「Newsletter China presents『民主党を論じる』」於ロフトプラスワン

 おなじみ青木直人氏による講演。イベントがあったのは一週間前なのですが、保守系の講演・デモ参加に際して思うことあり、一部の概要を簡単に紹介。それに関連して思うこと。

 主に経済的な視点で今回の政権交代を分析されてました。まずは民主党の源流とその本質について。それは自民党田中派の系譜を引き、その領袖、田中角栄が最も可愛がった子分である小沢一郎によって生み出され、伝来の「親中」という方針だけでなく、角栄健在の頃彼が頑なに信じた「アメリカの謀略による失脚」と言う怨念をも抱えることで対外政策の柱となっているとのこと。
 そして今回民主党が政権獲得となった背景について、まず第一にそれは日本の経済界の総意であったからとのこと。すなわち今や日本経済にとって切り離すことが出来ない中国という市場との間でこれからも円滑な交易を進めるため、「中国側を刺激しない」事が確実に約束できる政権が必要であったということ。では「中国側を刺激しない」ということはどういうことか? 昨年の経済危機以降、中国で進められる内需拡大・成長政策は全く政府によるテコ入れを頼みにした民に依らない、官主導の全くの実体を伴わないモノであるとのこと。その官主導にしても、それだけの必要な資金を用意できるだけの余力はなく、結局海外からの援助、すなわち日本のカネを当てにしての事であり、中国そのものを好むと好まざると中国経済の沈没を好まない日本の政・官・民は中国からのカネの無心の言いなりにならざるを得ない。その中で両者共に一番恐れるのは両国民衆のナショナリズムの喚起によって再び両国関係が悪化すること。特に中国においては始めは日本に対する反発・抗議であったとしても潜在的に中国民衆が抱える政府への不満からそれがいつでも反政府運動に転嫁してもおかしくない状況であり、その一番の引き金となりかねない日本政府首脳の靖国参拝は阻止しなければならない。これこそが小泉以降の保守系の総理が登場しても靖国参拝を自粛せざるを得なかった真の理由であり、そして上記のような「怨念」を抱える民主党政権は日本の経済界にとって、そして中国の国益にとってこの上ない打ってつけの政権が民主党政権だったとのこと。もう一つ、自民凋落・民主躍進の原因として伝統的に自民党を支え続けた支持母体の利益を徐々に減らす政策を自民党が取り続け、遂に小泉改革による大打撃と自らの足元を破壊しながらそれに代わる支持層の構築を怠ったため、従来からの支持を得ることができなかったばかりか、それら自民から離れた票をコツコツと掻き集め民主党の票とした小沢一郎の手腕に破れたとのこと。そして、そのように「望まれた政権」である一方、「保守」としての旗を揚げることも、党を立て直すリーダー、或いは政敵を陥れる策士、そのいずれも人材を欠く今の自民党は長期の混乱を余儀なくされ、民主党による国勢の混乱を後目に政権を取ることは出来ず、このまま民主党は長期に政権にあり、混乱は続くと予想する。
 青木直人氏は右・左の対決という冷戦構造そのままの観点でのみ今回の政権交代を語るのは本質を見誤るだけと断じ、さらに、いたずらに感情論のみで中国・両朝鮮を攻撃する一部保守・右翼の姿勢を非難する。この点、今回の保守主催の講演に参加して感じた違和感に確かに重なる。
 と、このように「思想を越える実利」の点を重視して今回の政権交代劇を分析する青木氏の舌鋒はいつもながら鋭く、感心し、勉強になる。ただしこれも青木氏の講演でいつも気になってしまうことなのだが、青木氏は自身の分析、予想以上の言葉を語ることは殆ど無く、「ならばどうしたらよい?」といった点に触れることは殆ど無い。これはある意味彼が生粋のジャーナリストである証拠なのかもしれない。それに、私もそのことにたいして期待はしていない。「何をするか?」は我々一人一人が決めること、そのヒントとなるべく「情報」を提示する青木氏の活動は、もはやジャーナリストとは言えない大手マスメディアの伝える「報道」に晒されている現在、それだけで大変貴重なモノだからである。

 とは言っても、その中共と我が国の経済界を結ぶ強固なカラクリの存在を前に、志ある人達が何をしたらよいのか、大変難しい問題であることも確かだ。「民主的な」選挙による意思表示ができない以上、かつてアメリカのベトナム政策ととそれに結託する日本を非難しながら遂には同士達の命を奪うことになった彼らの「純粋」をなぞることになりかねないのでは? などと言っている間に、中共の謀略に踊らされる「友愛」は我らの脚を食い潰していく気がする。