その百三 日進市岩藤町 『五色山 大安寺』

 (注、去年の秋のお話です)

 所謂日本で唯一の宗教公園、『五色園』です。目玉は言わずと知れた浅野祥雲師作のコンクリート製人形。宗祖である親鸞上人の人生や教導の足跡を一度見たら忘れないインパクト大の像でもって表現しております。

 彼の居場所はここ↓ 親鸞幼少時のエピソードとのこと。コンクリ土台に直で座るのは冷たそうです

 初めから仕込みはありません。浅野祥雲による真っ向勝負、このような像たちが起伏に富んだ園内に点在、同時に解説を述べるのが基本。

  恐ろしい顔で走ってくるのは法然上人の高弟蓮生房こと熊谷直実の出家後の姿です。安定の悪い一本足を支える工夫に感心させられます。彼が向かうのは

 やはり怖い顔の坊主の集団。顔が怖いのは法然に論難されている最中だからです。

 こんな風に公園を歩いていると

 不意に山道の向こうに登場する像。
 
 こちらは親鸞の夢の中に現れて求道のための宝物を授ける仏の使者です。「宝物」は「黄金」です。「黄金」を手に持っております。手に持つのは「黄金」です。何度も繰り返す言葉でもないですがこの言葉は日本語有数の便利な言葉かも知れませんね。特に深い意味はありません。

 偉大なる親鸞上人の修行道、見守る仏その他諸々の御加護は山中だけで起こるわけではありません。

 池の畔にて、その池に住まう水神との一コマ。

 水神さんは龍に化身しているとのこと。二者を並立させてその表現をすると共に、水神の足下、「水面を割って出てくる」という有様をコンクリートで表現する、

コンクリート造型なら並ぶ者ナシ、祥雲の真骨頂とも言えるの質感の表現に酔いそうになる。
 池を離れてまた山道を歩いていると、なんか見えますね。


 田植えでした。

 山側の像は周囲の木が防護壁の代わりを果たしているせいか彩色はあまり衰えず、これも祥雲の特徴である何やら含みのありそうな表情を楽しむことが出来ます。

 こちらは公園で一番奥まったエリアにある、配流された親鸞が地元の僧達の請われるままに教え諭している場面ですが

 どうも、先程まで早朝の名古屋駅をウロウロしていたせいか、西柳公園(→http://d.hatena.ne.jp/sans-tetes/20081202#p2)とダブって仕方ありません。

 再び水辺に戻って、池の上に佇む、たぶん弁天さん

 お皺が気になります。気になると言えばお膝に抱かれた周囲と断絶しているせいで切り取られたような龍の頭

 もひとつ、お膝に置かれた恐らく琵琶。鈍い色彩で質感がなんだか物騒。横溝正史の『女王蜂』で登場する月琴を連想します。市川崑版での大道寺銀造役・仲代達矢が「お前には琴絵を幸せに出来ない!」と振り下ろしたアレです。
 
 おや、あのばあさまは・・・
 
 息子に邪険にされた上人一行を渡しまで追って信仰を表しているところです。上人も感動です

 けど隣は遊園地です。こんな。

 一息ついて、親鸞を少し離れまして、

 敷き詰められた落ち葉の向こうは

 不動明王童子。園内の像で一番鮮やかに彩色が残っています。ほぼ原色のみの明王像。コンクリには原色が一番。

 上人の足跡に戻ります。

 手前と奥とは全く異なるエピソードを扱ったモノなのですが、それぞれの配置がこうしてニアミスする事も多く、これはこれで一つの味となっています。
 
 ちなみにこいつらは迫害される上人を匿う信者宅に殴り込みをかけてきた坊主共です「わりゃぁ! 大人しゅう出てこんかい! このボケが!!」

 「あれ、お許しになって!」

 「じゃかしゃ! このくたばり損ないが! 覚悟しぃや!」

 の、向こうが殴り込みです。

 造ってる内に祥雲さん、疲れて心もささくれ立ってしまったのでしょうか? 現代にも通じるギスギス感です。まるで今いる職場のようで却って心和みます。大丈夫?

 一息付きますか。せっかくなので中京ブランドの「チェリオ」で。
 
 霊園内に立っていても間違っても墓石には見えません。

 さて、一連の祥雲作品、いよいよ最後にして一番の大作は、「密かに信者の嫁が主人の留守に招き入れたモノの、主人が帰ってきて叩き出されて庭に寝る」上人です。こう書くと誤解を招きますね。

 上人の雨露を避けるため覆う笠、その奥の屋敷、全てコンクリート

 しっかり遠近法を考慮して造られた屋敷。
ただし奥様が常に灯火で庭を照らしているせいで掃除が行き届かず、ゴミとか落ち葉とか秋の夜露に力つきた虫の死骸とかでいっぱいです。
  
 ここから先は立派な本堂に庫裏。檻にクジャク、台所前にネコの放し飼いとちょっとした動物園。クジャクは生意気そうで親子連れのネコにカメラを構えると親ネコは仔猫を置いてさっさと逃げてきます。



 もうおなかいっぱいなので帰ろうか、千社札はイイかな、と思いましたが孔雀の檻の向かいに「千手堂予定地」と書かれた看板の掲げられたお堂、建立のための寄付を募っている様子だけど寄付が集まらないのか全然落成の予定が立たなそうな様子。実際には鍬と箒とか立てかけてあって名実共に倉庫状態なのが大変気に入ったので、そこに奉納。いつになるかわからない将来、今千社札を奉納したコトによる御利益がありますように。それにしても五色園、僅かばかりでも入園料とってもイイとは思うのだけど。あ、そしたら気軽に入れなくなる。ならこうしましょう。心に感じた分だけ寄付していく。寄付なら宗教法人無税で完璧だ。 おわり。