その百四十三 川越市古谷上二ッ関 『稲荷神社』


 西武大宮線の廃線後を探しておりました。WEBやモノの本によるとこの路線の直接の痕跡は旧黒須駅近くの水路に残るレンガ製の橋脚のみと云うコトで、せめてその路線筋でも辿ろうと現在道路になっている所をバイクで辿るうち、伊佐沼を過ぎ国道16号線とぶつかりその道筋は完全に見失う。恐らくは完全に国道16号に重なるのだろう。仕方がないのでその先に見えた神社にお参りすることにする。
 国道16号線に背を向けて立つ神社の鳥居正面は一面の田んぼ。かつては集落の外れ、田んぼの畔を通って通うのが正式の参道だった様子。今はまるでメインストリートの如く多く車を通す国道16号がいかに成り上がりモノであるかがヨクわかる。今はお隣にラブホが建って由緒とか成り上がりとかそんなモンはどーでもイイような様子になってる境内敷地、本殿隣の富士講記念の富士塚が小さい塚にあまりに多く講記念碑ぐさぐさ刺さっていて横から見ると剣山のようでちょっとパンキッシュ。富士塚の麓、正面対角からやや離れてお立ちあそばされる神像は牛頭神王でしょうか?
 都市部近郊の神社ですので生憎のこと本殿の扉は固く閉ざされ入る事はできない、代わりに扉に中を覗き込むに充分な窓。ご神体をきっちり守護するのは外に姿の全く見えない狛狐様、なかなか年季の入っているご様子。その対の狛狐さんの間に何やら奉納物が見える。白い皿状の陶器の表面に女性の浮き彫り、髪を後ろに束ね白衣、赤い袴の巫女様の女性が手に緑のモノを持ち、榊を奉納する姿でしょうか? よく見ると巫女さんの頭上、特異な点が一つ二つ、ここはお稲荷様なのでコレはネコ耳ではなくキツネ耳なのだろう、つまりおキツネ様が人に化して奉祭するお姿。奉納者の御趣味でないとするなら、イヤやはり御趣味も幾分加味されているのでしょう。それともこの絵に類するような古い伝説が今はひっそりとメインストリートに背を向けて立つお社にあったというのでしょうか? いずれにせよ、良い御趣味です。