『ライフ・イズ・ミラクル』

 動物達がね、すごくいいんです。最初から最後まで泣きながら主人公ルカ(ラヴコ・スティマチ)を見守る「守護天使」のロバ。ご主人様の朝食を隙あらば横取りするはあちこちちょっかい出して回る大変強気な飼いネコに、そのネコに威嚇されて逃げ出すダメッぷり全開ながら徴兵される一家の長男ミロシュ(ヴク・コスティッチ)を追ってどこまでもどこまでも追ってくるシーンが涙を誘う心優しい飼いイヌ。家の周りどこでも集団でウロウロがお約束のアヒル達、中にはルカの作った鉄道模型の山の上をウロウロしている子アヒルがいたり、一方でその誕生直後に檻の目から抜け出す様子が遠くサラエボで発生した戦争の暗示となったり。同様に戦争の悲劇への暗示に見えるオヤジぶっ殺して家の中漁ってるクマはさすがに本物のワケねぇよな。『黒猫・白猫』でもそうだったのだが、この動物達どうやって仕込んで「演技」させたのかが不思議。お話、悲惨で悲惨で仕方のないボスニア紛争での出来事を描いていたのにもかかわらず、どことなく明るくほのぼのした雰囲気を出している。なるべく悲劇性を排そうとする監督の姿勢だと思うが、この動物達の使い方の巧みさがかなり一役買っていて、本題である「戦時における許されざる恋」を巡る多くは大変胡散臭い人間の業のあり方がよく解る。