檜山管内鐵路最期の日々・・・江差線葬鐵行

 一ヶ月居てもまだまだ飽きの来ない北海道行。今日は今日とて函館散歩。そんな時函館市内で耳にしたのはこんな噂でした。


 「キュンちゃんがイカのかぶりモノしてるぜ・・・」・・・ではなくて、いやキュンちゃんかわええけどアルクマの二番煎じ感満載なのはこの際置いておくとして、と云うかそもそもキュンちゃんの話題ではなくて

 「江差線が無くなつてしまうらしい」

 機会ある毎にお伝えしてるのでご存じの方はご存じのように、私家テレビも新聞もナシ、世間様の情報と云えばネットくらいでしかアクセスできない環境なのですがそんなに熱心にネットにかじりつく性でもなく気が向いた時必要な時でしか情報を集めない毎日を過ごしていた結果、時々街を歩いたときの張り紙の情報やお宿からもたらされる情報とかでしか世間の動きを知ることが出来ないと云う典型的日本型RPGの主人公のような生活を送る羽目になりました。思い出すのは「今時新聞読まないなんて取り残されますよ」「今時テレビのない家なんて有るんですか?テレビ見ないと取り残されますよ」・・・これまでウチに営業に来てけんもほろろに断られた腹いせにいいたれてった新聞の勧誘とか犬HKの受信料徴収人とかの捨てゼリフです。思えば常に購読者視聴者でなく資本と愚民の方を向いているマスコミの末端というコジキか借金取りに等しい業職至るまでこのように的確にダメ人間の末路を預言するとはやっぱりあの業界はありがたい神様のような存在なのだろう。みんな、新聞を取ろう受信料を払おう。オレは絶対しないけど。

 ところで上記世情の澱を糧にする方々について私見を述べた私も現在大層な寄生虫になっているわけですが、鉄道の話題と来て寄生虫と来るとやはり国労が脳内自動変換の上位に来る事間違いありません。私が北海道を訪れたこの時期丁度JR北海道例の脱線事故及び公企業としてあり得ない社内体質露呈と混乱の極みに達していた直後の事で、まあ分割民営時の国労潰しの実態を書籍なりwebなりで知識を得ていればそうだろうなと別に驚くほどの事ではなかったと思います。ちなみに私は昔バイトしていた某電車区の車両清掃会社でJRから「出向」させられたという親切なおじさんから知識を得ました。ただやはり国鉄時代は幼さも手伝ってそんな歪んだ視線で鉄道を見ていたワケでもないし気付いたら周囲E電(笑)になっていてむしろ東武の方がチンピラみたいな社員がゴロゴロしていてそっちに目が行ってしまって所謂客を舐めた「国鉄っぽい」JR社員にお目にかかる事はありませんでしたので自分の中でこーいった国鉄っぽい社員はみんな国労の連中で今頃は解雇撤回闘争やってるか日和ったご褒美に北の果てに飛ばされてんだろうと遠い目をしていたあの頃の思いが、数十年ぶりに今回蘇るような鉄道員に出会えた事が実は廃止前の江差線に乗れた事よりもずっと収穫だったりするのです。具体的には線内某有人駅*1の駅長だか助役だか役つきっぽい爺さんに周辺観光情報=直接業務と関係ない事について尋ねるとそれはそれはとても素晴らしい応対で接してくれて全然話が通じずあまりにもあんまりで段々とこちらがワクワクしてきた所を奥から現れたその部下らしい気の良さそうなおじさん駅員が慌てて平謝りな応対をし直してくれたという出来事があり、「ああこれか」ととても嬉しかったのが江差線最大の印象です。

 さて、半年後に廃止が決まったという澱目指して集る虫たち満載のせいで普段純粋に利用しているお客様型がデッキとかで小さくなっている車内、座ってる連中は当たり前のように車窓を眺め私もやはり車窓を眺めます



 そこにはいつも通り日常風景


 江差線木古内五稜郭間海側展望は今や数少ない北海道指折りの車窓だと思いますので。

 札幌行き北斗星に乗車される方は青函トンネル出た所からずっと起きてるように。なに?「あたしゃ車内から入れ替え見るから青森から起きてるよ」知らんがな。

 朝一番のスーパー白鳥より早く木古内へ到着する函館発一番列車、順調に吹いていた風向きが変わったのが木古内駅に着いてからです。

 「入れ違いの列車がこの先の峠にてレール上木の葉に滑って遅れておりますのでしばらく停車します」車内放送はそう伝えてくれましたが

 「どこよ」「いつものとこだよ」「ああいつものとこか仕方ないね」運転手さん保線屋さん駅員さんの話し声。これは長期戦になるなと直感

 まあ私みたいにどーせ江差まで行って帰るだけの寄生虫は時間なんていくらあっても困りもしませんが他に乗り合わせた葬テツ共は「45分で発車」と言う案内を鵜呑みにして安堵の表情でシートに座ったりしてやがります。

 と言うワケで新幹線接続駅改築と降って湧いた最期のバブルに湧く木古内駅を降りて回る事にしましたが

 見るほどのモノは工事中につき橋下無為無骨に伸びる連絡路と

 何故か時計が取り払われてしまった木古内駅

 思えば木古内駅舎は私が初めて北海道にバイク上陸した時最初に拝んだ駅舎だったのでこの味のある駅舎がまた中途半端な帯広駅みたいな駅舎になってしまうんだろうなと思うといたたまれない

 夜明け前も関わらずジョギング犬の散歩目的不明と旅客と関係ない人がウロウロしていた薄暗く怪しいあの跨線橋を私は忘れない

 ガオーじゃねぇよ

 さてホームへ戻る。平日朝のこの時間木古内駅は函館方面乗車客で繁盛しており江差方面へ向かうは見るからにヒマ人ばかりな面々。そのヒマ人共がシートに座って待ってられずホームに出て侃々諤々やってるわけだから45分という時間はよっぽど惜しいのでしょう

 だからこそこの遅れの原因となった江差発函館行き列車がきっちり45分の遅れで入ってきた時の皆の安堵の表情は忘れられない「おめーら甘えよ」

 大体からして行き違いの列車が遅れたのに乗る列車が遅れない理由がどこにあると

 気付くと車内運転席にいつの間にか保線屋さんが乗り込んでいて列車の方は万全乗客の方はスキだらけ

 「この先車輪が滑って坂を上るのに必要な摩擦を得られませんので砂を撒くためしばらく停車いたします」山中緊急停車と同時に正に我が意を得たりな車内放送

 北海道・東北地方のローカル輸送では無敵の万能性を誇る古豪の名に相応しいさしものキハ40と言えども自動砂撒き機は備えてないらしく


 外に降り出た保線屋さんは静かに速やかにレールに砂を撒きだした

 一方運転手さんも外に出てレール上の落ち葉を除去

 ヒマな客は物珍しさで窓から顔出し撮影

 やがて鉄道員お二人は席に戻るや列車をゆっくりと、空転を避けるためゆっくりと発車。乗客安堵。甘いよ

 ・・・と云うような作業を都合4回。初めは物珍しさに眺めていた乗客も4回目に至っては無反応、だべってる、本読んでる、寝てる、イライラしてる、と様々

 ゆっくりと滑らないように坂を登り切った列車がやがて勢い取り戻して通常速度になっていくのが目に見えてわかるのだから、せめてたった二人で列車を復旧させた鉄道員さんの成果を嘉して拍手くらいしても罰当たらんだろ愚民共、と一人で拍手してたら変な目で見られた

 結局木古内ー渡島鶴岡間1時間15分程の遅れ。木古内駅での待ち合わせも含めると2時間の遅れ、ようやっと着きました次駅、下車したのは・・・保線屋さん一人

 今度は上りの列車で同じこと繰り返すんでしょう

 この乗客数でこの時期いっつもこんなことやるんじゃそら面倒臭くなるわなと決して廃止に賛成ではないモノの理解を示さざるを得なかった函館〜神明間でありました(つづく)

*1:もう廃止になったから言っちゃうけどさ