『世界を魅了したティファニー 1837−2007』於東京都庭園美術館

sans-tetes2007-12-15

 形に触れようと手を添えて、覆い、包み隠すようにして触れられているにもかかわらず、更にその掌を包み隠すかのような溢れる光で彩られたダイヤモンド。やはり、そんなモノに観るべきモノは何もない。オードリーがお店の前で朝飯でも食わなければ、こんなブランド名、耳にしたその一瞬だけ、私の海馬に蓄積されることなどなかったであろう。要するに趣味ではない。まあ、それ以前に私ごときが簡単に購入できるシロモノではないという現実が目の前に横たえているのも事実であって、まあ、言うなれば「大きなお世話」である。
 雨のほんの少し降る中、真赤で敷き詰められた池端の小道、濡れているから滑らないように注意深く歩く。前を見るより足元を見ることが多いから、時々前を見ると、思いも思いも寄らない風景が映る。
ここがどこであるかの忘却とここが都心であることの再確認。今この美術館に来ている皆々様が、造られた光のまやかしに騙されているからこそ味わうことのできる至福。断っておくが、この文章に悪意はない。
 確かに、世にある光をすべて我がモノのようにして振る舞うアメリカ人には丁度良いのかもしれない。なるほど、こんなモンに魅了された世界は明日にでも滅びてもおかしくはないな。