『愛おしき隣人』

 私、この監督の描く「北欧の街の自動車渋滞」がなんか好き(前作『散歩する惑星』ではもっと長くて乗客の独白と運転手との掛け合い、更に車外の渋滞の様子、街行く人々の姿が秀逸)。鈍色の自動車・道路・街並み、渋滞に呑まれてゆっくり進むトラックから、夕べ見た夢を語る運転手。夢の内容はハーケンクロイツのクスグリ電気椅子行きのオチ。そのエピソードを、淡々と語る運転手の目が鈍色の景色に染まり恐ろしく無気力に見えて、ひどく好感が持てて。
 バーの主人が鐘を鳴らして告知する。「ラストオーダーだ、また明日がある」カウンターに群がる客達。彼ら自身の思いを忠実に表す行動は、多くは他人の健全な理解を拒む。
 作中、最初から最後まで、「こんな隣人イヤ」的笑うに笑えない「含み笑い」のエピソードの羅列。まじめに人生を生きて、まじめに人生を思い悩むから、まじめに不真面目に見える他人の人生。個々のエピソード持ついみなど理解しなくても良いから、ほんの少し瞳に涙浮かべてほんの少し「あはは」って微笑みながら観ると楽しい。