『プラン9・フロム・アウタースペース』

 「これから話すのは、将来起こる出来事です・・・・あの運命の日に何が起こったか」。アメリカ・ハリウッド、連れ添った妻が死に、悲しみに暮れる老人が玄関を出るなりいきなり車に轢かれて死んでしまったその頃、上空を飛ぶ(操縦桿がダンボールで作ったみたいな)旅客機のコクピットから謎の(どう見ても帽子型なのだが目撃者のパイロット言うところの)葉巻型未確認飛行物体が目撃されて後、その近くの墓場では奇妙な殺人事件が相次いでいた。そんな最中、地上でも頻繁に目撃されるようになった未確認飛行物体に対し、軍は攻撃・迎撃を命ずる。一方的な攻撃を受けながら反撃も行わず立ち去っていく飛行物体の目的について計りかねる中、政府は飛行物体からのメッセージらしき物を傍受、(世界中に置かれているはずだというありとあらゆる言語を解読するという)「言語コンピューター」で解読したところ、それは宇宙人から「地球人の愚考によって宇宙が危機に瀕していること」警告と「その危機を知らせるため友好的に交渉したい」との要望を伝えるメッセージであることが明らかに。一方、度重なるメッセージにも関わらずその存在さえ認めようとしない地球人に対し、宇宙人側は遂に強硬手段「第9計画(プラン9)」の実行を決断する。「第9計画」とは死体を特殊なデンパによって操り、生きている地球人を恐れさせ、メッセージに気付かせようとするモノだった。
 一部ご指摘ありますように、病み真っ直中のオールナイト、命がけで観に行く映画か? 確かにその通りです。ただやっぱり、もし映画館の中で死ぬと将来起こる出来事が決められていて、あの運命の日にその作品を選ぶことが出来るのなら、選ぶのはこの映画なのではないのでしょうか? その伝説に一役買える、という意味でも。
 さて、かくも魅力的な「映画」というヤツ。観る度に何らか得るモノがあるモノで、さすがにこの映画と言えどもその御多分には漏れない。今回スクリーンで観たのは初めてなので、それだけで新しい発見。まず、お約束のツッコミ所がより鮮明に解りやすくて嬉しい。嬉しい反面、その画面分観る方はそのツッコミ所に大声で爆笑したいトコロであるが、やはり周囲が静かに観ていると遠慮せざるを得ないのが少し。こんなクソ映画、徹夜する勢いで観に来てるヤツらなんてこの映画と同じくらい大バカ野郎に決まってるんだから多少は壊れても良いのでは。ならば私も、冷静になってこの映画の主人公(たぶんあのパイロット)について考えたけど、あまりに役柄がつまらなすぎる*1ので、インパクトとガタイの一番デカイトー・ジョンソンばっか気になる。ゾンビ後のアノ表情かっけー。途中から這い出た(下半身が詰まってるけど)直後からしばらく肩に土が付いたままの演出(?)なんて、他がアレなもんだから凄く良くできてると錯覚させてしまうとこなんてさすがだ(ホントに偶然かも知れないけど)。けど、操れなくなる可能性のある殺人鬼を「皇帝」の前に連れてくる宇宙人に説教される地球人ってどうなのよ? 
 宇宙人の説教といえば、史上空前のトンデモ兵器「太陽爆弾」について今更ここでツッコミを入れる必要はないと思うがその構造の大誤解の元になってる「水素爆弾」について、更に別の大誤解論理を言いたれ「水の爆弾」と説明してくれた高校時代の友人がこの間電話したら日本一の企業の関連会社で働いていて嫁さんも子供もいて安心したのは大きなお世話だろうと思うけど私的には良い思い出です。
 自身得意なホラーというジャンルの中に宇宙人ゾンビという新旧的異なる概念の恐怖を融合、更に愚かな*2人間の行いに警鐘を鳴らすことで思想的な背景を持たそうとした、確かにエド・ウッドが「最高傑作」と自身で賞賛するに足りる「片鱗」はある。が、肝心の映画としての造りとなると、っていう映画でしかないと言えばそれまでなんですが、観る方としてはやっぱり観る度にどこか新たな発見をしてあげるのがこの映画に対する最大限の賞賛なんですね、きっと。

*1:アノ操縦桿の前で冷静に演技してるという点では面白いけど

*2:とは言っても「人間の知能の素晴らしさ」は宇宙人を通して素直に讃えている