無為

 生きるために動くこと・・・所謂「当たり前のこと」、飯喰って、糞して、その準備のために家事をする。
 生きるために必要な一連の動作が、これほどまでに体力を消耗することなのか知らなかった。動けば動いた分くたくたになって、なるべく余計なことはしないように、体が言うことを聞かなくなる。
 折しも、徒然『さかしま』を読む。そのうち、デ・ゼッサントの憂鬱症と孤独癖が、陽の墜ちるや否や、あの垣根を越えて乗り移ってくる。幸いなことに、彼の宿痾の内最も忌むべき不眠症のみは、元より単純な神経に宿ることを自らのプライドを可しとじなかったようで、おかげをもって、比類無き不安と混乱から来る恐怖に怯えて陽の昇るのをじっと待たねばならない生活からは免れたようだ。
体の言うことの聞かないことと、心の憂鬱のままにどのような命令を下すことを億劫がることの間に、微妙なバランスの保たれていることは、決して殺人的な暑気のせいではない。