『ホラー・ドラコニア 少女小説集成【壱】 ジェローム神父』

 初めてマルキ・ド・サドに接しようと思った時、文解的な感性を頼りにその代え難き風味を心ゆくまで堪能したければ、訳者に澁澤龍彦を選ぶはまず無難である。
 もしもあなたに文解的な感性が乏しく、読書の折り、文解と共にたちどころにして頭の中をサドの世界で支配されない場合、この本を読んで頭の中の映写の補助とするが良い。ただし、あなたの頭の中に生まれついての映像的サドの鍵を受け入れるに足るちょうど良い鍵穴を伴わなければ、より一層の混迷の元に、一瞬だけ単なる醜少女の嘲笑を写した後、サド・澁澤・そして会田誠は決して手の届かない場所に飛び去ってしまうだろう。

 ドラコニアへようこそ。