その百十七 結城市結城『毘沙門堂』


 特に思い立ったワケではありませんが茨城県結城市に来ました。確か、何か他の目的があってもっと遠くの別の場所に行こうとして途中小休止のつもりで気付いたらそのまま一日居座っていました。他の目的が何だったかは忘れました。
 結城紬の産地で知られた市内はかつて城下町でもあり近世の街並み、近代の街並みが所々折衷、そのおかげか街中には寺社多く残りそぞろ歩けば色々参拝したくなり困る。そんな選り取り見取りの中まず敷居を跨いだのは街道沿い、結城の市街に入って初めて出会ったお堂。山門が深い印象。
 「毘沙門堂」の名の通り中に毘沙門天の像を奉っているのであろう堂内、薄暗く殆ど視認出来ず。像の前を厨子が覆っているわけではなくお堂の扉の窓が煤けているため。つまり、お堂の手入れはそんなに頻繁にされていない。周囲を見ると隣の公民館はボロボロ、お堂には釘で落書き、賽銭箱には針金が放り込んであり、山門近く寺域に当たる部分にお派手な車が数台駐車。「手入れがされていない」、と言うよりは「周辺の民度が低い」と言った方が正しいのかどうもかなりDQN度が高い様子。そう言えば門前に接する街道を爆音・大音響のクルマが何度か走っていく。
 それはともあれ、境内から山門を見ると、山門の目の前でカーブを描き市街地の方へ向かっていく街道が丁度参道のように見え、門を通して市街地方面への見通しは大変良い。山門の周囲を塀等が囲うワケでもないのでなんだか山門だけが境内を離れて独立して建っているように感じる。たぶんこの山門のこの有り様に引っかかって参拝することになったのだが、その印象的な山門と比べると本堂は随分と控えめで目立たない。両者の対比のおかげで寺全体として際立った印象。このギャップは楽しいが、この目立たなさがDQNにつけ込まれるスキとなる感も否めない。そう考えると目立たないのも考え物です。