『宇宙人東京に現わる』

 磯部教授率いる天文台はある奇妙な事柄を観察する。星とも隕石とも異なる謎の発光物体がこのところ頻繁に現れるのだ。物体の正体を計りかね、その発表を躊躇する内、日本国内のあちこちで奇妙な現象が起こる。ヒトデ型の謎の生物が数多く目撃されるようになったのだ。謎の物体と生物、その関連は容易に疑われるモノの、未だに公式な発表はない。一方、ヒトデ型の生物たち・・・彼らは宇宙の遙か彼方パイラ星から来た高度な科学力を持つ知的生命体で、無軌道に原爆・水爆実験を繰り返す事で、また遠くから接近する天体との衝突の危機によって滅亡に瀕する地球へ向けて警告を伝えに来たのであった。何度もコンタクトを試みようにもその姿を警戒されうまくいかない彼らは作戦を変更する。地球人と同様の姿に変身して地球人の中に潜り込んでメッセージを伝えることに。
 圧巻は「パイラ星人の会合」。パイラ星人自体は実は結構可愛いくて、これが地球人とコンタクトを取るために池の中とか港湾の中から*1とかアイドルが歌い踊ってるステージを覗き込んだりとか涙ぐましい努力、結果うまくいかずに上記の「会合=作戦会議」。「ウボボボボボ」「オボボボボボ」とか言ううなり声に字幕が付いて、14、5人(?)のヒトデ型生物*2が一生懸命地球人とコンタクトを取ろうと作戦を立てる姿は微笑ましい。で、あらすじに述べたように何人かが地球人に変身して潜入するんだけど、以降、出てくるパイラ人は皆「地球人に変身」した形になるため、ヒトデ型パイラ人は出てこない。面倒くさくなったこと容易に想像、以降、楽しみ半減して物語への興味が急速に失せる。因みに、宣伝ポスターにあるビルに並ぶほど巨大なパイラ人はいない。現物(?)はもっとちっちゃくて可愛い。
 物語の背景は、『プラン9・フロム・アウタースペース*3』と似ている。同時代の映画なので、このころの時代背景はこんな感じだったと言えばそれまでだが、人類の英知を信じつつもその底知れぬ可能性に怯えその審判を全く外部の存在(のお節介)に委ねると言う構図は、当時普遍的な考えだったのだろうか? 野放図に繰り広げられる核開発、その改善に何ら根拠のない外部の存在に自身の命運を委ねる、とんでもなく恐ろしい世の中だ。その中で、当然の如く敗戦の記憶生々しい当時における「唯一の被爆国」「非核国」としての日本の矜持を盾にいかに国際的貢献を成し遂げていくか、その気概を強く感じさせる(一方でお気楽平和ボケの片鱗とも言える)造りに、却って新鮮さを感じる。これを観た子供達は将来に対してどのような思いを持ったでしょうかね? となると、似たような背景を持つ『プラン9〜』と比較せずにはいられない。少なくとも平和裏に交渉の余地の残す宇宙人達に対し、銃で脅しぶん殴って宇宙船内の機器をぶち壊して*4火を付けて追い返すことは「アメリカ的」と解釈して良いのだろうか? *5

*1:とは言っても、水の中からなんか出てきたら普通驚くぞ

*2:それぞれちゃんと体型差がある。ノッポなヤツとかおチビさんとか。けどヒトデのスーツがぬいぐるみではなくただヒトデ型のゴミ袋を被せただけといった感じなので中で大の字に手足を広げているアクターのシルエットがわかる。

*3:当然予算とか物語としての整合性とかは別として

*4:「あのチャッチさは宇宙船の機器と言えるような代物でない」とか言うツッコミはここでは置いておいて

*5:記事書いて気付いたけど「パイラ星人」キーワードがある。はてなバカすぎ。