その二十七 新宿区北新宿 『延命地蔵』

sans-tetes2008-03-18

 大久保通りと小滝橋通りの交差点、道路に面した角の商家の一部が地蔵堂となっている。嘗てはのどかな田畑に覆われていたであろうこの地はご存じの通り今や人通りの絶えることのない賑やかさに、お地蔵さんも埃を被らない日はない。私もまた、ご多分に漏れずここの通行人となることは多く、通りがかり、このお地蔵に手を合わせることも多い。その時気付くのだが、ここを通る通行人のほとんどが地蔵堂の存在を認識していないらしい、何故か。
 お堂にお地蔵は三体、それぞれ高さも姿も全く不揃いの様は些か異様である。三体とも同じお地蔵、三尊様式に倣った訳でもあるまい。ただし真ん中のお地蔵は物凄い目立つお姿。頭がデカイ、というより明らかに別のパーツがお頭に。石のお堂の屋根の部分だろうか、横長の石がポンと乗せられている。このように「異様のお姿」を敢えて真ん中に持ってきていること、恐らくはとても曰くあってのこと。そう言えばこのお堂のお地蔵、真正面からみると三体の内二体が「首がない」ように見える。件の真ん中の一体と右側の背の高く頭がお堂の屋根に隠れて見えない一体。誠に曰くありげの延命地蔵御三体、皆は何故それに気付かぬ。
 この日は久しぶりに長距離歩いて結構疲れた。この上更に2時間ほどバイクに乗らなければいけないとなると多少の休息が必要かも。ということで折角なのでこの地蔵堂の前、歩道の真ん中で休ませていただこう、にしても手ぶらは寂しい、のでお隣の和菓子屋さんで桜餅を購入してお供え。甘いものはお好きでした?
 お供えの際、地蔵堂の内部を少し覗くと、不思議な空気が流れていること感じる。お地蔵さんは三体共に頭はあって優しく元気そう。お堂の中、片側に拵えられた棚、UFOキャッチャーで取ったような人形が数体、その向かいには達磨さんの絵、千羽鶴。この狭い空域、実は大変崇高なプチ聖域。「延命」たる由縁、煤けた小さなお人形に込められたし。そして、ここでちょっとだけ重要なことに気付く。お地蔵さん他、甘いものがお好きそう。
 お下げした桜餅を戴きながら、「桜餅の葉っぱ取る人いるけど何でかな?」とか考える。何でかな?