網走巡礼 その2

 (前回のあらすじ)飽きるまで館内をウロウロしていたにも関わらず結局石井監督墓所に関する情報は入り口前の石碑のみで、そこにはしっかりと「市内潮見墓園」と記してあったにも関わらず先程訪問した潮見墓園にはその影も形もない。はてさてどうしたモノか(→http://d.hatena.ne.jp/sans-tetes/20111204)

 殆どなし崩しに見学したと言ってヨイ「博物館網走監獄」でしたので、てきとーなルポの中抜けが多いことはご容赦下さい。たぶん見る人が見れば目を輝かす程興味深い展示が盛り沢山なのでしょう。紹介はしませんでしたが館内見所の中に「監獄食」と云うのがあり文字通り監獄のメシを有料で食わせてくれると云うモノですが、何も北海道まで来て囚人と同じメシを食わんでもと思い余り興味は沸きませんでした。監獄食が美味そうに見えるのはそれが囚人だからだとか『刑務所の中』の山崎努の演技のせいなんだと思います、個人的には。
 いずれにせよ博物館見学だけで昼近くまでかかってしまいこのままでは初志貫徹危ういまま網走を去らねばならないと云うことで恥を忍んで館内首から札を下げたこれは学芸員らしいあんちゃんを2人ほど捕まえましてこれこれこういう理由であの石碑に書いてある墓地の場所を教えて欲しいと請うた所、
 「行ったことないのでわからない」
 ととてもつれない。これは皆が名前を知っていそうでいざそのご本人には近寄りがたい石井監督らしいと言うべきなのだろうか? 結局当初の目的を達するためにこの場所を訪れたことは時間のロス以外の何モノでもなかったことが判明したわけです。いや、博物館そのものは楽しかったよ、すごく。

 と云うわけであてもなく再度冒頭の墓地へ。けどやはり何のアテもないのだから事態は変わるはずがなく、きっときっと「オホーツクに消ゆ*1」ならば間違いなく相方をトランプに誘ってヒントを引っ張り出す場面だと思うんだがそんな相方などおらず、さてどうしたモノかとそのまま墓地前の道路を真っ直ぐ山の方へ走っていくと「北方民族博物館」の場所を示す看板が。網走市内にあるもう一つの大きな博物館、元々今回の旅行の見学予定には入っていて、と云うのは墓参り初め当初はもう3時間も前にこれまでの予定は消化していて時間余るだろう、だったら北方民族面白そうだから行ってみっか的な感じで考えていたためで、決して『新・必殺仕置人』に登場する「死神」が「ギリヤーク人(ニヴフ)」と云う設定だから得物のモリとかあの特徴的なサンバイザーとかのそれらしいモノでも置いてあるじゃねぇかとかそんなバカな考えが少しでも頭を横切っていたからではありません、たぶん。

 どちらにせよ現在どう考えても手詰まりであること間違いないので気分転換のつもりでちょっとスケジュール的にもキツくなることも覚悟して訪れました「北海道立北方民族博物館」。来館の経緯が経緯だったので正直とてもテンション低く自分でも「あ、これはさっさと流して終わるんだろうな」とか思っていました。実際変なモニュメントのある特徴的な建物外観の写真撮る気にならず残ってません。

 ところがどうして、その展示の面白いこと面白いこと。展示室入ると最初に出迎えてくれたこちらの仮面。

 こちら展示物の内容というモノがこの北海道から樺太・千島、カムチャッカ、シベリアから更にアラスカにかけて非常に広い範囲を「北方民族」と便宜上一括りにしてその中の個々の民族の伝える文物遺物を並べていて、

 特にその特徴的な意匠が目を引く衣装やら

 生活用具

 なんかのトーテム的な意匠

 楽器

 それらが薄暗い照明の下説明と共に並べてある。これらの見せ方を心得ているような展示の仕方が物凄く格好良く、各々の意匠がとても素敵に映えているのだ。証明が薄暗いのはあるいは文物保護のためなのかもしれないが偶然にせよ、元々の意匠の素晴らしさが際立ち一部に幻想さえ漂わせる空間にしばらく、思う存分酔う、そんな体験ができる博物館は久しぶりのことだ。

 ところでこちらの博物館、館内に学芸員さんが常駐していて希望があれば展示物その他の解説に応じてくれる。視覚的に得た酔いと興奮が少し落ち着いた所で今度はより知的好奇心を満たしていこうと云うことで当然その学芸員さんに解説を求めるコトにする。「すいませんお尋ねしたいことが」「はい、どういったことでしょうか?」「『新・必殺仕置人』の死神が・・・」「はい?」・・・やっぱりそうきたか。

 学芸員さん、死神に全く食いついてこなかったので*2もちょっと真面目な質問をします。真面目な質問の中にも聞きたいことを聞き忘れません。「ギリヤーク人というのは」「その呼び方は古い呼び方です。現在では『ニヴフ』と呼ばれています」「今回の企画展*3の人々(ウィルタ)とは何らかの繋がりがあるんでしょうか?」「住んでいる地域が隣接していると云うだけで別の人たちと云われています」「そこの人たちが江戸時代頃小舟に流されて本州近海まで流れてくることはあり得るのでしょうか?」「無いとは言い切れません」

 こちらも余り確信のない、しかもテレビドラマのいい加減な設定の話を更に婉曲に聞くというのは口下手にとって大変骨の折れる作業で、その内何を聞いてるのか自分でもわからなくなってきて、でも決して学芸員さんをからかっているわけではありません。なので次の質問で最後にしました。「昔のドラマに絡んだ質問って今まであったことはありませんか?」「初めて聞かれました」ああさよか。

 それらしきサンバイザーはしっかり展示されてました。用途は残念ながら雪目防止のためです。しかもニヴフのモノではなくイヌイットのモノだそうです。ちなみに「ニヴフでも同じモノが使われていたんでしょうか?」との質問には「わかりません」とのこと。

 解説終了後尚も居心地の良さに耐えきれず展示物の間を行ったり来たりて名残惜しくも後にします。先程も述べましたが博物館に入る時は出る時まさかこんなに名残惜しい気持ちになるとは思わず出てきたらできたで凄まじく後ろ髪を引かれる思いに足下おぼつかなくバイクまで戻る間遂に一枚も博物館外観は写真に納めてないこと、今書いてて初めて知りました。ああ、怖いなぁ、仕事人シリーズは。たぶんなんか違うと思うけど何が違うのかはよくわかりません。(つづく)

北海道立北方民族博物館 http://hoppohm.org/index2.htm

*1:ファミコン

*2:当たり前だ

*3:当時「ウイルタとその隣人たち」と云う企画展を開催していた