小和田駅Bルート その2

 (その1→http://d.hatena.ne.jp/sans-tetes/20120618)
 東海道新幹線の売り上げが収入の大部分を占めるJR東海は「東海道新幹線管理会社」と揶揄されることありますが、そんなこという連中はヤツらの本当の正体を知らない。「飯田線管理会社」コレがヤツらの裏の顔にして真の姿だ。これからは煌びやかな名駅の姿に騙されるな。鄙びていつツブれて何の不思議もない小和田駅とソレに至るいつ崩落してもおかしくない飯田線を決死の覚悟で保守する姿こそに鉄道会社としての真骨頂がある。肝に銘じなさい。「知ってるよ」ああさよか

 ところで全回挫折した崩落の辺りから小和田駅まで戻る途中に「マキホツ集落」と云う今は廃集落を経て天竜川林道に至る枝道があり、きちんと判るように割り箸にイタズラ書きみたいな表示板があるとのことで小和田駅には戻らずにそこから天竜川林道を経由することでそちらを「Bルート」にしてしまおうと思っていたのですが、途中何故かそんな表示は見つからず枝道もわからず結果小和田駅に戻ってしまいました。

 山道から現れるとどう見ても廃線跡の実際に鉄道が走っていることなど信じられない、もしかすると「私が山の中歩いてるウチに廃止になっちゃっ」ても「ああさよか、そらしゃーないわな」で済んでしまいそうな雰囲気を発する飯田線ですが

 今回奇跡的に私が駅に戻るとほぼ同時に列車がやってきてまだ廃線になっていない様を無事この目に焼き付けることができました。生きててよかった、今日も元気だ飯田線

 安心して少々落ち着いたところで心持ち雰囲気に変化が見られる小和田駅舎周囲を観察してみます。まずは屋根の色、ペンキ塗り直したようで以前の煤け気味の茶色が大分はっきりとした茶色に変化。これはつまり「小和田駅舎当分このままで行くよ!」と云う意思表示ととって好いでしょうか? それならば好ましい事態です。

 好ましいと言えば順調に伸びを見せる駅ノートの巻数、そしてやや微妙に好ましきか否か微妙なことで? 例の「私は誰?」の尋ね人貼り紙が消えています。

 変化ではありませんが、国鉄時代のキャッチフレーズ「いい日旅立ち」マークを発見。そのまま残っている木造の券売窓口と共にこれは間違いなく好ましきコトかな。

 その券売窓口にきっぷ販売時間の書いてあることの対抗措置でしょうか、その向かい側に貼ってあった表示。今年の3月31日以前は当駅で定期を購入していた人がいたのでしょうか? 国鉄時代の掲示物を剥がすのが忍びなく苦肉の策でこのような掲示をしたのでしょうか? そうだとしたらコレも好ましい部類に入りますが単に国鉄時代と代わらぬ教条主義的杓子定規な意味のない掲示物の可能性もあります。そうだとしたら好ましさ微妙。

 好ましさ以上好まざる未満の表示が続いてとうとうこのような好ましからざる掲示が登場。「駅舎は残すけど便所は壊すよー。世の中そんなに甘くないからさー、こんなところでヒマ潰してないでさっさと帰りなさい、お漏らししったって知んないよー(名古屋弁で)」と云う飯田線管理会社として弱者保護の善意と東海道新幹線管理会社としての強者迎合の悪意がせめぎ合う様が見事に調和しています。確かに便所ハンパ無く汚ぇけどよ。

 もしかして駅寝バカ締め出しの意図があるのかもしれない。どうりで以前は流しっぱなしの水道、止まっていたので蛇口をひねるとミミズが飛び出しぎゃー、みたいな楳図日野みたいな状況に遭遇したわけだ。

 別に私は小和田駅舎内で遊んでいたわけでなく先程失敗に終わった「Bルート」探索の際置いていった全荷物を一つに纏めて背負い直すという作業に勤しんでいたわけで、作業も終わってさていよいよ出発しようかと思ってたら突然ホームの方から誰か来て本当に楳図やら日野やらの事態が頭をかすめ死ぬ程びっくりした、なぜなら列車が行ってもう大分経っていたからです。

 闖入者*1の正体は一人のごく普通の形の若者で聞くと初めての小和田上陸と云うことでここはいっちょ驚かしたるかと今から歩いて隣駅まで歩いていく旨それとなく話してみてもどうもよく飲み込めていない様子。まあ無理もないと思うし一々説明するのも面倒臭いので「お気をつけて」の一言で一期一会を終わらせる。

 一期一会で済ませぬ会いの相も変わらぬのは愛の椅子のみと、当方別段椅子に用無し

 前回来た時と寸分変わらぬ(ように見える)三輪廃車、確か前回車体の傍らに「酒井法子逃亡」とかそんな見出しの女性週刊誌が放り捨ててあったのですが今や復帰がどーたらこーたら、時の流れ云々と云う感慨より如何に世間様が碌でもないということわかる心温まるお話しです。

 心温まると云えば感慨深げにこの廃車を撮影している最中上の方から先程駅舎で行き合った初小和田青年に再び行き合う。再度会釈、その場を離れて天竜川沿いに北へ向かう自分に対して青年、初めて事の重大さを悟った模様。「どこへ行かれる」のだと。これぞ我が意を得たり、説明の後青年の表情が期待通りに豹変していく様が見て取れる。「お気をつけて・・・」それ以上二の句を継げない青年と私、この場の勝ち負けで云えば私の価値は揺るがないが、今後の人生の時間の使い方次第によってはこのような些少な勝利など何の意味も持たないことよくわかる儚い勝利、青年よ、嘗て抱いた大志があるのなら、まだまだ取り戻すに遅きはないぞよ

 行っておきますが「Bルート」探索はまだ終わったわけではありません。候補はあと2つ程あります。そのいずれのルートも小和田駅から所謂「Aルート」と途中まで重複する形になります。この道順、私にとって縁もゆかりもありませんが、自分がここまでバカだったか本当にバカなんだと再認識させてくれた忘れ難きルートを再度なぞって行くことになる、こんな喜ばしいことはなく、まだ勾配に入らない地形の良さも手伝って、少々上機嫌で足取り軽く

 すぐに山道、あっという間に例の第一の分かれ道。左側ルートの末路はコレも有名なオチが待っておりますが*2何よりこちらの分かれ道、コレも有名な現唯一小和田駅ご利用宅への目印でもあります。ただこの分かれ道が遠く視界に入ってきて後何か違和感。かつて立ちこめていた生活臭が漂ってこない。もしや・・・

 例の、老ご夫婦がお住まいというお宅に人の気配がない。以前通りかかった時は周囲の畑きちんと手入れがされていて、干し物やら機器やらが使っている様子が見て取れたのに、それら生活の気配が全く感じられない。とうとう・・・

 まあ、何となく一方的な親近感はあるとは云え全く赤の他人様の日常生活のこと、これ以上余計な探索は止めにしよう

 ただ周囲のお社様祠様諸々八百万、お水をお献げに参る人いなくなってしまいますね。

 こうなれば、私にできるコトと云えば、只ひたすらに歩みを進め、きちんとした形で「小和田駅Bルート」を見つけ出し無事小和田駅からお隣の駅まで歩いて行くと云うことしかないのです*3

 所謂「Mさん宅」から先、鉄網の状の歩道に吊り橋、Aルートも含めた小和田駅沿線でも見所と云えば見所と云える場所を通り過ぎていよいよ恐ろしい急坂に差し掛かります。道は基本的に簡易舗装で覆われておりますので歩きにくいワケでなく*4基本この簡易舗装路に沿って死ぬ程の急坂を登っていけば本当に死ぬような事態には至らず無事・・・と云えるのかよくわからないが一応自動車通行可能な天竜川林道に到着するのですが

 途中で意味ありげな分かれ道。前回のAルート踏破時も気になりつつ舗装路の行く方向に従ったのですが、

 うっすらと「宇連・上平」と場所を指し示す表示を確認。地図で調べると両地名とも飯田線の飯田側次駅、中井侍駅へ向かう途中の地名。この分かれ道こそが次善秘かに目を付けていた「Bルート」の候補です

 分かれ道の方に入るや否や簡易舗装は途切れ落ち葉枯れ葉積もりシダ等生え放題の「山道でござい」と主張するようなわかりやすい山道。歩みを進めると道床は結構しっかりしていて土と云うこともあり簡易舗装より歩き易い

 しばらく行くと小和田駅よりにもあった床が網状の鉄製歩道。先の門谷方面路ではこういった渡しが悉く木製であったために悉く苦労して遂には断念と云う結果になったことを鑑み、このように多少なりとも道の永続を意図した構造物の存在を以てしてルート選定の正しかったこと早々とこの先の勝利を思い、やや自惚れも手伝って以後自然に歩み軽やかに

 「そりゃあ倒木くらいあるよな、山道だし」

 「けど路肩なんかしっかりしてるよ。さっきと同じ石積み石垣作りと云ってもこっちは段違いだよ」

 そんな軽口*5も道に現れた謎の表示が目に入り自然口籠もる。「平岡」とはあの平岡*6のことだろうが、それにしてもこの場所から「平岡」とは随分遠すぎないか? 飯田線にしたら四駅も先*7のコト。この現実感の無さ*8にほんの少しもたげて来る不安

 気のせいか道を敷き詰める枯れ草もやたら多く厚く場所によっては踏み心地の柔らかすぎて踏ん張りの効かないことも。いや、気のせいだよお前は心配性なんだよ、なんたってこの道は立派な鉄製渡し造る程重要視されてるんだから・・・

・・・なんだアレは?

 そこにあったのは必至に打ち消そうとする不安感にトドメを刺すまたもやハードなオブジェ。遠目で見た時には誰か首でも吊ってるのかと本気で死ぬ程驚いたが近づいたら近づいたでやっぱり目を丸くする程度には驚愕、そこにあったのはお馴染み「電信柱を支えてるなんか黄色いカバーで巻かれたワイヤーみたいなの(正式名称不明、以下「黄色いの」)」、それが土砂崩れで土台がえぐれたか地殻変化で電柱本体が大きく動いたかでとにかく地面から離れ宙に浮かび本来の役割を放棄している

 コレは珍しい、業界人でもなければ見る機会のない「黄色いの」の根っこ部分。碇のような断頭台の一部分のようなこんなデカイのが地面深く穿ち電柱本体の支えとしてしたにも関わらずいとも簡単に露出、宙ぶらりんの姿と相成り候・・・もうこの時点で直感しちゃったんですが、ダメだな、もう、こんなんなってるのにほっとかれてるこの道は・・・

 けどまあ崩落とかで行き止まりになってるワケでないし行けるとこまで行ってみよう、そう覚悟も新たにする私の意気込みを嘲うかのようにこの首吊りを転換点とするかの如く先ガレた跡が目に見えて増加、道ひどく荒れてくる

 そしてその道の先、またしても・・・

 あかんあかん、ああもう帰ろ帰ろ

 丸木橋よまたもや我が行く手を塞ぐか・・・。それにしてもあの丸木橋の真下の崩落に巻き込まれているタイヤが非常に気になってしようがない。(つづく)

 

*1:お前もだろ

*2:http://d.hatena.ne.jp/sans-tetes/20091116

*3:だからなんでやねん

*4:決して歩き易いワケでもない

*5:独り言

*6:http://d.hatena.ne.jp/sans-tetes/20091128http://d.hatena.ne.jp/sans-tetes/20091128

*7:比較で出しておいてなんだが飯田線の駅数では全く参考にならない

*8:そもそもこの場所を大した目的もなく歩いているというコト自体現実感がないと云えようが