ぬりつぶし

 先日色々あってどうにか江戸三刑場に行くことは出来たモノの、同時期に多摩方面全域の仕置きを担っていて説によっては板橋に代わって三刑場の一つに数えられることもある大和田刑場が抜けているのがどうも気になって、仕方がないので行ってきました。
 ここは享保年間に隕石が落下した場所で、危うく江戸が壊滅するところを当時の天文学者西川如見の正確な観測と将軍徳川吉宗の適切な対処によって悪人以外一人の死者も出すことの無かったという曰くです。その出来事の概要についてはコチラ→http://d.hatena.ne.jp/sans-tetes/20090217
 そのせいか刑場跡とおぼしき場所には何の痕跡もなく立派なマンションが建っていましたとさ。おわり

 とするにはもったいない何かがあったので今しばらくのお付き合いを。
 現在、大和田刑場跡には祈念碑・供養碑等何も痕跡が残っていないこと、場所については「八王子市大和田町」「甲州街道沿い」「浅川沿い」「大和田大橋袂」「跡地にマンションが建っている」との断片的な情報はwebで拾うことが出来たためあまり期待はせず大体の場所に当たりを付ける。そのため以下は全く場違いの場所についてのレポートになっている可能性もあるので悪しからず。
 その他拾った情報は「昔は跡地に碑が建っていたがマンション建設の際に撤去された」「以来でる」「工事中とかヤバかった」等もはや噂の域を出ないので鵜呑みには出来ないが、現場に着くとはっきり言って凄くイヤだった。別に、太古の昔から数えれば自分の住んでる土地の下に人の一人や二人埋められたことがあってもおかしくはないと思うので、別にその噂自体には殆どイヤな印象は受けないのだが、大体霊感ないし、では何がイヤだったと言うとその「恐らく」の場所に立つマンションの一角にある環状列石のようなオブジェ?がどう見ても墓石のそれに似た印象を持たせるのが、それもそのオブジェそのものがイヤだったのではなくこの場所にあえてこのオブジェを置いたデザイナーの意識〜何ら意識することなく置いたとしても、或いは何らかの意識を持って置いたとしたならその意識の裏付けをどこにも記さないでそれを配置した意識〜がひどくイヤに感じた。川を挟んで向こう側の河原には人が降りることが出来るのにこちら側の河原には降りることが出来ない。そのせいかまだ梅雨だというのに草ぼうぼうに生い茂った一角、手入れのされず枝葉もほったらかしの木々がそのままに生えていた。
 マンションの川側でない方からその全容を確認しようとすると東側に当たるためこちら側はもう夜の気配。その中を歩いているうちに一瞬だけなんだか知らない物凄いぞわぞわ感を感じる。霊感無いのに・・・。

仕方がないのでまだ日の当たってる西側から離れて全容を確かめることに、それには浅川にかかる一番近くの橋、大和田大橋から望むのが一番よい。この橋に戦時中に受けた機銃掃射の跡を修復せずそのままに保存しているとのこと。案内板が解りにくかったのともうそこまで夜の闇が迫っていたのとで国道駅のモノのように石の表面に穿たれた弾痕は確認することが出来なかった。橋から刑場と思しき方向にカメラを向けていると通りがかりの人々は梅雨の雲間に傾きかける夕日を撮そうとしているのだと思った様子、同じように携帯のカメラを構えて行く人も。橋の東側はもう陽が届かぬ夜の時間、いつの間にかこの橋が昼と夜の境になっていたようなので件のマンションの前に置いたバイクに戻る。
そこでは件のオブジェの脇からマンション上部に向かって照明を照らしていた。本格的に夜が来る前に帰ることにしましたとさ。おしまい