『ラビリンス〜魔王の迷宮〜』

 家にはテレビがない。そのため「何かやりながら何となく、テレビ放送を流している」代わりに「何となくDVDを流している」事が多い。時に映画、時に音楽。ちなみに今、ブログを書きながら「ロイ・オービソン『ブラックアンドホワイトナイト』」を流している。晩年に到ってもその神秘的とも言えるビロードボイスが失われないROY ORBISONの歌声は素晴らしい。テレビから流れるお馬鹿な情報の代わりに心が洗われるよな歌声を聞いた方がずっと為になるでしょう。

 そんなわけで先日、「ベスト・オブ・ボウイ(DVD)」を久しぶりに流す。本来メインとなる用事が早く終わったので「しながら」でなく、DVDに集中できることになり、更に久しぶりにDVDをじっくり観入る。ところでボウイというのはDAVID BOWIEのことなのであしからず。
 DISk2の2番目「Underground」3番目「As THE World Falls Down」は映画『ラビリンス〜魔王の迷宮〜』のために用意された曲で、DVDに収録されたプロモには映画のシーンもいくつか登場する。主要登場人物のうち、人間は主人公のジェニファー・コネリー(若い!と言うよりまだガキだ)デビット・ボウイのみで後はマペットという、ファンタジーを表現するにこの上ない設定。当時健在、最盛期のジム・ヘンソン監督で操られる、と言う表現が適切かどうか解らないマペット達の毒々しい色遣いがまた癇に障ること、一応「美形」に属する人間の演者との対比が素晴らしい。その中に暮らす、デビット・ボウイ演ずるゴブリンの王、ジャレスのまたいかれたコスチュームが、久々にグラムに戻ったようで逆に新鮮。デビット・ボウイ、今はもういい歳したおっさんだが、いきなりライブのステージでグラムの格好して出てきてもたぶん違和感ないんだろうと予想できてしまうところが「基本的にカルト」たる所以なんだろうな。誰がなんと言おうとボウイはカルトだ。

 It`s only forever〜ボウイのファンであることを差し引いても、どうしてもジャレスの味方。地底深く、ゴブリンに君臨するも常に一人。「そんな人生が楽しいはずがない」。

 ジャレス=ボウイのことだけで終わってしまいそうなので軌道修正。
 ストーリーに真新しいところはありません。筋としては単調な冒険モノ。子供向けなんだから仕方ないのだろうが、基本的に「マペット」と「ボウイ」、更に「良くできた美しいファンタジー世界」を観るための映画。ところで、マペットの中の「なんか家財道具一切背中に背負った婆さん」、うちの最寄りの駅前にそっくりそのままの女ホームレスがいて、魔宮も含めてなんかうちの近所みたいな錯覚が起きた。実際に日本の都市部、効率優先の変わり映えのない単調な建物が続く迷路と言って差し支えない風景が、新興住宅地を中心にあちらこちらにあって、ゴブリンみたいな住人(?)がウロウロしていて、道聞いてもシカトする。やっぱり醜いモノの頂点に立つのは美しいモノ何でしょう。うちの近所の魔宮にも、どっかに美しく、狡猾で、礼儀正しく、寂しがり屋のラスボスが隠れているのでしょう。そうとでも思わなければ足元をウロウロしているちっこい礼儀知らずなゴブリン共を蹴り飛ばしてしまいかねない。

 「ビジュアルだけの映画」が決して悪いとは思いません。その意味でこの映画は嫌いではないです。ただし、同様に「ビジュアルだけ」しか取り柄がないのにも関わらず、私的に「虫酸が走る映画」とこの映画とどこが違うと言うと、よくわかりません。