天城の廃鉱 その2 「馬鹿職場は未だにタンクで肥を汲み取る」

(http://d.hatena.ne.jp/sans-tetes/20130501の続き)
 家にある書籍はマルクスと70年代までのしんぶん赤旗と云う環境で育ったサブはある映画館で見たシーン、主人公の死に際に中共関係から送られた旗にくるまれて送られる場面に激怒する。更に二本立てのもう一本の映画、花沢徳衛の「アカか!」とか言う台詞にもはや怒り心頭に。「同志にアカとか言わすな!」かくてサブの怒りはこんなクールな二本立てを企画した映画館に向けられる。怒りの発露は某映画に倣ってタンクで突っ込むがヨイと意気込むも三代前からプロ市民のサブ家に当然そんなモンあるはず無く代わりにじーちゃんが三池争議のドサクサにパチってきて今や崩壊したガレージに隠したままになっている鉱山用トロッコ動力車によって向けられる。「ウシャシャシャシャシャ・・・ただ前進あるのみ!行くぞ〜!」・・・『アカがタンクでやって来る』近日公開(うそ)

 フィールドを歩いていて何の脈絡も無く建物が現れればたいてい何か重要な情報が隠されていると云うのがRPGでのお約束ですが、山歩きの最中突然建物が現れれば現実世界においても同様何か重要な場面展開となる場合が多い、と今勝手に決めました。

 重要なのは理屈でなく実際に現れた半崩壊の建物の中に一見重機のような黄色い機械が押し込んであることで、見かけはあたかも田舎の土建屋社長の甘やかしに甘やかした挙げ句期待通り立派なDQNになったバカ息子が現場から重機を拝借しようとして操作誤り急バックの結果事務所に突っ込んでその勢いのまま建物を破壊し当人トンズラした様なよくある風景に見えなくもないが決してそうではなく、と言うかはじめからねえよ。

 ねえと言えば、建物に突っ込んでいるのがさすがに重量級とわかる恐らく重機の横姿、「700kg」は自重を現すのか最大積載量を現すのか、いずれにせよ動力が死んだ状態でコレをこのまま持って帰るのはありえねえ話であって。

 確かに私の趣味嗜好、俄仕込みの広く浅くを自認していますが、重機にまでは手を出すつもりは毛頭なくでは何故ココで黄色い重機のようなモノに盗人心刺激されるほど心のときめきを感じているかというと

 重機らしきモノが尻に敷くこの二本の鉄棒の効用に他なりません。

 何を隠そうこちらの「重機らしきモノ」

 歴とした鉄路に身を委ね鋼の道の誘うままにその歩を定める、まごうかたなき鉄道の一種に他ならない

 要はこの場所、嘗て鉱山盛りなりし頃の穴掘りの一端を担った由緒正しき鉄路のおそらくは基地となっていた建物の成れの果て

 重くのしかかる700kgの文字。

 ただ、先程は「本体重量1200kg」と表示が見えたのですがこちらの「700kg」が何の表示か不明

 その表示を知ってたと思しき人々は

 当直の度にちょっと一杯やっていたのでしょうか? あの茶碗でもって

 正面から見るとまるで向こう側から建物を突き破って飛び出して来たかの如き様相を見せてこれはこれでマンガチックで面白い

 「伊豆天城鉱山」「NO.1」未だはっきりとその車体を飾る言葉一つ一つに尽きぬ興味

 最早振れることのない、素人には到底用途の判らぬ計器の針。

 WEBに転がる未確認情報によると何年か前まで「戯れにスイッチを入れたところ計器のランプが光った」との都市伝説のような・・・山の中だから山伝説か、ともかくそんな噂もさもありなん、この車体の具合は確かに閉山してそんなに年月の経っていないように思われ

 後はひしゃげた鉄路さえ元通りに伸ばしさえすれば

 あの真っ直ぐ延びる路盤に沿って、動力蘇らないまでも押してあげれば進むんじゃないか、そんな姿でこの場にある

 御伽噺でなく、本当に後ろから押せる様になった時のために後ろ側がどうなっているか行ってみようとしたのですが

 偶然と云うには出来すぎているが如き何やら動物の骨が行く手に。よもや呪術ではあるまいが、まさか呪術であったときのために、或いはこの「伊豆天城鉱山」最後の社員がとてつもない呪術使いだったら、私は間違いなく不思議な・・・不思議な力で・・・

 死んでしまうと言うのはグンマーの常識であってここ伊豆のちょっとだけ山奥では通じない非常識であると信じたいが万が一と云うコトもありそれ以上は進まない。よって壁ほぼ吹き飛んで屋内概ね雨ざらしの事務所内、遠くからちらっと覗くに止めておきます

 それにしてもこのえらいこっちゃな景色。遠ざかってみればまだ普通に使用できるトロッコ車がちょいと休んでいる姿、・・・とはさすがにちょっと無理がありますね。百歩譲って静態保存されたようなお姿。むろん廃墟は廃墟、違いはありませんので周囲吹き飛んだ屋根とか壁とか機器の欠片とかで足下悪く釘逆立って踏み抜いたら破傷風の恐れ大さらに断ると不思議な力で死んでしまうと云う不注意キケンの区域。このブログ見て他の人がどーなってもあたしゃ知ったこっちゃないがもしも錆釘踏み抜いてしまったり傷だらけで泥田圃に突っ込んでしまったりしたらすぐにお医者に行って破傷風ワクチン打ってもらった方がよいですよ。

 これは路盤跡でしょうか? 嘗てこのまままっすぐ山の方へ軌道が延びていた痕跡に他なりません。廃線跡探索の基本に則り痕跡の誘うまま私もこのまま路盤跡に付いていけばよいのですが、それにしても先程のトロ箱(仮)に書かれていた「滝上抗」の文字が気になってしようがない。「滝上」の額面通りに受け取ればこの近くに一つばかし坑口跡のあっても良さそうなモノですが

 睨んだ通り痕跡は不意に、それも予想外の頭上より。

 今歩いている場所より少し段になった上、ちょうど坂のように緩やかな斜面になっている辺り、草木の緑、土気の茶、岩肌の白、いずれも天然の内に磨かれた好ましき自然色、に割り込むが如くの異物の色彩。異物の正体は何故か少し前の白物家電の不自然な肌の色。そしてもう一つはつい今さっきひしゃげて歪に現れた鉄路の錆色・・・鉄路!?

 慌てずともヨイものを、何かとても大変なモノを発見した時少年は坂を駆け上がる。中年だけど。それはともかくその場所に現れたのは紛う方無き二本の鉄路。鐵より遙かに早く儚くなる木片の定め、枕木はとうの昔に朽ち果て残された鉄路だけが地面を厭うかの如く少し宙に浮く、間違いなく嘗て軌道として利用した鉄路の成れの果て。

 鉄路と言うからにはその始まるところと終わるところ当然の如くある物と思われ、まずその始まるところの確認を、と思えども鉄路直ぐに分断切断されたが如きの終わりよう。元々その先より延びたると思しき先はなんとなく路盤の形に道が延びているように見えるが草木無軌道盛んに生い茂る先、徒手空拳で探るには骨の折れる作業にて早々に諦め。中年だから。

 それにしても、元々の鉄路の延びる元の元、基地と思しき先程動力車が頓挫していた事務所跡と思われるがこの進入困難と化した路盤跡を辿っていっても件の「基地」に繋がりそうにない。或いはスイッチバックを使って斜面を登っていたか。いずれにせよ鉄路も路盤も地形図も定かならない状況では想像することしかできず

 実はもっと驚くべき事態は鉄路のもう片方、先程「終わるところ」とした方向。路盤にそって緩やかなカーブを描いた鉄路は

 そのまま土砂壁の奥へ消える・・・これは一体?

 誰もが首を傾げる異様な光景、恐らく誰もが少し考えてある結論に至ると思う。つまり、この場所にあった坑口を、軌道の線路を撤去しないまま諸共閉塞しやがった!

 えらく乱暴な閉塞の仕様はちょっと聞いたことのない、見たことのない異景を誕生させているワケで、もしかするとこれが平成以降の新たな閉塞の方法か
 
 「イヤ、単に土砂崩れで坑口が埋まってるようにしか見えんのだけど?」 やっぱそう思います?

 やっぱどう見ても土砂崩れですよね。どーみてもこの閉塞された鉄路の向こうから、土壁を突き破ってタンクに乗ったハナ肇が登場しそうな雰囲気は・・・皆無。人工的に封鎖されて自然の驚異がトドメを刺した廃の薫りしか漂わない

 よくよく周囲見れば、一部しっかり土嚢積み。土嚢の成れの果てがここまで周囲と一体化するとは思わなかった。土嚢の表面が摩耗して、劣化して、苔むして、辺りの土塊と変わらなくなった成れの果て、或いは進化の結果

 改めて坑口の存在していたであろう場所を眺めると、崩れた土嚢、崩れたのであろう土砂、一緒に流されたのであろう落木、その後更に転がり落ちてきたのであろう落石、鉱山の遺物かどさくさ紛れか判別しがたい鉄棒、等々間違っても人為的に閉塞したとは言い難き賑やかさ

 賑やかついでに視点変えて鉄路の消える方に謎の檻にしか見えない構造物。用途は植物を閉じ込めておく檻か。他に洗濯機が捨ててあったりと周囲、閉山坑口の跡にしては脈絡無いバラエティの豊かさに呆れる

 呆れるついでにもう一度視点を土砂崩れ坑口跡に戻して、その斜面の一番天辺に嘗て大岩でも塞いであったかそもそも大岩が崩れたのがこの賑やかな坑口崩落の原因か、ともかく、この位置から見ると何か呆れたかのような穴がぽっかりと口を開けているように見える。或いはあの天辺の大穴からかつての坑口内を覗けるかもしれない

 考えてみれば普通はそのようには考えない。

 なぜならこの場所に坑口があって予期せぬ土砂崩落によって閉塞されてしまったというならその坑口を覆う土砂は薄く脆く更なる崩落の危険が高いと考えるのが自然で

 例えばあの様にまるで足場でございと所々うまい具合に落石落木の類が足場の便を供しているように見えても

 よくよく見れば足場と思しき石周り隙間やら小さな穴ぼこやらだらけで

 そこから非常にか細く中の様子が覗けてしまいそうな細く小さいながらも奥深く繋がっていそうな穴の存在

 ファミコン時代のファイナルファンタジーシリーズならここで唐突にこんなナレーションが入るでしょう「小人にでもなればね」「カエルだったらね」

 いずれにせよトードなりミニマムなり唱えることが出来るジョブが付いて無ければこのミッションをクリアするのは無理そうで、万一生身そのまま身のままこの土砂壁面上りを敢行しようモノなら

 天辺の穴に達するまでもなく自分の足元に自身の体重と地球の重力が協力して生まれた穴に引き込まれること必定、そのまま出てこれない、

 挙げ句今まで書き割りの向こうにいた奴らが突然現れて陥没した穴を養豚場のブタでもみるかのように冷たい目で見下ろしながら「かわいそうだけど、明日の朝にはお肉屋さんの店先にならぶ運命なのね」などと云われかねない最悪の事態を

 F・Fやらハナ肇やら二部厨やら良くワカラナイ例え話を連呼してやっと想定したというお話しというワケだ

 その一部始終を予め謎の古代文字で書いているんじゃないか? そんなまたもやワケのわからない例え話を出さざるを得ない不思議な模様が穿かれた岩を見つけたコトを記念してこれ以上の周囲探索は打ち切り更に鉱山の痕跡を求めて山奥へ向かう事にします。(続く)