『安彦良和原画展』於川崎市民ミュージアム

 終戦記念日に、川崎まで。何も・・・。

 別に、何ら思想的恣意を持って、素晴らしい原画の数々を歪めて観賞するつもりはなく、むしろあまり考えずに半ばぼ〜っとしながら回る。と言っても先生の作品は『機動戦士ガンダム(ファースト)』『THE ORIGIN』『ヴィナス戦記』位しかよく知らない。この機会に本腰入れて漫画等挑戦してみようかとも思う。
 その拙い知識の範囲においても、原画を前に思い浮かぶガンダムの名シーンの数々に思いを馳せれば、自然と涙腺が弛むのが感じられる。未だ少年としての純真さが心に残る証か、ただ単に歳を得て、ほんの僅か、感情に堪えることの難しくなった表情の筋肉の生理的反応に過ぎないのか、微妙な所である。
 盆とはいえ、平日午前中、人気のないミュージアムの雰囲気は好ましいものである。このミュージアムのマスコット(?)手塚治虫『笑い』の前で同様のポーズを一人で取っても奇異の目では見られない。自然光を取り入れるために、日中は最小限の照明のみで明かりを採る。そのため、場合によっては一日の内何時間も日の光の入らず、薄暗い中、展示物の立体造形物の影がそこかしこに落ちている。開館しているにもかかわらず、薄暗く、閑散として、さながら休館状態であるかのような佇まいは、このミュージアムをして私の中の上位に位置する由縁である。ミュージアム、引いては経営母体の川崎市にとってはあまり好ましいことではないかもしれないが。
 館内の、別のフロアで行われている『星と宇宙のファンタジー ―イメージの中の宇宙体験』。観覧券をセットで買ったため、あまり期待はぜず暇つぶしのつもりで入る。ところが。
 アート的な感性でサイエンスを括ってみるという試みは、かなりの教育効果が期待できるかもしれない。私が少年だったら、素直に感動し、将来への希望と、人類の英知の無垢な希望をより大きく膨らませていただろう。本日が終戦の日であるということを差し引いても。企画展内に参考として置かれていた『プラネテス』を久々に全巻読んで、今度は本当に感動した後、『笑い』の足元のベンチで寝る。たまに『笑い』が笑う。或いは趣味の悪い夢だったか。

 その後、当然の如く靖国神社へ。既に、神社を取り巻く運動家さん達も、いろんな身を守る装備をつけた官憲さん達も撤収した後。にもかかわらず、一向に和らぐ気配のないうだるような暑さの中、少しも緩やかな気持ちで参拝する雰囲気にはなれない。別に、この場所へ参拝することが特別なこととは思わない。