『乗り物・おみやげでたずねる昭和30-40年代の旅 ーよみがえる旅のキオクー』於横浜市立歴史博物館

 鉄好き? だったらおいでなさい。
 まずは、これだけの資料、よくぞ残して置いてくれたモノだ。展示されている資料の殆どが個人から借与された「思い出の品」。修学旅行のガイドブック・予定表から始まり、使い終わり、思い出の地にちなんだ院の押された各種切符、もう一つ思い出の地にちなんだパンフレットの数々、更には駅弁の包みまで・・・。大切な品々を提供されたみなさんの心意気には大いに感じます。それと同時に、世の中「進歩」して、だんだん手軽になっていく国内旅行、それと共に今や滅びてしまった当時の不思議な道具としきたり、近い将来無くなるであろう不合理な用具の数々・・・。後半に大々的に展示された日本全国観光地のご当地土産の数々、特に「テナント」の種類の多さは圧巻。うーん、今となっては本当に「こんなモン」なんだが。
 それにしても、今は見ることのできない当時の「風習」には大変なカルチャーショックを受ける。夏休みの研修旅行に車中泊も厭わない強行軍を敢行する女子校、一編成全てが新婚カップルだけの「急行ことぶき号」、列車の席が足りないためデッキにござを敷いて座らせた修学旅行・・・等々。
 そして、鉄属性とあまり関係なく一番笑わせてくれたのが「当時の文章」のもったいぶって大仰な言い回し。「(新幹線)こだま内では興味本位で行動しないこと (当時の修学旅行のしおりより)」→興味本位の行動って何? 「第二の人生のスタートにあたって、若い二人が静かな高原や海辺の宿で、夫婦としての心や肉体を睦み合い、新しい結合にとけ込んでいく新婚旅行というものは云々(『新時代の礼儀作法』という新婚夫婦への手引き。著者は当時の大妻女子大の学長)」→今ではありえねぇ思想だし、表現がなんだか慇懃なエロ小説みたい 「(寝台列車内で)自慢のネグリジェでうろうろして間違ったことが起きる例もあるようです(女性向けの「初めての寝台列車」手引き)」→あったんか? この「女性向け寝台列車の手引き」は10ページほど使って「作法」「心得」を写真付きで解説しているのだが、なぜかほとんどの説明にオチを付けたりボケをかましたりしてる(例えば、なるべく着替える手間の掛からない軽快な服装を奨励しておきながら、結局「着替えたければ車掌に頼んで部屋を借りましょう」とか)妙な文章で、私にとっては今展覧会の中の出品物の白眉でした。
 とにかく、鉄と、諧謔好きにはお薦めの展覧会ですので興味のある方は是非に。

 蛇足・・・意に反して、国鉄のポスターってセンス良い。一見の価値あり。

 大蛇足・・・行く途中に乗り合わせた電車の、駅名を告げる車掌の声がやたら低くて、その節回しも相俟ってなんか伊武雅刀にそっくり。マイクを通じてのその声に、スネークマンショーが重なる。いつ「コナサン、ミンバンワー」とか言い出すんじゃないかと、笑いを堪えるのが大変辛かった。