雪のなは

sans-tetes2008-02-23

 だいたい8時頃に京都に到着すれば、それから新幹線を乗り継ぎ午後からの仕事に間に合い、またその日を京都見物に当てるとしても結構余裕を持てる、九州発「なは」「あかつき」は、今もって非常に使い勝手の良い寝台特急である。無謀な平日の九州強行、飛行機の大嫌いな私はこの寝台特急にどれだけ助けられたか、その寝台列車がこの3月で遂に消えるとのこと。「経営効率化」という伝家の宝刀は、一個人の効率などという物は同じく切り捨ての対象らしい。
 今回「なは」に乗る機会を得たのは、別に乗り鉄的貪欲さの作用としてではなく、全くの偶然、今、大雪の影響で「なは」がたまたまイーモバイルの提供地域内で立ち往生、やることなくてブログを更新しているのと同じくらい偶然である。「なは」の名に似合わず、雪による影響、恐らくこれで最後になるであろう九州特急におけるB寝台の味と共に、私にとってはこの上ない僥倖、本日これから眺めるであろう京の雪と共に、長く私の記憶に留めるであろうこと、この巡り合わせには、やはり強く感謝。
 本来なら今頃は大阪府内に入っているだろうか。ラッシュ時、背広姿の人々で溢れるホームを後目に悠々と走る青い優等列車、それに乗り、無為にして車窓を眺めるこの上ない優越感。平日ともなるとほぼがらがらの車内、心地よきダメ人間の境地、昼間のビールのなんと心地よきことだろう。
 ただ時代は、そんなダメ人間の存在を絶対に許さないらしい。ホームに立つ背広連中の、間接的な恐らくは総意により、現在ダメ人間と化した関西発の九州特急は滅びる。今現在窓の外は全て雪。大切なモノも余計なモノも全て覆い隠そうとするが故にこの列車も立ち往生を余儀なくされる。B寝台下段、車窓が望めて、カーテンで仕切られた最低限の個室。或いは禅で説く空間の境地に似たるか。私はいつまででもここにいても構わない。合わせて時間が止まるなら。