三笠市内、炭鉱の痕跡を求めてウロウロ歩く その1

 北海道内の地域区分では「道央」部に当たる空知地方はかつて炭礦で栄えた地域です。ご存じの通り諸々の事情で国内での炭礦という産業は成り立たなくなってしまい空知地方に点在する炭礦も昭和の終わりから平成の初めにかけて次々と閉山の憂き目に合い残ったのは炭礦に代わる産業の全く育たないまま残された炭鉱街と同じくそこに残された人々という有様でした。人が住み続けていく以上その場所に何らかの産業が無いことには立ちゆかないコトは当然のコトとして空知地方に割拠する各行政は炭礦に代わる産業を模索していきました。その中で「観光」という産業は既存の施設を比較的利用しやすいという意味で割と取りかかりやすい分野のアイディアだったのかもしれません。
 あまりにも安易に考えすぎた結果市規模で大コケし、今ではそのコト自体が観光資源と化している感もある夕張市の例は最早全国レベルで有名なお話ですが、ここ三笠市夕張市のお隣、やはり往事空知を代表する名うての炭礦を市内に抱えその坑口目当てに軒を連ねて人々が集う炭礦で潤った街なのですがその後炭礦の閉山、企業の撤退を受ける中、夕張市と同じように活路の一つとして大々的に観光という手段を選択したのですが、現在大コケしたお隣と比べて三笠市の場合やたら巨大な施設ハコモノを建てるという方法ではなく過去の施設をできるだけそのままに保存・利用しているという経済性から言って至極当然な手段を持って運用*1私的には大変好評価を挙げたい、「惨憺空知6*2」の中では一押しの市です。

 三笠市内の産業遺産見学を計画する場合、見所が大きく分けて3ヶ所に分けることができます。キーワードは、1「幌内線」2「住友幌内炭礦周辺」3「北炭奔別炭礦周辺」。
 1については言うまでもなく旧国鉄幌内線廃線跡で三笠周辺の炭礦より小樽苫小牧方面への石炭積み出しを目的として敷設された路線だけあって三笠市内の主要部をほぼ通過するルートになっており、後に紹介する残りの2・3の場所とも近接となるばかりか密接に関わってますので1+2or3と云った複合技を使うことは十分可能です。ただやはりこの方面に限っては「テツしか興味ないのよ」と云うストイックな方が大勢でしょう。そういった方は完全に幌内線の跡をたどるコトに特化して幌内線分岐点の岩見沢駅から旧三笠駅の支線分岐を経てまずはそのまま東行、終点の幾春別駅から奔別炭鉱方面の貨物支線、余裕があれば幾春別より更に西側山の方に延びる森林鉄道跡を辿って、その後一旦三笠市街まで戻って南へ、旧三笠駅跡はクロフォード公園という施設に、ココには静態保存された往年の機関車等が展示されています。更に幌内線に沿って山の方へ向かうと登場するのは三笠鉄道記念公園。ココでは線路が生きてまして観光列車としてごく短い距離を蒸気機関車牽引の列車に搭乗することができます。そしてもう一つ、なんと定期講習を受けることで蒸気機関車を運転することもできる! 本物をですよ! これは物凄く画期的な企画です。定期的な講習が必要と云うコトで遠方からの訪問者には少々キツく私も今回は諦めましたが、一度講習を受ければ何度でも運転ができて、更に運転経験を積む毎にナゾのランクが上がっていくというマニア心をくすぐる仕掛けもあります。北海道という人工希薄地にあるのが大変残念な一方北海道でないとちょっとムリな企てでもあります。この場所案外札幌都市圏に近い場所にありますし、北のテツ共が大挙して定期的に訪れて盛り上げていただきたいと思います。そもそもこの鉄道公園計画、当初は廃止された幌内線の内三笠-幌内間全ての路線を残して観光路線化する計画だったというのですが途中踏切の管理(最低でも監視員を置かなければいけない)が煩雑で諦めたという経緯があるそうです。現在この区間は「トロッコ列車」として稼働しているようで今後は更なる路線延長を目指しているようです。何だか結構ブイブイ言わせてる感が強いですね。
三笠鉄道村(三笠鉄道村とクロフォード公園とで「三笠鉄道記念公園」を形成)ttp://www.s-304.com/
 「テツモノ」見物で三笠見物をツブしたいのなら一泊くらいは「ライダーハウス旧萱野駅*3へ。以上三笠観光1のコース。

 2については三笠鉄道村にほど近い山の中に点在する旧北炭始め幌内炭鉱の遺跡を巡るコースで、一時は朽ちるに任せていたのを現在一帯を「幌内炭鉱自然公園」として整備することを計画、整備を進めているそうです。かなり早い時期から採掘の始まった炭礦だけあって多くの遺物が山の中にあり、ハイキングを兼ねながら炭鉱遺産巡りができるという愛媛県新居浜の別子山銅山跡の様なモデルを目指しているようです。山登りしながら豊富な豊富な炭鉱遺産を見て歩くだけで半日以上はツブせます。場所的にも「1」との複合技がオススメです。

 以上1、2のコースは「北海道鉄道発祥」「北海道炭鉱発祥」と密接に関わる北海道遺産の関連なので三笠市も非常に力を入れているのが見て取れます。

 一方で私が三笠市内観光に選んだのは「3」のコース。理由は「国道沿いに炭鉱住宅があるらしい」。時間がなかったのですね。WEBを中心に調べてみると「3」の場所については圧倒的に情報が少ないのがわかります。何故かというと現在もそこそこ人が住んでいてそこそこの経済活動を行っている地域なので、観光地とするには少し差し支えがある場所が多いから、そういう事情がありそうです。

 と言うワケで三笠市弥生地区。桂沢湖から流れる川が渓谷を形成、起伏に富んだ地形が続く中、川にほぼ並行してしている国道沿いの限られた平地に居住地が広がります。まず国道からも見えるという旧炭鉱住宅を探すと。

 特徴的な赤い三角屋根の集合住宅。所謂「長屋」ですが一方で「ただの長屋ではない」と云う雰囲気も醸し出しています。地域的に雪下ろしの必要性から特化した鋭い角を持つ屋根が生活のための長屋を生活の為の長屋でない別のモノに見せている気がします。が、勿論そんなモノは気のせいで

 三角屋根の麓に近づいてみると今でも生きてる感に満ち満ちた生活空間。大変好ましい雰囲気ですがヨソ者に言われるのは甚だ心外でしょう「お前に言われんでもわかっとるわ」

 とは言ってもこの不思議な生活空間、カメラで撮りたい・・・ので「個人名が特定されないように」「人が写る際は許可を取るように」「あまり派手に侵入しない」「イヌが吠えたら逃げる」「ネコが居ても追わない」以上5点を注意して撮影に臨むことにしました。

 普通に、人ん家

 最初は北炭のロゴかと思ったのですが違うと気付きました。

お次はサッポロビールかと思いましたがこれも違いました。誰か知りませんでしょうか

 屋根の煙突、形の流行り廃り、

結果として煙突繚乱

 許可取って撮影、生活感。怠け者では北海道に住めない

 この一画の向こう側はずっと荒れ地でした。昔は恐らくこっちの方まで住宅があったのでしょう。ここ弥生地区から東奔別地区にかけて幾つも同様の三角屋根長屋は目に付いたのですがほとんどが戸窓に板を打ち付けていて、まとまって住んで居られるのはこの一画くらいのようです。つづく

*1:事実上放置状態の物件も多々あるので「運用」と云う言葉は間違いかもしれない

*2:http://d.hatena.ne.jp/sans-tetes/20101025#p1

*3:http://d.hatena.ne.jp/sans-tetes/20100911