QUEEN+PAUL RODGERS 『the cosmos rocks』

 はじめに断っておきますが、『QUEEN』のアルバムではなく『QUEEN+PAUL RODGERS』のアルバムです。しかも現在の『QUEEN』とは『MAY & TAYLOR』のデュオを指すのだから*1、このアルバムを「オリジナルのクィーン」と比較して「クィーンじゃない」とか言う奴、そんな当たり前な的外れな批判はせず、まずFREE及びBAD COMPANY等ポールの曲を聴いて彼の曲及び歌い方が自分の性に合うか見極めてからこのアルバムを聴いてほしい。『the cosmos rocks』には当然のことながら一曲としてかつてクィーンがヒットを放った曲は収録されていない。このアルバムは「同窓会」を楽しむために作られたのではない。
 さて、私は音楽のことなんかなにも知らない。当然のことながら音楽についての専門的な知識、技術的な側面、更には英語さえ満足に理解できないので、雰囲気とフィーリングでしか音楽を説明することしかできない。よってここに書かれることはすべて戯言といっても過言でないので、このアルバムを正当に評価する上で何ら参考にはならないのでその点あしからず。
 で、私の印象。まず、私がこのアルバムを「購入しなければいけない」第一の理由である「クィーン」のメンバーの印象なのだが、印象として彼らがかつて「クィーン」としてではなく各々のソロとして発表していた曲の路線に近い印象を受ける。私は「クィーンでない彼ら」も嫌いではなく、その商業的な失敗となによりもフレディの死というクィーン本体が辿った劇的にして数奇な運命の影響が、そのメンバーとしての彼らの行動に影を落としたことに非常に残念に思う一人であり、その結果失われてしまったもう一つの方向性 それぞれのソロの「失敗」についていろいろ理由は考えられるだろうが、やはりどうしても聴く方も「クィーンの影」を期待してしまうことが大きな原因であったろう。やはり、あの圧倒的なボーカルが引っ張るクィーンの楽曲の魅力を、「そのメンバーが行っている」という一点しか繋がりがないにも関わらず、皆その印象で彼の全く関係ないところで行われているプロジェクトにおいてもどうしても比較してしまうのだ。そのため、彼らの持つ「クィーン以外の味」がうまく味わうことができなかったように思う。その意味で、彼らが自身の素晴らしい作曲及び演奏に釣り合う為のこの上ないボーカル(歌唱の質は全く異なるが)を手に入れたことは、一度中断された彼らの「別の」方向性を再評価する上でこの上ない僥倖だと思う。このアルバムでは、彼ら一流の(と言うか、私的には主にブライアンの)演奏が「浮かず」、見事にポール・ロジャースのボーカルを乗せて生きている(気がする)。曲作りをポールのボーカルに合わせたからこうなったのか、それともブライアンとロジャーが「クィーン」流にこだわらず自分らの好きなように作ったらポールのボーカルによく合ったのかよくわからないが、私的には彼らのソロの延長線上にあるような印象を持つこのアルバムは「十分聴くに足る」と思う。
 私は、ポールのボーカルで一番好きなのはフリー時代、それも「落ち着いて」いることを「暗い」と評された曲の数々なので、このアルバム中盤の「Voodoo」から「Through The Night」の当たりが結構好き 。なんだか暗めのメッセージ性も帯びてそうで(英語あんまわからんからようしらんけど)もう完全に「クィーン(ノンポリ)」の印象でない*2、これこそがこのアルバムの価値なのでは?

*1:私はこのことを否定はしない。『クィーン』を作った4人の内生きてる3人が認めてるのだから文句の言い様はないと思う

*2:一連の暗めの曲の次が、アルバムで唯一ポール以外のボーカル(ロジャー)から始まる「Say It`s Not True」で、これも良い。彼らの来日公演を見に行った人はこの曲はすごく印象深いと思う。これもかなり強いメッセージ性を帯びた曲(エイズで死んだネルソン・マンデラの息子に捧げられた曲)なんだよね