの役は縊り殺される松平信綱。縊り殺されると云えば敵刑事役の『女囚さそり けもの部屋』ですが刑事役の印象はテレビの方ですけど『探偵物語』が一番人気でしょうね。松田優作との競演『蘇る金狼』、そういえば同時期ですな。どんな役でも基本的にダンディで、だから黙ってりゃいいのに口を開くとなんか可笑しい、正にみっきーの醍醐味です。「金子がね! どーしても君をこの手で自分を殺したいと・・・」もちろん地眉毛そのまんまでその上に高眉描いて眉のヨツメウオ状態のお公家さんは黙っていてもダンディさの欠片も見受けられないが妖気の如く且つ静かにむんむん漂う野心も捨てがたき格好良さ。うん? お墓どこ行った!?

 成田三樹夫の墓は泉流寺本堂横手、大体本堂と寺院隣建物酒田市中央図書館との真ん中辺の並びに静かに佇む。一族代々の墓所という風に数基の墓石。その中の墓碑銘にご本人御名前を確認することが出来ず正しくこちらが目的の墓所であったのか部外者に知る術もない。墓石群中一際高い黒御影表面に「成田氏墓」の文字。こちらの墓所を見つけた後も境内余所「成田氏」に類する墓碑有るか念入りに探し見あたらなかったため此方の墓所で間違いないと思われる。普通の、墓です。「一族の墓に眠る」との情報は確認していたので奇抜な墓石など全く期待していなかったのである意味期待通りの佇まい。どのような佇まいの墓所であろうと行うことは一緒であるから、端から見れば普通に何の変哲もない墓参りに来ているように映るだろう。少し周囲を綺麗にして、切り花を挿し、お水をかけ、手を合わせる。至って普通に参り、参り終わればこれも普通に去る。手を合わせ故人に何を語ったか詳しくは語らない。お参り終わってただ、私にはまだまだ映画愛が足りないのだわと、少し反省。何れにせよ、一期夢の如く。

 直ぐに終わったと云えばその通りだし手間取ったと云えばまたそれもそうだなと云えるお墓参りの後、前日駅寝出来る程まだ暑さ弱まる前の彼岸日差し、更に歩き回るに苦はなく

 いつものように好ましきは古い現役の家

 古き中の大将のような喫茶店で甘物

 格子越しの裏通り墓にお水でなくお酒を蒔けば良かったですねとくよくよ柳に独り言

 墓参りの後は故人を偲んで湿っぽくなっていけねえやと

 そのまま話し相手が欲しくて即身仏参り

 即身仏に相談したって何も変わらぬさて困った困った

 酒田には映画館が見あたらない。






 酒田市泉流寺・・・http://www.dewatabi.com/syounai/sakata/senryu.html
 小さななんとなくよさげなお話・・・http://okwave.jp/qa/q7370109.html