『おいしいコーヒーの真実』

 観賞の後、「スターバックス」の床全てが、床下から両手を上げて建物を支える黒人達の掌に見える映画。最も、日常的にコーヒーを飲む習慣が無く、生涯の内数えるほどしか「スターバックス」を利用したことの無い私はよく解らないが。
 映画の内容はこうだ。現在世界中で最も消費されている農産物の一つであるコーヒー豆は、市場を牛耳る数社の多国籍企業によって消費者と中間業者側に有利な価格設定が行われる一方、生産者側には生産者自身の意向が全く反映されず、特にこのこの映画の生産者側の舞台であるエチオピアにおいては(コーヒーの発祥地だそうな)原価の価格が徹底的に抑えられた結果、主要な生産物であったコーヒー豆を作る農家達に全く利益は享受されず、結果コーヒー豆に代わり麻薬を生産するに到る人々も現れる。「適正」な取引による農家への利益還元のを目指し国際舞台で奮闘するあるビジネスマン(少し胡散臭さが漂う)の活躍を中心に、コーヒーに代表される世界中で取り引きされる作物の価格が決まるカラクリや消費側の事情、更には国家間の貿易を巡る「不均衡の是正を望む」側と「不均衡を望む」側との攻防を交え、最後に所謂フェアトレードへの理解を求める。
 相手の浮気を知らないことで自分の幸せを保つことが出来るなら、決して真実を知る必要のないのと同じように、何も知らないでこれからもおいしいコーヒーが飲みたいのならば別に観る必要のない映画。私自身、現時点における「フェアトレード」という取り組みに両手を挙げて賛成するわけではないので。けどここには世の中の仕組みがわかる大切なことが描かれているんですよ。「何かを得るには何かを犠牲にしなければいけない」。知りたいと思えば勝手にどうぞ。知った後どのように行動するかもその人の自由です。