倉敷市下津井 「下津井亭」

 この日は瀬戸内海上の島、松島に渡って一日中彷徨っていたせいで大変疲れまして、港からすぐ近くにお宿があると云うコトが何より有り難かったのです。

 ほぼ下津井の港に接した場所にあるお宿『下津井亭』は一階がお食事処になっていて、そこそこ年季の入ったお宿です。お宿正面から下津井の湾港を通して瀬戸内に浮かぶ島やその上を跨ぐように瀬戸内を渡す瀬戸大橋を望むことが出来てなかなかの眺望です。下津井の海の方は基本的に何処に立っても眺望はヨイのです。
 チェックインしてフロントの向こうで靴を脱いでスリッパに履き替えて、今回お泊まりのお部屋は「松島」の間ということで、本日探訪場所のお名前が付いてコレは縁起がヨイのか、ヨイのだ。

 毎度侘びしい一人旅にもかかわらず差別されること無くお宿の予約は出来ましたが、お部屋はちゃんとファミリータイプの広さのお部屋を確保。ただし窓の向きは目の前の海とは反対側の山側に向いているため、港、その向こうの瀬戸大橋の姿は見えず。せっかく瀬戸大橋のお膝元で宿を取るのだから、とは言うなかれ。私にとって宿とは基本屋根が付いいればヨイのだ。あとは食事がうまければもうけモノ、その点この宿は下津井名物「タコ」料理が自慢らしくなかなかの評判らしい。景色などイイのだ。山側を向いていれば静かな環境を保てるし、就寝に当たってそれ以上の贅沢はないのだ。
 そう考えながら何気なく、夕日と、湿気を洗う涼しい風を求めて窓際に立つと。

 なんかある! うぎゃ〜なんにゃあこりゃ? こんなサービス頼んでねぇぞ?!

 下津井の中心部に当たる場所にあるこのお宿のその裏手、嘗てこの場所と児島方面とを結んでいた下津井電鉄の終点下津井駅がかつて眼下にでんと存していた模様。こりゃのんびり休んでなんかいられんわ。てなことでカメラを持って階段降りて玄関に向かうと・・・
 「いらっしゃいませ」。お宿のおっちゃんに呼び止められる。そうだった、食事の時間を早めに設定していたのだった・・・。
 事情により食事の写真のし。お宿名物のタコ尽くしです。タコだけでこんだけ多くの料理に出来るんだ、これからはタコに足を向けては寝られんわ〜、タコが食えないネコが気の毒だ〜、と感心しきりに箸進む。蛸飯大盛りで3杯食っておっちゃんに誉められた。この場仕切ってるおっちゃん、凄く気さく。
 満腹になったのはヨイが外はもう日が落ちて散策ドコロではなかった。宿の外、玄関出てすぐライトアップされた瀬戸大橋。残念ながら目的はあなたじゃなくてよ。

 仕方がないので、この日は部屋から眼下に広がる夕陽の下の旧下津井駅跡をお楽しみ下さい誰に言ってんだ?

 一人旅なので朝の「おはよう」は誰に言うことなく、自然窓の外に向かって「おはよう」。昨夜とそのまんまの姿で佇んでいます。さっそく朝の探索といきたいところですが。

 まず朝飯。このヒラメ、昨日の夕飯時から殆ど場所動いてなし。生きてて楽しいのだろうか? とか思いながら海のモノ主体の朝食を楽しんだ後、
 「ご飯3杯も食べたのでちょっと腹ごなしに散歩してきます」。まるでこれからの探索に何か後ろめたさがあるかのように、何かに言い訳するような文言を発してフロントに鍵を預けて出かけます。

 朝の瀬戸大橋。おはよう、といいたいところだが残念ながら今朝もまだ君にはお呼びでないよ。夕方以降にイヤと言うほどノってあげるから覚悟していなさい。

 港に沿って宿の前の通り、すぐにこのバス停のある路地の辺り、往事電車の駅があった頃の佇まいを今でも伝えます。ちなみに現在バスは1日2本。

 駅舎跡を通して旧駅前通り、左側の旧型ポストのあるの並びなんか往事の面影を残しております。下津井電鉄線設置の目的に沿って、下津井港から駅まで直近のアクセスを考慮していること窺えます。港と駅の間の短い駅前通りは鉄道から船へ乗り換えるお客、船から鉄道へ向かうお客、さぞ賑わったことでしょう。

 駅前通の奥に残るナゾの一角、下津井電鉄初代社長の銅像。会社そのものはバス会社として現在も存続しているのでその功績を、とのコトでしょうが駅の痕跡軒並み撤去の方針中、このおっさんの像だけ残っている有様はちょっと奇異に感じます。

 同ポスト、二眼モノクロでそれらしく。

 旧下津井電鉄線跡はこうやって遊歩道として整備、住民観光客に親しんでもらう方針となっているようですが。

 路線廃止後全く用をなすコトのなくなった旧列車群はもはやどうでも良いのか*1ホームの奥、放置同然に保管されている車両群。保管庫(?)がなんか凄くやる気のない変な建物で屋根がないので全ての車両雨っ晒しでやる気の無さが目に見えます。

 左側の車両がバブルん時にやっちまったと有名なアレですね。


 他に貨車の姿も。

 旧下津井駅構内、ホームの辺りまでなら立ち入り自由ですが車両の保管されている旧留置線(?)の辺りは柵が張ってあり立ち入り禁止です。保管と言ってもほとんど放置状態、ヘタしたら朽ちるに任せという状況は本当に見ての通りなのですが、この状態を憂えた地元の有志達が下電に代わって代わりに保守、管理を請け負うボランティア団体を立ち上げていると云うこと。

 駅跡の一角にその活動実績を報告する掲示板。月一で保守の状況を一般公開するイベントも行っている模様。地域の思い出ってこうやってしか維持できなくなるんですね、と言う意味では全ての日本人にとっては他人事でない、その団体名は「下津井みなと電車保存会」と言うそうです

 「猛犬てどこ?」「廃線の保存車両を人がいない間、それはもう物凄い猛犬が守っている光景は退廃的で凄くステキかも・・・」とか言うツッコミはスルーしてこれからもがんばっていただきたいモノです。
 「下津井みなと電車保存会 http://shimoden.fc2web.com/

 一応の管理がなされ猛犬が放たれていると云うことで勝手に敷地に入り車両をとりまくるというのは自粛します。代わりに構内外側からぐるっと一周して別の角度から駅跡とか保存車両とかを撮ってみようと下津井港の街並みを探索しながらぐるっと

 後ろ側に。すると正面(駅側)からは見えない車両がもう一両奥に隠れているのが見えました。軽便鉄道の面影たっぷりの下電各車両の中でも際立っての懐古感は凄いな。*2

 拡大。前面鉄柵の中にビールケース。演会の跡? どーでもいいけど。

 更に向こう側に回るべく港町を散策。道路が広くなく、所々補された漁網。港町のかおり。

 その一角*3で見つけた現役時代のような佇まいの車両

 こちらもちょっと現役みたいに見えなくもない?

 駅先端で路線跡を跨ぐ橋から見た旧下津井駅全景。

 反対側、東下津井・児島方面は完全に遊歩道。

 「とりあえずは整備中」と言うのが現下津井駅跡の状況でしょうか? 「廃線跡に何を求める」かは各人によって異なると思いますので廃線跡探訪としてこの場所がオススメできるかは判りませんが。何よりも肝心なことは当ブログの当記事が元々宿の紹介がテーマであったと云うことで

 下津井漁港で揚がったタコ始めとした海鮮料理だけに飽きたらず眼下の廃線跡探訪と著しく宿泊の目的を逸脱してみたい方は是非どうぞ。裏の下電が目的なら予約の際「部屋は山側」と必ず指定しましょう。

 料理&お宿 「下津井亭」(http://www.shimotuitei.jp/)

*1:何とかしたくてもどこも予算がないというのが本当のところでしょう

*2:ちなみに私、鉄道車両の細かい形式についてほとんど無知、無頓着なので現地に行ってもいないのに細かく知りたいと言う狂った方はWikipediaでも参照にして下さい

*3:人んち越し