天城の廃鉱 その1 「困った時は民明書房」

 ちょっとした社会人の出来損ないが徹夜明けのハイに任せて死に場所を探しに伊豆まで行ったとしよう。この季節まだ海の水は冷たかろうから選ぶとしたら山の中に入ろう、伊豆で山と言えばもう天城だろう、そう、もう後は死ぬだけだと天城越えの県道から脇道に逸れてずんずんずんずん行けるところまで行ってみようとたどり着いたのがきっとこの廃鉱山なのだろうと、

 死にたい男が思いがけず甘夏の苦さを感じ人生を見つめ直す『甘夏の味』、近日公開(ウソ)。

 ともあれ結構広かった伊豆、目指す廃鉱跡がどこにあるかはググれば適当に出てくるんでこんなところであえて説明するつもりはありません、いつものように。

 県道外れた脇道、既にこの時点で道は少々荒れ気味なれど意に介さず進んだ先は見事に舗装終わる。

 四輪もしくはオフバイならも少し先まで行けそうだと思いますが柵立てて「行くな」と警告しているのですから無理はしないようにましょう。当方ここから歩き。

 直ぐになんとなく頑丈そうな橋が登場しますが辺り正直あちこちガレてます

 事前の情報では*1目的地はより川の近くにある様子。ところがこの道、足元にある川の流れをまるで無視するかのようにずんずんずんずん高度を上げて登っていく。いや決して体力無いから傾斜が疲れてムカつくとかそう云うワケでなく事前の情報との差違が不安なのだ

 その不安を助長する分かれ道。左、立派なガードレールに沿って川の方へ向かう道。ただし殆ど雑木林と化した道床。右、川を無視してひたすら登り。路肩ガードレールなんてもんは無し、ふらついたら谷底真っ逆さま。

 迷う必要は無いのですがとにかくひたすら上りです。

 余談、辺り周辺目立つモノその1 落石跡

 余談その2 養蜂の箱。一応人が定期的に来ているのだと安心できるツールではありますが

 あんなトコにもあって設置したのは果たして人間だろうか? と云一抹の不安を抱かせる景色

 余談その3 遙か足元川に沿って建っている謎の建物

 一見土木の人の関係施設かと思いきやビニールハウスがあったりなんか明らかに昔はファンシーを狙ったと思われる三角屋根(骨組みのみ)があったり、もしかしてやはり件の目的地本当は下に行くんじゃないかと不安を助長

 ただしその不安もまもなく解決します

 「大滝歩道」の看板登場直後木々の向こうから響いてくる川の怒号。姿は見えないがそこに結構な落差を誇る滝の存在が想像され

 直後足元に清流の姿。

 足元と云えば本当の足元、道には謎の赤い矢印。何がどうしてどうしたいのか?

 ともかく足元近くに迫ってきた清流、川原、と云うほどではないですが川の周囲建物の一つや二つ建てられそうな広場ができています

 案の定何かの建物の基盤か溝の跡か。

 ただその他は特に遺物と思しき物体は見つからず、件の基盤だかなんだかよくわからない遺物、だかなんだかよくわからない物体もそれ以上の用途の確定も出来かねるや興味も失せて先を急ぐと

 辺り視界少し開ける。開けた先にどうやら川を渡る橋がある模様。先程まで見えた何やら川岸に残る建物基盤跡を過ぎてのこの景色、何やらワケありそうなニオイがプンプン漂っています。

 案の定と云うべきか当然と云うべきか、はたまたやや注意と云うべきか、件の景色現れて直ぐ右側の段になった場所に注目。遺棄されたと思しきなんだか市場のトロ箱のような木の枠が積み上げられていて

 近づいて確認。明瞭に判読可能な「滝上坑内」の文字に心震える自分がいる。間違いなく、かつて鉱石の運搬及び選別に利用されたと思しき木の箱*2。今まで、坑口の扁額以外で明確に「鉱山関連」を明記する*3言葉を確認したことはなく、この場所で初めてその経験をしたことは、「近くに間違いなく坑口及び鉱山関連施設跡が存在する」ことの証拠と云うだけでなく「木枠にマジックで書いた程度の文字がかすれずに残っている程度に閉山してそんなに時が経っていない」証左でもあり、この先より生々しい廃鉱遺跡の存在を想像

 想像しながら再び道路に戻り川面を見ると明らかに人工構造物の成れの果て、橋台の欠片か或いはその他の建物の土台か壁面の一部か、いずれにせよ自然石とは思えない巨大で上部が平べったいモノ二つ、上流より流されてきての姿かそれとも元々ココにあったモノが崩壊しての姿か

 いろいろ想像しながら歩いていたのが悪かったのだろう

 この「上部に立てる足場」「周りは岩場」「足を滑らすと落ちる」「その先は滝壺」このシチュエーションで想像されるのは・・・

 そう、『魁!男塾』に登場するようなアリエナイ闘技場

 ほらさー、この位置から見ればより闘技場らしいじゃん

 ああ、男爵ディーノが自ら激流へ! みたいな

 「想像することの少ない人生は非常に味気ないものであるが想像で世界を支配されると嘘を嘘と見抜けなくなり想像は易々と妄執に変わる」(民明書房刊『二張禰流・・・まず2000年ROMってろ』より)

 今や妄執と化した想像力の暴走を止めるにはより強烈な鉱山遺物の登場を願うより他なく、そんな景色を期待しながら大雨とかで水流が増えれば沈下するだろう幻の様な橋を渡りまずはその先に見える半崩壊した建物に乞うご期待。(続く)

*1:と云っても文献等調べたワケでなくネットでてきとーにつまみ食い

*2:正式名称知りません

*3:奔別炭鉱竪坑櫓(→http://f.hatena.ne.jp/sans-tetes/20130320004136)は色んな意味で別格