懲りてないの


 前日の雨が非常に重く、どこへ行こうかという気持ちを根こそぎ奪い去った北海道滞在の最終日、お泊まりはいつもお世話になってます岩内雷電温泉件の宿だったのですが、お目当てのネコが雨降りの夕方バイク目当てで闇の中からちらっと現れたのと、翌日朝早く宿前の花壇をウロウロしていたのをちらっと見かけただけで実際のネコおさわりは今回はナシです。もちろんネコも宿のご主人ご夫婦もめしもフロも変わらずヨイ宿でした。ちなみに裏側の朝日温泉は前来た時よりもっと悲惨な状況になっているようです。

 最終日と云うことで、黙って帰り支度の後粛々と苫小牧まで行けばいいモノを、そこは私のこととて何処かへ行こうと、岩内からどこへ行こうと、迷う・・・コトなくここしかないだろうこの場所へ来てました。岩内の海岸線に立つと何処からでもコイツが見えるもんで。

 遠くから見ると心なしか控え目に見える言わずと知れた北電泊発電所、その周辺に2館、原○の安全性を地域住民に正しく宣教して明るい地域生活目指すこと目的とした施設がありあります。何せ前回来館時にこんなモン(→http://d.hatena.ne.jp/sans-tetes/20091018)配ってた施設ですから3.11以降何らかの隠蔽をしなければ黙っていないところが黙っていないだろうと、そんなこんなに期待で胸は膨らみます。

 まず訪問したのは共和町側にある「原子力環境センター広報展示室」。殆ど官側の手で作られたのであまり目立たず、見物客も全くおらず、薄暗い建物内に足を踏み入れるとそこは2年前と全く変わりませんでした。
 とは云っても何を隠そう、例の「地域が〜」のファイルはこちらでゲットしたもので、その後もアイタタな文言の踊るファイルやら冊子やらご用意の上訪れる方を明るく宣教しようと待ち構えたまま、例の災害の後も官モノのいい加減さからそのままに掲示してるんじゃないかとそんな期待を込めて展示物には目もくれず*12階のパンフ置き場に直行。すると、当たり前の如く地域密着をアピールする冊子の表紙。紙名は『夢』。いつまで夢見てるつもりかそれとも全て夢にしたかったのか定かではありませんがアメリカンジョークにしても度が過ぎている、ああこれは懲りてないんだなぁと、ふと見ると冊子の刊行、「2011年春」で止まっているのに気付く。ヤツら春以降冊子出してない・・・。予想通りとは言えあまり清々しいヘタレっぷりに呆れる。某事故と教宣と本来何の関係もないはずじゃないですか。

 しょーがね−なと思いながら右から左、片っ端から無料の冊子をゲットしていく。するとこんな冊子も

 だれかネコだったらなんでも許されると思ったら大間違いだぞ位のコト言ってやれよ。逃げる途中戻ってきて申し訳程度に考えたであろう字句踊る、と思われる冊子。すみやかに持ち帰りウチのPCで電子化させて頂きます。

 必要な(?)冊子あらかた取り尽くして、展示物に変更ないし撤収しようかと階段降りかけて正面、ふと見ると周辺4町村それぞれご自慢の美しき自然の造形。写真経年による色褪せを差し引いても常に自然に抱かれる北海道の景色に息を呑む・・・のではなく何か引っかかる。このパネルに重要なメッセージが込められているように感じてならない。周辺4町村・・・。そうか!泊原発利権享受町村か!素晴らしい!

 微妙にオチが付いて一安心と云うコトで常に見学者より普段何をしているのかわからない職員の数の方が勝っていそうな当施設を後に、次なる施設へ向かう。次こそは原発利権の総本山とも云える場所です。

 そんなに沢山の人と車が訪れるでありそにもなさげな平日に交通整理のおっちゃんを駐車場内に雇う入場料無料の施設、その名を『とまりん館』と云います。臭ってます。相変わらずプンプン臭ってきます。

 入り口を入りかけてその芳ばしさが大充満していることを教えてくれるとても美味しい掲示。明らかに「許可を得てない取材・インタビュー」「集会・デモ行為」の文字が後付けで貼り付けたのがバレバレ。その他招かざる客へ機先を制する一言一句。

 そしていよいよ館内、最初に飛び込んでくるんは当館付属ゆるキャラの「とまりん」さん。なんか今年の誕生日で10歳になったらしく沢山プレゼントもらってますオメデトー! そして、やっぱり、おまえらなんも懲りてねー! てかお前オレと同じ誕生日かよ!

 そしてなんかお高い警告。やっぱ微妙に周囲見下してるだろお前。
 
 案内及び館内受付には相変わらずキレイドコロなんか揃えておりましてコレがまたそつのない応対。窓口にキレイドコロを置くことでトップの胡散臭さが自ずと醸し出される様はラピュタ阿佐ヶ谷の例を見ても明らかです。そして、前回来館時にはそのキレイドコロさんの脇辺りに貼られていた「原発構内見学ツアーバス」の案内が出ておりません。前回来館時の文字通り肝だったはずのバスツアーですがどうしたのでしょうか? キレイドコロさんにお尋ねすると「事前予約のみの対応になりました」とのこと。ああそうですか。

 その受付からすっと横の方に視線を移すと微妙にもうオレのことは放っておいてくれ!感漂う夢の全IH化住宅展示。照明を消して率先して節電に協力するご様子。

 仕方がないのでなんかお遊戯でもして帰りますか。本日どういうワケかお遊戯コーナーにやたら親子連れが多く子供より大きい人が大っぴらにお遊戯すること少々憚られる様子ではありましたが、まあとりあえず大きい人でもそんなに違和感無く遊べるタマ転がしでもして遊ぶ。ぎゅるんぎゅるんごろごろぴーん。なんか先に来館されたと思しき格好からしてライダーさんと思しき人が向こう側でタマの動きを追っていましたがそちらの方に視線は移しませんでしたのでよくわかりません。

 腕が急性筋肉痛を起こすまでお遊戯に従事したのでいよいよ当館メイン展示の発電やら核分裂やら廃棄やらこうそくぞうしょくろやらぷるさーまるやらについて頼んでもいないのに一生懸命説明と疑似体験を押しつけてくれるスペースへ参ります。そこは以前来館時と見た目殆ど変わりなくさもああ日本はなんて素晴らしいエネルギー利用の選択肢に富んだ素晴らしい国なんだろうと教えてくれる芳ばしい展示がたくさんありました。

 前回訪問時に殆どの展示は体験済みだったのですが唯一、『アトムステップ』なる「飛んでくる原子核を踏みつけて核分裂させる」と云う体験展示は試していなかったので今回は試してみようと、見るとそこには先客が。私と同程度のいい歳こいたおっさんで、よくわかりませんが不思議に華麗なステップを踏み続けこんなおっさんが各原子炉に一人くらい入ってれば3割くらい発電効率を上げられるんじゃなかろうかというような有様で核分裂をバンバン発生させています。こんな簡単に核分裂起きちゃうんかと誤解を招きそうですがあんな簡単に臨界起きちゃうんだよともはや日本全国民だれもが知ってる以上これほど意味の無い展示物もないでしょう、華麗なステップ踏む音はもはや虚しいモノでしかありません。

 数々の相変わらずの展示物に少し開いた瞳孔が戻らなくなったところで展示物から少し離れた場所にある休憩所及びその周囲に掲示されたポスターの数々。あれだけウソや欺瞞が明らかになってるのに「ウチと東電は違います」とばかりに開き直りの如く貼られた資料の数々。

 館に寄せられた質問がこのプールに対する苦情だけなんて絶対ウソだろ。大体からしてタダでプール使ってるクセに*2これ以上なんの文句があんだか。利権享受に縁のない人々からは激しい叱咤を受けそうな内容でヒドい。

 「原発建屋が穴も空かずただソコに立っている」と云うだけで随分遠くに来てしまった感を抱くのは私だけでしょうか? それを思えば運転再開できないくらい何だ! とまでは言わない。

 館内通路に掲示されてる「茅沼炭鉱」の写真。ここ泊村が何故か「道内エネルギーの故郷」と云う私には呪縛のように聞こえる場所として、その元祖に位置付けられる当時の写真です。炭鉱から産出されるエネルギー源が日本の礎となっていることなんの疑いもなかった頃の人々。

 今残る茅沼炭鉱の遺物はこのうずたかく積まれたズリの山のみ。何が正しくて何が間違っているのか、日本人としての自身の生き方に大なり小なり自問自答するきっかけを突きつけられた件の出来事の一方で、これも自問自答の一種なのか、ただ単に懲りないだけなのか、触れて欲しくないようなそれでいて自分らの考えを無条件に受け入れるため露出を上げる、そんな微妙な空気の漂う最北の原発関連施設はここ泊村で年中無休で営業中・・・タダだから営業とは言いませんね。開館中。

*1:一見したところ展示物に全く変わったところはありませんでした。相変わらず「スパークチェンバー」とか言うヘンな機械の音も鳴りっぱなし

*2:こことまりん館内には一年中利用できる温水プールが併設されていて無料で利用できる。こちらに訪れる住民のほとんどは実はこちらのプール目当てだったりする。ちなみに今回訪問時どういうワケか温水プール無期限の休止状態だった。