雨男

 台風の中、教習。臭いカッパを身につけて、爪先までぐしゃぐしゃに濡れたこれまたくっさいブーツを履いて、大嵐の中ぐるぐるぐるぐる、浅瀬と化したコース内をひたすら回る。築100年のトタン屋根よろしく、雨水は容赦なくじゃじゃ漏れ、体は芯まで冷えて指先の感覚がなくなる。そんなこんなで本気で死にそうになる。検定でなくて良かった。
 数十年前、四輪の高速教習も何年かに一度という台風の中、容赦なく浅瀬を掻き分けながら突き抜けていくトラックが生み出す大波にハンドルを取られまいと悪戦苦闘したあの日が思い出される。
 大事な日には、よくこんな事に行き当たる。ただ、嵐の中外を出歩くのは面白い。こんな日に、ふらふら危険な場所に出向いて「行方不明者1人」になるバカの気持ちがよくわかる。