『イノセンス』

 あの事件から数年・・・。失った相棒の草薙素子の面影を胸に、バトーは今は新しい相棒のトグサと組み、所属する公安九課の取り扱う特殊な事件に文字通り機械の如く取り組んでいた。ある日、愛玩用に造られた少女型のロボットが持ち主を惨殺するという事件が起こる。同じような事件が相次いだことにテロの臭いを感じ捜査は公安九課の手に委ねられる。ところが捜査が進む内、全く予期しない出来事が妨害となってバトーとトグサを襲う。まずは「ヤマ」を後から来た公安に取られる事への現場の不満、ロボット達を造る人々の理解し難い思い、そして正体不明の相手によるバトー自身へのハッキング。家庭を仕事に取り組む糧とする「生身の」トグサに対し、本来「推奨されない」家族・・・飼い犬の存在を自身の糧としたのは、忘れられない彼女の面影を捨てるため? 自身が一番理解しているだけに、苦しい捜査の最中に心に浮かぶのは嘗ての相棒の事ばかり。
 難解。押井監督の売りと言えばそれまでなんだろうけど、眠気と戦いながらの鑑賞は正直キツかった。ので機会があればリベンジ。勿論スクリーンで。
 何故わざわざスクリーンでというと、やはり詳緻・緻密に描かれた「近未来を予想(予言?)して描かれているが、明らかに我々が現在住む世界とは違った世界の延長上にある世界」を鑑賞するため。うわぁ〜この世界ではみんな光ってるなぁ。
 光っているといえば人形。最初(映画冒頭のスタッフロール)からばんばん製造される「球体間接人形」。おお凄いぞ、ハンス・ベルメール。全ての「アノ」人形の原型はハンス・ベルメールに帰す、ならばその目的を的確にする必要があるの? それにしても人形製造を追う過程で登場した「白衣で白髪で初老の女研究者」の全く母性を感じさせない形から醸し出す「生命を生み出さない」にもかかわらず「母性」と形容したい形が面白かった。シミのない白衣のせいか、彼女も光っているように見える。そう言えば前作で黒幕「人形使い」の「人の姿をしている」シーンの「人形遣い」は(今作を観た後だからかも知れないけど)「人形遣い」らしくないのが不満*1
 さてさて人形の話題は続く。正直、この作品でのキーワード「あの人形」は美しくない。初登場時の振り袖姿が、購入者の趣味によるカスタマイズかどうかはよく解らないが、以後、登場する「彼女ら」は全て服を着ない。この作品の宣伝ポスターで表現されているのは、巧緻に彩色された首のもげた文楽人形、正直この謎めいたポスターの煽りに乗ってしまった感は否めないが、実際はこんなに「美しくない」。なぜなら、作中の人形達は殆ど服を着ていないから。最後のシーンにおいても醜いこいつらがガンガン降ってきてバトーを襲う。で、突如現れたバトー最愛の素子の依代も醜い幼女体型のこれなのが、これまた大変な悪趣味だと思うのは気のせいか? 全然関係ないが、「ネット世界に潜んで管理者に」との草薙素子のポジションて2ちゃんのひろゆきみたいなもんか?一瞬思った私はバカなのだろうか? 眠かったことにしておこう。 

*1:針金で縛られたウニカの如く醜ければ良かった