ふて鎌倉山越えネコ行

 毎度検査が終わると必ずどっか行くことにしているのですが、この日は何処に行こうか決まらず、決まらないままバスが来たので少々不本意の内に横浜駅まで半ば強制的に連れてこられました。このまま小田原の方まで行って根府川駅から小田原駅まで歩いて帰って帰りは小田急ロマンスカーでのんびり帰ろうかとも思っていたのですが横浜駅内に入った途端雨が沢山降り出して著しくテンション低下。でっかく窓際の席を確保したのにそのまま乗り続ける気も起こらず戸塚で横須賀線に乗り換えて鎌倉へ行きました。

 大体からして始終人でごった返している大観光地の鎌倉、きちんと計画を立てていかないと面白く無いどころかひどくいやな気分になってしまうので気をつけなければいけないのですが、この日はもうグダグダのテンションでそこまで考えが至らずとりあえず鎌倉来たら時々行く観光地にあるクセにやたら大量のカレーを出してくれるカレー屋に向かったところ本日休業なり。平日なのに人多い。これはいかんと人の行かなそうなとこ、それはあそこしかないだろうと向かった先は釈迦堂切通*1正しくは「人の行っちゃいけない」場所ですが。いずれにせよ今のささくれだった気持ちを癒すにこれ以上の場所はあるまいと一路釈迦堂切通へ、すると

 ? お約束の、最早みんなが建前にもならないコトを知っている例の通行禁止の看板ではなく本当に様子がおかしい。

 ああ! 本気で立ち入り禁止にしてる! どうも一昨年の暴風雨で切通周囲の崖が土砂崩れを起こしたとのことで完全に近寄れなくなったとのこと。一応土砂崩れ復旧工事の建前は取っていますが何せ「落石注意通行禁止」のまま20年近くほったらかしになっていた当切通ですからこの土砂崩れも本気で直す気なんか無いでしょう。私的に鎌倉内で一、二を争う見所と思っているこの「釈迦堂切通」はこのまま人知れず埋もれていってしまうのでしょうか? こんな悲しいことがありましょうか?

 鎌倉に来てこんなひどい気分になるのは、いくつもある高いカネ払ってまずいメシを出される店に入ればいとも簡単に味わえるモノですがともかく、久々の出来事です。この憤りをどうしてくれようか・・・すぐ近くにある電通の研修所に火でも付けて帰ろうかな? そんな久しぶりに真っ黒な気分になりながら思い出したこと、それはこんな時のために私は癒しの保険とも云える場所をいくつか知っていると云うこと。それはどこというと

 葛西ヶ谷東勝寺跡。ここは鎌倉幕府滅亡の折執権北条一族総勢300人余りが自害した場所です。お隣には鎌倉市が設けた違法駐輪自転車保管場所があります。この無神経さが琴線に触れて黒い気持ちはますますヒートアップします。これからどうしてくれようか・・・。
 熱くなった頭を冷やすべく、東勝寺跡の少し先に得宗北条高時一門が腹を切ったという伝説のある「腹切りやぐら」があります。更にその先はなんか山の中に入って稜線沿いに少し南側の八雲神社裏に至る自称ハイキングコースになっています。学生の頃、やはりやさぐれた気持ちでここを訪れそのまま山を登ってエライ疲れ果ててこの先にある妙本寺の裏にたどり着いた記憶があり、格好としてはとても山登りに向くような格好でも無かったのですが、そのやさぐれた気持ちはおそらくどんな死地にでも身を追いやるに十分なモノだったに違いなく

 途中赤いキノコとか

 ダンジョンの入口(ミッションクリアが済んでないので入れない)

 結構な段差が連続で続く山道等々、いつもの如くと言っちゃあいつもの如くのRPGバリに山道を歩きます。何回も言いますが今回は山道全く想定していない格好に靴におまけに雨降り著久々野ぬかるみだらけだし、ハイキングコースはほとんど使われてないのか廃道みたいな感じになってるし、木々に遮られて回りほとんど見えないし、何よりわけわかんなかったのは「ハイキングコース」ぎりぎりまで迫っている人ん家の屋根。「モノを投げないでください」「ここから先はウチの庭です」みたいなコト書いてある。ハイキングコースぎりぎりまで迫ってくる鎌倉の住宅事情、ワカランでもないがこんなええ加減な環境保護しか出来ない鎌倉は近いうちに上の方から崩壊するような気がする。ちなみにこの山道につながる稜線から先程通り抜けることが出来なかった「釈迦堂切通」の上部につながってると思われるのですが、実際に行くのは難しいと思われ。

 こちらのハイキングコースの終点は八雲神社になっているのですが、初めから行く気はなく途中で妙本寺の裏手に降りる道があったはずです。数十年前はそうやって妙本寺で雨宿りしてこのお寺では雨の時ほど至福の時を過ごすことの出来る、そうです、それだけが全く良いコトの無かった今回鎌倉行の唯一の目的で、木々の切れ目から妙本寺本堂の巨大な屋根が見えておそらく妙本寺へ向かうにはこの道であろう場所を見つけた時、例えその道が明らかに誰も使っていないほぼ廃道化している道だと判っても

 (注)これは大嘘

 その先に向かうのはこの子がいるからです、ご存じ妙本寺のサバトラ。
 
 今まで何度か会いに来て、その度必ずいてくれて過去記事に結構挙げてるこのサバト*2、ちょっと過去記事を覗いてみると、初めて記事に載せたのが2008年のコトだったので、それから数えても最低4年この場所で番してることになる。昔っからじっとしてることの多い、動きの少ない子だったのですが
 
 特に人が毛皮に触るの居やがらないからおさわりし放題、たまに機嫌がよいと誰にでも肩とか膝とかに乗ってきてじっとしたりとネコ初心者のスキル上げるのにも丁度良いネコさんでしたが、今や動くの大分億劫になったかこの場所からほとんど動かず、毛並みも大分くすんで、大分お年をお召しなった様子一目でわかります。

 けど相変わらず人は警戒せず、毛皮にさわるとされるがままにさせていて、時々気持ちよさそうに、そう見えるのは私のただの贔屓目でただ単に面倒くさいだけなのだろうか、目を閉じる。

 今回大分散々な*3鎌倉行、最後の最後の目的地に来て、別に僕のこと待っていてくれたわけではないけどやっぱりここでも一度会えること期して、じっ、と待ってくれたと信じても良いだろうか? 良いかしら? 良いでしょ?
 
 昔からそうだったけどこのネコは鳴くところを見たことない。今回もそう。もっぱら聞き役なのですね、君は。君の役割はお寺の守り? 毎日毎日有り難い読経を耳に入れてのお寺の守り、そして聞き役、君が人間だったら何かを悟っているのかもしれませんね。ネコも悟りの境地に達するのでしょうか? ヒトよりも、過ぎる世の少ない身のネコだけに、その分ヒトより濃厚により多くの御利益を得ている? 

 「みゃあ〜」・・・あ?鳴いた? いいえ、鳴き声聞こえたのは外の方から。そちら見ると黄色の背、白い腹のもっと若そうな元気そうなもっと肥ったのが、なんかこっちを向いてにゃあ。

 こっちの若い方、ヒトを呼んでおいて近寄ると逃げる、離れるので決してさわらせない、で、離れるとまたこっちを向いてにゃあ、で、近寄ると離れる、の繰り返し。好奇心は物凄く旺盛のようでヒトを呼ぶ、庭の草木に転げ回る、なんか音がするとそっちの方へ向かう、

 びびり屋の飼い犬が散歩に連れられると近づいてみる。お寺の守りを任せるに落ち着きのないのが少々頼りないネコさんですが、若いネコがウロウロしている傍ら、老ネコがじっとしている様はヨイものです。

 飼い犬に近づくんだか近づかないんだか微妙な距離を保った後、イヌの方が飼い主に連れられて消えていくと若ネコも何処かへ消えていきました。来る度に、やはり雨のよく似合うとその大きな屋根の下で嘆息するこのお寺で、梅雨の束の間雲晴れて陽の傾きかけて、雨上がりもまた良いモノですとネコに挨拶するとネコ相も変わらず動きもせず。次来る時も必ず会えますよね。

 老ネコと過ごしたちょっとよさげな気分が、観光地の俗っぽさに洗い流されないように*4帰りは江ノ電で帰りました、いやそれって俗じゃね?(おわり)

*1:http://d.hatena.ne.jp/sans-tetes/20090925

*2:http://d.hatena.ne.jp/sans-tetes/20100315 http://d.hatena.ne.jp/sans-tetes/20081103 http://d.hatena.ne.jp/sans-tetes/20081024

*3:半ば自ら望んでいることとは云え

*4:時さえ違えばこの鎌倉の俗っぽさは最高に楽しいのですが