春は押上、春は塔、春はお稲荷、春はねこ、春は京成立石、春は気の合う友人と散歩

長ぇ

 ソメイヨシノも昨日の風雨であらかた散ってしまたコトだろうと、一方で私の知らない間に墨田区押上になんか長い塔みたいのが出来たというコトで見に行きました。
 押上駅がいつの頃から地下駅になったのかはよく知りませんが、地下の押上駅も私の記憶している押上駅とは何となく違うと思いながら地上に出てみるとおかしなコトに例のタワーがありません。おかしいなと思いながら少し立っている位置を変えてみると

 あんな所に隠れていました。こんな巨大な塔を上手に隠す事が出来るのですから押上のパワーもなかなかのモノです。本来秘められた押上のパワーは間違いなくあの地下鉄入り口出て一分で現れる謎の駅前商店街並みに秘められていたと思われますが、残念ながら現在件の駅前商店街並みは跡形もなく新しく出来たてでございと云った風を見せるロータリーが更に周囲を更に飲み込んでいくかのような構えを見せて「まだまだ広がるよ広げるよ」っと云った風がとても印象的で一刻も早く離れたい気持ちとなりました。

 タワーを源泉とする「なんかよくわからないけど新しそうなニオイ」に早くもうんざりしてなるべく早くこの場から離れたくて駅正面に広がるアーケード街をみてみればそれは以前から変わらない押上商店街のそれで、ホーム・アウェイで言えば間違いなくホームだ、あの先を越えれば心がきっと穏やかにあるだろう、切ない心の叫びはそう言っておりました。

 まあ、商店街の裏側回った位でこの巨大なタワーの存在感を払拭できるワケもなく、まるで裏通りが存在しなくなってしまった、押上という街は奇妙で明るいプレッシャーを何処にいても与え続けてくれる、それが今日の時点で「押上と東京スカイツリーと私」と云う中間的総括としておこう、そんな思いを胸に抱いた景色です。

 さて、総括は無事済みました。後は界隈に残る昔からのクールな建物を見て撮って探して歩くといったノスタルジー三昧といきましょう。

 どーでもイイお話しですが、その昔仕事上でお会いする機会のあった個人牛乳販売店の店主さんがひどいアル中で、おかあちゃんがうるさい家の中では飲めない鬱憤を仕事中、配達中に飲んで晴らすこと日常化定例化依存化の挙げ句、例えば外配達中の軽トラとすれ違うとガラス越しミラー越しでもわかる赤ら顔だったと云う思い出は、牛乳屋の看板を見ると悉くアル中を連想させる条件反射となって今私の胸に深く去来します。

 お話しを戻しまして、かつての仇敵京成東武が仲良く潜っていくすぐ隣辺りの踏切を渡っていよいよこの押上から本格的に離れますとその先には。

 きつねさんぴょん

 ジャンプお稲荷狐を始め沢山のおキツネさんがたむろする稲荷神社にお参り、お手を合わせます。

 お手を合わせると言えばこちら、普通に個人宅の玄関先、路上に置いてあった手作りスカイツリー型鉢植え。シンプルながらも的を外さない素敵な出来映えに思わず手を合わせます。早くアサガオの季節が来るとイイね!

 普段余り気にするコトのない、押上お隣は曳舟

 曳舟のお隣は東向島

 東向島のお隣は鐘ヶ淵

 いつの間にか、流れ流れて荒川沿いまでやってきてしまい、

 菜の花にサボテンと無国籍風の草花が大変お似合いの荒川河川敷沿い東武線線路

 そしてこちらはかの堀切にないことで有名な堀切駅。私は川側に向いた上り線側改札が好みです

 ここで思うこと、昼過ぎてとてもお腹が空いていると云うこと。と言うワケでちょっと同行の友人を驚かそうと川向かい堀切にあるのに何故か立石バーガーの名前が付いている超有名なお店へご案内することに。

 立石バーガーと言えば超万能自販機です。それにやはり一見さんの友人にはこの超万能自販機を見てもらいたく、色々思いが集った挙げ句果敢にも今回私はまたもや自販機に挑戦することにしました。すると・・・友人の目が点になっている。友人の表情が今何が起こったわからないような顔をしている。

 ある意味予想通りの反応を引き出すことができドヤ顔のまま調子に乗って只今手に入れた「串揚げバーガー」を手に初めての店内進入を試みることにしましたが、これが全ての間違いの元ということに気付いた時にはまさに後の祭りというもので

 店内で購入した友人と共に店内で食物を召し上がりながら歓談してくつろいでいたところ、両者ともにその今購入した食物の食べ終わった頃を見計らって店主よりご丁重なお言葉。どのようなお言葉か要約すると「他に注文無いならもう出てって」。誤解しないでもらいたいのですがあくまでも至極丁重な態度を崩さずに、です。

 食物を供するお店のご主人が発するには大変勇気のいる言葉に友人共々感服して早々に席を立つことに。友人の推理によるとこの接客態度と万能自販機はきっと相関関係にあると。最後まで予想できない、食べ終わっても油断できない、立石バーガーはそのお店のご主人ひっくるめて素晴らしいお店でした。また来よう。

 このまま直接立石方面まで行けば多少の時間短縮になったのでしょうがそこはせっかく荒川渡ってやってきた堀切です。私も友人に「面白い街」と言った手前多少なりとも探索せねばならないと思いひとまず南側、平和橋通りから天祖神社裏の方を通って駅前ゾーンに進入、午前中から飲んでいらっしゃるであろうお店の方々の脇を通り一旦線路に沿って西、今度は赤札堂の通りを南、交番の裏から大通りに抜けてそのままガード下を潜って向かった先は

 言わずと知れた「ルビー」を求めて鈴屋さん。ここまで堀切の鉄板でしょうか?

 友人共々ここまでの堀切街歩き、かなり満足していたのですがちょっとまだひと味足りない云うコトでネコ風味を求めて半分ダメ元で「いつもねこがいる」と適当なこと言って案内したのはもう一つの方の赤札堂の裏側でネコに釣られた友人共々行ってみるとなんと

 今まさに長毛イヌが倒れているネコに向かってトドメを刺そうとしてる大変な場面に出くわすという

なによ、誰もいないじゃないの

 一秒でおわかりのようにウソです。しかし、この「赤札堂裏で道路の真ん中にねっころがってるネコ」の大変なニュートラルさがそれはそれで事件のような気がします。

 結局友人おさわりにもなすがままのコイツ、とうとうやってきた車にも動じず寝そべり続けるというあまりの暴挙を見かねた友人が手で除けてやっと逃げ出しましたよと、

 相方はとても呆れた顔で始終見ておりましたとさ。

 ネコまで付いてもうとてもお得な堀切行、シメはやはり菖蒲園と云うことで行ってみると当然の如く菖蒲咲いてない、当たり前の如く人まばら、それがいいと云うことをツイートするとキチガイみたいな罵詈雑言を浴びたのがショックでここに閑散期菖蒲園の写真はあげず代わりに

 塀を壊して咲いてるかのようなどこぞの庭木と

 錆びた感じがいい具合のだれかん家の門

 這々の体で堀切菖蒲園を離れるとうまい具合に桜のトンネル

 その先向かうはいよいよ立石です。

 やはり話の流れ上何故立石かということはやはり話しておかねばならないでしょう。あれは確か・・・、えーっと忘れました。おわり。

 いずれにせよ立石の駅に近づくとこのプンプン臭ってくる街のニオイが本当にクラクラさせてくれるんですこれが。

 例えば東口側踏切近、ここから駅を見ると高架駅舎から延びる二本の階段通路がまるでモビルスーツの又に見える、と云うコトはさておいて、こちら側の踏切が列車の通過量応じてそれはもうよく閉まる。遮断機が閉まると当然の如く通行人は通過が終わるのを遮断機の前で立ち止まって待っている。するとココにチラシ配りのおねえさんがチラシ付きテッシュを立ち止まっている人達に配ろうとする。そして立ち止まっている通行人の、おねえさんを知っているのか定かでありませんがやたら話しかける率の高いこと。中には大声で恫喝するように何やら訪ねるおっさんがいる。向こうに電車好きのチエ遅れがふらふらしてる・・・なかなかのカオスです。いずれにせよ知人の娘とかの初バイトがテッシュ配りだったとしたら勤務地希望立石だけはやめた方が良いと忠告することにしましょう。

 さて、こちらの踏切目の前にファミマとその奧に大きなアーケードが広がりまさしく立石商店街の入り口と云った感じなのですが、ここらでいい加減のど渇いた何かソフトドリンクでも飲もうと、せっかくならコンビニなんぞという味気ない店舗形態ではなくなんか個人商店みたいな所で買いましょう思い立ちファミマを通り過ぎぐるぐる商店街を回ることに。

 目の前の商店街には当該の商店は見つからず、なんかの拍子にひょいと商店街の裏側を覗くとなんとそこにはも一つ商店街が、更に弾みでひょいとその裏を覗けばそこにはまたまた商店街が。これはどーなっているのでしょうか?

 その裏側とその又裏側の商店街(立石仲見世と云うらしい)は主に食材メインの御店方でまさに我々の今の目的に合致する通りだったのですがそこは日曜休日の性、殆どのお店はシャッターを下ろしておりましてその関係か少々薄暗い通り、開いているお店は日曜午後の日の高い内からお酒を供するお店だけ、これがまた何処も結構な繁盛ぶりで少し覗くと赤ら顔の酔客と目が合うというちょっと当初の目的から外れてしまっているのに気付くや早々に通りから立ち去ることに

 アーケードの一番端、立ち食いお寿司屋さんは有名なのでしょうかこの時間から結構な行列で、その横には天下のイトーヨーカドー、このロゴ看板が*1恐らく全国のヨーカドー中一、二を争うのではないかという汚さで、いくらセブンなんたらというロゴを打ち出し心機一転を図ったところで立石だけには通じなかったであろう日本有数のスーパーマーケットが何ら遜色なく見事に立石という街の一部と化しております。
 「ソフトドリンクでも飲もう」と目的はこの立石流イトーヨーカドーを以てすれば難なく果たせるというモノのそれはやはりイトーヨーカドーです。いかに立石流と云えども「地元の商店で」という重要な目的はなまくら刀のように毀れてしまいます。よって更に目標の貫徹を期して今度は線路の向こう側を探索することにします。

 踏切でなく線路下の通路を潜ってその先はやはり商店街、そしていきなり飲み屋街、更に当然の如く日中営業、悉く客多い。路線の南北方角は違えどそこはどっぷり基本を外さない京成立石色、ところでこの「京成立石」と云う駅名、他に「立石」の名が付く路線駅がないにも関わらない立石地域では唯一の「立石」駅のはずですが何故「京成」の二文字が先に付くのか、それはやはり「立石」に「京成」が付くことで「立石」を強調しているのだなと、「京成」と云う文字はきっと地名の先に付くことで修飾詞となるのだなと京成立石界隈をふらふらしてみて確信に至りました*2

 もちろんここに至ってもソフトドリンクうんたらかんたらの目的は続いているのですが、とにかくこの界隈、何か飲み物を供してくれそうな店が悉くアルコールしか置いていない店なので、ついでに言えば焼き鳥屋と揚げ物屋がやたら多い固形物に至るまで呑んべぇ仕様、更に驚きましたのはあまり見かけない「カウンターに開いてる酒とグラスを置いて呑むこともできる酒屋*3」まで。これはもう飲まない人、もしくは飲む時間をきっちり決めている人にはちょっと住みにくい環境、裏返せば呑んべぇ天国、さすが「京成」の修飾詞はダテはありません。

 もうなんだかソフトドリンクとかどーでもよくなりつつなった頃、飛び込んできたそのものズバリ「飲んべえ横町」の文字、この界隈普通に全てが暗黙の内に「飲んべえ」と化している中敢えて「飲んべえ」の文字を冠する横町、これはダテでないと多少の危険も感じながら近づいてみると、その横町入り口脇の建物二階にある飲み屋から首輪紐付きのブルドッグさん登場。ああ散歩なんだなと普通に思いきやその首輪に付いてる紐がやたら長すぎてイヌはさっさと向こうの横町入り口(?)の方まで行っているのに飼い主がなかなか出てこない、遂には隣のお店のおかみさんが「長いよ!」とまるで心の叫びを代弁するかの如くツッこむ、紐の先でイヌはドコぞの部屋飼いのイヌ2匹に二階から絡むその内やっとイヌの飼い主現れてさも当然のように「飲んべえ横町」の向こうに消えていく。なんじゃこれは?
 
 横町入る前から余りに賑やか過ぎる前座に早々とヤられた感漂わせながらやっと入った「横町」の先に現れたのは

 そもそも立石と云う街に何故だか憧れて止まない、その理由はと云えばつげ義春つげ忠男兄弟が幼き頃住んでいた街、彼らが描く立石の影の描写からで、彼ら二人の描く陰惨な少年時代の心象そのまま映し出した今は当然の如く変わってしまっているであろう立石の街の面影がもしかして何処かに残っているのではないか? 

 そんな淡い想いに答えるかのような、まさにつげマンガの書き割りより抜け出たかのような路地二つ

 当然のごとく尽くは飲み屋さん。そして更に恐ろしいことにいくつかのお店は平然と営業中中から楽しげな酔客の声。何故だかそこ飲んでる客、店の人に見つかるのがとても恐ろしいような気がしたのでおっかなびっくりで撮影してブレて、なんだかイイ感じ

 立っているだけなのに、ここが何処だかわからなくなる路地の向こうから腹を刺された京成サブが現れる。つげ忠男の描く*4そんな場面が今すぐ訪れてもおかしくない通り。

 呆然とする内同行の友人は路地の向こうに消えてはぐれる。何処かで誰かが置き去りにしてったような路地で自身までもが置き去りにされた、そんな不安は日中日の光の殆ど透過することない薄暗い露地を幻の如く浮き立たせてくれます。間違いなくそれはただの幻影なのですが。

 遠くから酔客の騒ぐ声、今度は夜来てみよう。そう思わなければ抜け出せぬまま今でもそこにいたのかもしれません。

 その通りが幻でないことはこの後駅南側商店街少し外れた場所にあるタコ焼き屋の姉さまが「立石の面白トコ」として紹介していたので現実に違いありません

 いずれにせよ京成立石、例えて言うなら3.11後の平成の御代に生きる決意を悉く持ち去っていくような、そんな気持ちが後に残っています。日曜の夕刻前でこうなのですから、終末の夜ともなればどうなってしまうのでしょうか? これは気合い入れて再訪するしかないでしょう。

 この後せっかくだから上野まで歩いてなんか食べましょうかと歩く歩くそれはもうてくてくと、途中もなんだか妙に極楽係った風景、と云うか主に人の動きが極楽の住民みたいだったのですが、そんな「間違っても消化試合とは云わせんぞ!」と云う勢い感じる葛飾→墨田→台東のだらだら道はやがてただの書き割りから再び主役然出張ってきたスカイツリーを横目に日も暮れてそこらに酔客歩くのに何の違和感無くなった頃、上野で本日の反省会としゃれ込みながら、ふと思い出したのは昔上野も結構あんなワケわかんないとこだったよなと当時のカオスな上野を思い描いておりました。当時普通に見かけた*5マジキチ共はどこへ行ったんでしょうか?

*1:セブン&アイ」でなくて古いヤツね

*2:恐らく「京急」もそれに近い語と思われる

*3:正式な呼び名はわかりません。酒屋スタンド? 昔の『こち亀』に夜間パトロール中の両さんがこーいう酒屋で一杯やる描写があるので葛飾界隈ではありふれているのかもしれない

*4:描いてませんよ、一応

*5:それが上野では普通だと思っていた