『喜劇 女は度胸』

 自動車修理工の学(河原崎建三)は、仲間に連れられて遊びに行った横浜の町中で工場で働く少女、愛子(倍賞美津子)と出会う。二人は惹かれ会い、学は彼女と結婚を考えるように。ところで学の生家、金が入れば女遊びにうつつを抜かす兄でダンプ運転手の勉吉(渥美清)にマトモに仕事もせずソリの合わない勉吉と会えばケンカばかりしている父親・泰三(花沢徳衛)、それを黙って見ている母親・ツネ(清川虹子)と騒動の耐えない家に学はいつか出ていこうと心に思っているがなかなか実行に移せない。ある日、その兄が聞き覚えのあるゲーテの詩の文言でもって学に説教をたれる。兄の手に握られているのは嘗て愛子に贈ったのと同じゲーテの詩集。聞けば、お気に入りのコールガールから借りたとのこと、勉吉の言によるとそのコールガールは普段は女工をやっていて、その勤め先とは愛子の勤め先と同じだった。疑いを深めた学は愛子に詩集の行方を問いただすが要領を得ない。疑心暗鬼となった学はつい声を荒げ、愛子は愛想を尽かし飛び出す。自身の疑念を晴らすためいつもの女を買いに行く兄に付いて置屋へ行くことに。
 渥美清花沢徳衛がはじめっからなにがしかで揉めていて騒がしい桃山家で、存在感あるモノの黙ったまま、初セリフが(自身が思い描く「家庭」とほど遠い桃山家の喧噪に対しノイローゼ気味に「僕はどうすればいいの?」と呟く河原崎建三に対し)「寝な!」の一言のみの清川虹子、「なんかやってくれるな?」の予想通り彼女が最後ばっちり締める、ためにあちこち伏線とドタバタ喜劇が配置されたような流れ。ダンプの上でラブシーンを見せたり、「兄弟が兄弟になってもおかしか無いが、親父と兄弟になるなんて聞いたこと無い」とかセリフがもろに下ネタだらけの渥美清に新鮮さを感じたけど*1、本作での男共、基本的にダメ役、同じダメでもまた違った味で渥美清と衝突ばかりしている花沢徳衛も負けずに面白く、渥美清ばかりが突出して目立ってない。一方、タイトル通り真の主役の女共、特に清川虹子の「活躍」たるや、実質的に活躍し出すのが終盤になってからにも関わらず突出している。この話の流れの持って行き方は強引とも思えるけどあんま違和感無かった(ちゃぶ台の上で包みを解いたコロッケが良かった?) で、最後に納まる三者三様元の鞘、観てる方として見てて一番ほっとしたのが清川・花沢のカップルだったというのは、倍賞美津子を差し置いて、それはないんでない?

*1:「寅さん」のイメージからするとね