『青函連絡船〜栄光の軌跡〜』

 おとうさん、こんなすごいえいが、どこでみれるの? それはね、船の科学館の外に浮いてる羊蹄丸の中でだよ。 うわ〜、いろんな社会奉仕に寄与しているだけじゃなく自前でこんな映画と場所を造れちゃうんだから競艇マネーってスゴイね! そうだよ、同じギャンブルでも儲けた金をどんどん祖国に流して地域にはビタ一文寄与しないパチンコとは大違いだろ。 うん!ぼく大きくなったらギャンブルは公営一本に絞るよ! はは、早く大きくなって国益に適う立派な大人になるんだぞ!

 さて、映画。実は面白い。タイトル通り、青函連絡、本州と北海道とを繋ぐ航路の歴史を、その前史からその終焉までを貴重な資料映像を流しながら2時間、まず、実はかなりの難所である津軽海峡を人・物共にいかに効率よく安全に運ぶかの技術の構築、それぞれの時代の最先端の技術を集めて作られた各種機材、そしてその存在自体が画期的、新造する毎に前代未聞の技術が伴われ、そこにあるというだけで先鋭的な船の姿は正直格好良い。
 と、ここまで観者を高揚させておいて登場する二つの悲惨な歴史的悲劇、一つは言うまでもなく空襲によって全滅の憂き目を見た戦時中の悲劇。「日本が誇る技術の粋が一瞬にして!」憤慨と共に嫌が応にも高まる愛国心。が、その前にしっかりと「戦時体制を支える大動脈」としての側面をこっそりと伝えてあるので、ここで簡単に釣られてしまう人は実生活に置いては気をつけた方がよい。
 もう一つはこれまた言うまでもない「洞爺丸事故」。事故の経過の解説に、事故直前の船内写真、そして事故後の悲惨な様子、「昔のニュースは思いっきり死体写していた」とかいうようなことは置いておいて、その後の海難審判によって確定した「人為的災害」と言う見地に対してやや乗組員を擁護するような視点で語られているのは印象に残る。確かに、「生き残り」の乗組員にとってみれば悔しい限りでしょう。
 そのような当時の証言も含めて、資料と共に貴重(と言うか面白かった)なのが、その実際に連絡船で働く人たちの様子と証言。運航ダイヤの関係上「港には55分間しか留まってない」ため、その55分間で荷下ろし、下船、貨車の引き上げから始まって、人員交代・点検・掃除を完璧にこなし更に行きの客と荷物の乗船を手早く行う様子は手際よすぎて凄すぎる、と言うか「航海4時間・寄港55分」というダイヤのスゴサに尽きる。で、その限られた中で行う「飾り毛布」という無駄の極致のような職人芸が大変粋。昔は余裕無い中にあえて余裕を作ろうとする日本人の遊び心があったんだな、と。
 当然の如く、船長始め船員の仕事ぶりもちゃんと取材。ただ、私的には同様に紹介された普段はあまり脚光を浴びない「タグボート」の方の仕事ぶりの渋さに惹かれた。
 そんなこんなで、青函連絡船の光と影を余すところ無く紹介して見せた後、遂に連絡船はその使命を終える最後の航海へと向かう。もう、連絡船に関してモノ・ヒトありとあらゆる関わりを見せられた挙げ句にこの悲しい別れ、たぶん幼い子供を連れた親子ならもう大感動してでろでろ涙なんか流すんだろうけど、ここにいるのは純真な親子連れと言うよりはどちらかと言うと英才教育を施そうとする親子連れの方が多い気がするので、素直にこの映画に感動することが出来ない事が残念だ、私含めたスレた大人へ。