清水行き

 朝、5時台の各駅停車に乗って東京を出る。沼津行きの同じ車両には、今日の現場が静岡という労務者の一群が乗り合わせ、朝から酒は飲まないまでも、各々申し訳程度の朝食を取りながら、仲間同士で話していたのはずっとギャンブルの話題。「競馬」「競輪」「パチンコ」「スロット」、東京から沼津まで。私には理解できない話題をずっと話し続けた忍耐力に素直に感心。と同時に、我々も端から聞いたらこのように聞こえるのだろうな、と。最も感心するしないの差があるかもしれないが。興味のない話を、興味のない人に話してはいけない。
 熱海を過ぎると、東海道線JR東海の範囲に。停車駅を知らせるアナウンスが録音でないせいか、妙に暖かく感じる。駅に止まるごとに「扉に手を触れている方はお離し下さい」と一言多い。
 本日、晴れてはいるが山側は雲多く、富士山は雲に隠れて殆ど見えない。東田子の浦から富士にかけて、雲をキャンパスに、かろうじて影のように浮かぶ富士山が映る。このたびの清水行きで、所謂関東人が想像するイメージ通りの富士山にお目にかかることは一度もなかった。夏の富士は黒い。