廃線探索・・・飯田線平岡〜鶯巣間旧線(平岡駅→大嵐・金比羅隧道→戸面沢橋梁)
かつて日本有数の「暴れ川」として名を知られ、「竜」の字にその名残を残す天竜川。その天竜川にお付き合いしてグネグネと曲がりくねりながら行きつ帰りつしている飯田線。治水関連やダム建設、川そのものの改良や沿線の改良、それらに伴いその時々姿を変える川に会わせてその縁にへばり付くように走る飯田線もそれに合わせて何度かルートを変えてきました。有名な所では佐久間ダムの建設に応じてダム湖に沈んでしまう佐久間大嵐間が有名で、湖底に沈むことを免れた部分が大嵐駅前から現在線の脇を抜けてトンネルを潜って行く県道1号線は、自動車道路としても現在廃道となり、所謂「険道」としてそちらのジャンルでも有名ですが、今回訪問するのは60年の歴史を誇る飯田線の中でも最も最近(昭和50年代)に土砂崩れの起きやすい弱い地盤を避けて藤沢トンネル経由のルートに改めた際に廃線となった側の旧線です。色々調べてみると元々駅間の短い飯田線の特徴と併行している自動車道路から直接アクセス出来るという特徴を持つため、進入するのはそんなに困難ではないということです。この区間、現在でも一応の管理者はJR東海ということになっているようですが、事実上放置しているに近い状態のため、またその路線付け替えの元々の原因であった落石・土砂崩れも多いということで決して安全というワケではありませんので、もしもこの記事を見て自分も行ってみようというどっかのバカはあくまでも自己責任の上でそのバカを行うようにして下さい。
さて、前日はこの探索の目的のため平岡駅付属の「ふれあいステーション龍泉閣」にて宿を取ったため、恐らくこの場所にアクセスするために最も有利な場所からスタートことができました。
平岡駅周辺はこの駅がちょっとした雑貨屋として機能していたり、また天竜村役場から近いこともあり駅前は近辺の飯田線沿線駅とは比べものにならない程開け、お店も多く、時々ネコまでいます。
写真はイヌですが。
駅前通を少し歩くと民家や商店の間から川の向こうに巨大な構造物があるのが見えます。あれが平岡発電所。この場所は周囲の集落でも大分高い所にあり、また目の前の天竜川の対岸の先ですしここから大分先にある施設のはずですが、かなりはっきりと見えます。やはり巨大なのですね。
これは現在使用されている飯田線の鉄橋。現行線はこの先藤沢トンネルに入り再び外に出るのは鶯巣駅手前の第一北沢橋梁の直前でです。旧線はこの頭上の橋梁の先で少し天竜川側のトンネル、金比羅隧道を通るルート。
ここら辺に、周囲には人家はありません。天竜川に沿って平岡側を望むとこんな感じで市街地が広がります。山の上から谷底へ段々と形作っていく姿は見事です。
人家のない場所ではこういう事にも気をつけなければいけません。全ては自己責任です。
間もなく前方の斜面にトーチカのような穴が登場。案外簡単に登場しました、これが飯田線旧線、大崩隧道の一部。手前の道路が国道418号線。
隧道の向かいに、もっと近くなった平岡水力発電所の全貌が見えます。写真では微妙ですが発電所のすぐ隣になんか神社があるようで、訪問できないのが残念。
「トーチカ」正面及び横から。トーチカですね、どう見ても。
当たり前ですが侵入防止の柵で入ることは出来ません。柵の向こうから隧道を覗くとなんとレール。一応言っておきますがこちらは紛う方なき廃線です。
隧道内。実際現地行けば判ることですし、さすがにWebではっきり書くのもアレなので方法は端折りますが、ともかく進入した隧道、レールがまだ残り今にも列車が来そうな雰囲気。
ただ、このように線路の脇に朽ちた枕木の一部が散乱していたりとここがしっかりと廃線跡であることを物語ります。
隧道の窓から、発電所。
大崩隧道より平岡駅側、先程の窓のある区間から先すぐに光が届かなくなるため、装備しているレンズでは見ての通り、様子を得ることは出来なくなります。視界も本格的に真っ暗に、懐中電灯は必須。暗闇で撮影した写真でも手を入れれば多少は中の様子は判るとは思いますが、面倒くさいし変なモンが写ってたりしたら嫌だし別に調査が目的でないしそのままの方が却って様子が判りそうなので敢えてそのまにしておきます。
確か、大崩隧道はすぐに終わって次はお隣の金比羅隧道に突入するはずなのですが、隧道はなかなか終わらず、そのまま闇は続く。天井を見ると現役時の電灯の跡(?)
地面には引き続きレールはそのまま。ただし、路盤の表面はガタガタで歩きにくくなる。ガタガタが高じて現れる窪みは時たま水たまりになっている。
更にしばらく進む。すると外されたレールが脇に積まれていた。
そこから先、遂に地面のレールは取り払われ、そこから先、足元は更に悪く。
原因はどうも天井や側壁の崩落、落石のよう。足元だけでなく頭上にも注意しながら更に先に。ただし、ここまで歩くと既に大崩隧道は脱して金比羅隧道に入っていると考えても良いのでは? 恐らくいつの間にか金比羅隧道に突入していたと思われる。
そして少し先、路盤の真ん中はどういう理由か路盤に沿った溝となっていてそこには水が溜まっている。正直すごくイヤ。
そのまましばらく、溝の両脇で土手と化した路盤の端を歩いて行くと、左側壁の大規模な崩落に行き当たったのを合図に
ここから先は、地面は完全に水没。
路盤の劣化によって溝や水たまりが出来たと思っていたのだが、この場所線路をのけて土を盛って堤防のようにしているらしい。理由は不明。
現在地がどの辺りなのかは判りようがないが、水没はしばらく続いている様子。ここから先の踏破残念ながら断念。
側壁に、かつて配線等を引っかけていた金具の跡。
このように年月を経て水が染みこんだ場所は簡単に崩落の予備軍に
枕木の跡と再び避けた線路の束の横を抜けて
待避場跡。
再び尊い光の登場。
こうして見ると列車の先頭から撮っているような絵ですね。
この区間のこの場面、比較的有名なのですが、実際行ってみると光と影が大変幻想的。
見てお判りの通り、大崩隧道はこの窓の区間を越えるとすぐに出口。
改めて、鶯巣駅側の口から、飯田線旧線、大崩隧道。木に覆われて廃線の雰囲気はたっぷりです。
地面に残るレールも草に埋もれかけています。
この場所を反転してトンネルと反対方向、直ぐに沢を渡る鉄橋。「戸面沢橋梁」と言うそうです。
橋梁のレールは取り払われており枕木だけが残っています。保線用の渡りの部分も取り払われているので、このまま橋を渡るのは危険そうです。残っている枕木を足場に、もしくは端の柵を伝わりながら保線用の板が渡されていたであろうレールを足場に渡ることも考えましたが、どちら状態も良いわけがなく危険と判断して止めておきました。廃線の状態さえ良ければそのまま歩いて鶯巣駅まで行くことも考えていたのですがいきなり挫折です。
仕方がないので進入した場所まで一旦戻ります。
何度見てもうっとりするほど幻想的な空間。
枕木の脇に抜けた犬釘。
骨片が散らばっているような陶器の破片は天井から下げてあった電灯か碍子の一部でしょうか?
とりあえず国道へ下りて、車道から先程の橋の先へアプローチしてみることにしてみます。 つづく。